第98話 エリザダンジョン2
結局、冒険者の文句は止まず、勇敢にも1階へ向かった冒険者が居たが、秒でターンしてきた。
「1階の敵がマジでサイクロプスなんですけど……」
「あいつ、マジでやりやがったな……」
「どうする? せっかくの飯のタネが……」
「それもこれもあいつらが……」
冒険者の恨みつらみが我達に向かおうとしていた。
「わかった。わかったからダンジョンを元に戻してやってくれ……」
「ほんと? それならいいわ。サービスよ、今日は低確率で低階層でもマジックアイテムをドロップするようにしてあげるわ」
「うぉおおお! さすがエリザ様だ!」
「やったぜ! これで今日は命の危険を冒さずに金が稼げる!」
冒険者たちはガッツポーズをしたり、ハイタッチしたりして喜んでいる。エリザが誰にも聞こえないような小さな声で「ドロップ率は0.001%でいいわよね? 低確率っていってあるし」と言っていた。知らぬが仏だろう。
我達は仕方なく他の冒険者と同様に1階へ向かう。並んでいた冒険者は、我先へとダンジョンへ向かって走っていく。チケットが無いから、全員1階に向かうため、正直邪魔である。
「フレイム・アーマー!」
「あちぃっ、誰だこんなところで魔法を唱えるやつは!!」
「あいつだ、あの女だ! あれ? あいつどこかで……」
「おい、変なのに関わるな。エリザ様の関係者だろ? 無視しとけって……」
エンカが無理に通ろうと魔法を使ったようだが、我達が近づくとそれだけで冒険者たちは自主的に壁に寄る。
「うん、いい壁だなー」
「あー、靴の紐ががんじがらめになってほどけないなー」
「あっと、トイレ行くの忘れてたわ」
しらじらしいくらいに我達を無視してくれる。まあ、結果的に優先的に1階へ行けるからいいのだが……。
1階はこれぞThe ダンジョン! という作りになっていた。人工的な感じの壁で、まるでレンガのようだ。さらに言えば壁は直線的で、曲がり角は親切にも直角だ。
「どう? ゲームを参考に作ったんだけど」
エリザの言うゲームとは、どっかの作者が考えたテーブルゲームで、コマを進めてプレイするゲームらしい。まあ、それはどうでもいいが……。
「つくりはともかく、1階を何故スライムにした?」
「え? 雑魚敵と言えばスライムでしょ?」
エリザは簡単に言うが、普通の人間にとってスライムはむしろ強敵だと思う。魔力を使うため、魔法は連発が効かない。だからといって、武器では軟体の体を傷つけにくく、スライムの種類によっては武器の耐久度が下がるから、戦いたくないモンスターだ。さらにいえば、移動に音をたてないうえに、天井にも貼り付くからやっかいだ。まあ、我達には関係ないが。我達はエンカのフレイム・フィールドでナメクジのようにスライムを焼きながら進んだ。
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