第69話 下への階段?
「今回も僕に任せてくれますか?」
チックはそう言うと虫を使って探索する。1時間ほど虫を飛ばして探索しているが、チックの仲間は見つからなかった。
「変ですねぇ」
さすがに仲間を置いてまで下の階へ降りる意味は無いはずだ。階段を見つけたとしてもいったん戻ってきてもいいはずである。
「もしかしたら、時間によってつながる階層が違うのかもしれんぞ?」
ノロイが推測を口にする。その場合は、我達とチックの仲間が同じ階にならない可能性はあるが……。
「そうなると、運よく同じ階層になるまで降りていくしかありませんね……降りるという表現が正しいのかどうかは分かりませんが」
入り口ですら転移の罠があるくらいだ。いろいろな階層へ飛ばすことなど朝飯前だろう。
さらに1時間が経過したころ、虫たちが戻ってきた。
「なんと、……そうですか」
チックは虫と何か意思疎通をしたのか頷いている。情報を得るためとはいえ、手に乗せた虫を見つめる男と言うのはシュールだな。
「どうしたんだ?」
「階段が4つ見つかったみたいです」
「えぇ! どれにするの? あんまり歩きたくないんだけど」
アクアは一番近くの階段を希望らしい。落下したのが相当堪えたのか?
「心配しなくても我が一緒に運んでやるから落ちないぞ」
我はアクアをわきにかかえる。
「かっこ悪いけど、仕方ないわね!」
どの階段もどこへ繋がっているか不明なので、アクアの希望通り一番近くの階段にした。
階段を降りると、今度はなんと一面が水没した階だった。
「……これは無理だな」
水の中を探索できるのは我しかいない。我のエア・ボールを皆に使ってもいいが、途中で補充ができない以上、危険すぎる。
「私が泳いできていい?」
「お前だけ進むならいいぞ」
「やめておくわ!」
我達は一旦前の階層に戻って他の階段を使うことにした。
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