第70話 階層移動

アクアが真っ先に前の階を駆け上がり、前の階に戻る。その瞬間、ジャボッと言う音がした。


「がぼがぼ!?」


アクアはすぐにこちらに向かって階段を降りると、「げほげほ」と水を吐いた。


「前の階まで水没しているだと? そんなわけないだろう」


ノロイが階段を上り、すぐ戻ってくる。ノロイは濡れていないので水没していなかったようだな。


「なんか墓場になっていたぞ」


「どういう事?」


ノロイを先頭に我達も階段を上ると、確かにあたりが暗く、墓石だらけになっていた。


「意味が分からないわね」


ミレがそう言って墓石に触れると、足元から腐った腕が生えてきてミレの足を掴んだ。


「ぎゃーっ!」


乙女の叫びとは思えない声を上げて足を振り、腕を払って逃げる。しかし、それを契機にどんどん腐った腕が地面から生え、腐った頭まででてきた。


「きゃーっ!」


ライカもそれを見て逃げ出した。モンスターの死体は平気なくせに、腐っているとだめなのか?


「おいっ、勝手に動くな!」


そう言ったにもかかわらずライカとミレは階段を下りて行ってしまった。


「怖がりねぇ」


アクアは腐った死体に足を掴まれているが平気なようだ。死体も足を掴むだけで攻撃はしてこないようだ。


「あいつらを追いかけるか」


アクアも腕を振り払い、階段へ向かう。我達はノロイを先頭に階段を下りた。


「どういうことだ?」


すると、下の階も墓場になっていた。


「もしかしたら……最初に入った人に関係のありそうな階層になるのか?」


ノロイはそう予想したが、あながち的外れでもないだろうな。

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