第66話 ノロイ女体化

レンガの様に見える壁に遮られて階層の全体が見えない。ただ、少なくとも見える道は二手に分かれている。


「これは……石のようで外と同じ結界でできておるな」


我はコンコンと壁を叩く。レンガ模様の結界と言うべきだな。


「じゃあ、壊して進むのはむりね!」


アクアは構えていたトライデントを下ろす。アクアは短絡的で困る。仮に攻撃していてもアクアの攻撃ではどちらにしても無傷だっただろうが。


「ライトニング・ソナー」


ライカは練習がてらに探索魔法を使うが、壁にぶつかるとかき消された。


「魔法は結界に弾かれるのね」


ミレはメモ用紙を出してメモしている。メモしなくても2度試すやつはおらぬと思うぞ。


「地道にやるのはめんどくせぇ、俺がやる。オート・マター」


人形は結界に触れないので、地道に階層を探索していく。例により我らはしばし休憩だ。


「おっ、戻ってきたぞ。何か持っている」


人形の一体が赤い宝箱を持ってきた。見たところ、カギすらついていない簡易的な箱みたいなものだ。


「中身は……肉?」


何の肉かは分からないが、宝箱の効果なのか、まるで獲りたての肉の様に新鮮だ。


「食べれるかしら?」


ミレはじっくりと見て臭いをかぐが、それで大丈夫かは分からないだろうに。ノロイが肉の一部を切り取り、火魔法で焼く。


「ほれ、アクア食ってみろ」


「いいの? いただきます!」


アクアは毒味と気づかずに喜んで食べる。


「どう?」


「おいしいわ!」


アクアは物足りなそうにジッと肉を見つめる。ノロイはもう少し肉を切り取り、もう一度火魔法で焼き、アクアに渡す。


「ありがとう! もぐもぐ、おいしいわ!」


……大丈夫そうだな。我も一口分だけ切り取ると焼いて食べる。うむ、豚肉の様な味だ。


「大丈夫そうだ。少なくとも即効性の毒は無い」


それを聞いてミレとライカも食べる。全員が食べたのを見てからノロイが食べる。用心深いことだ。


「ぐあっ、何だこれは!」


ノロイが急に苦しみだす。あまりの苦しさに床に倒れ、ころげまわっている。


「えっ、どうしたの?」


ノロイの状態を見て全員一旦肉を食べるのを止めた。


「ぐああぁぁ!」


少しノロイの身長が縮んでいく。


「あああぁぁ」


縮むと同時に声が少し高くなったか? まるで変声魔法みたいだ。


「ああ?」


痛みが治まったのか、ノロイの動きが止まった。よく見ると、ノロイに胸がある……女体化したようだ。


「何だこれは!」


ふむ。肉は性転換の効果があったようだ。正確には、男性を女性にするだけのようだが。ノロイは手鏡を見て呆然としている。


「まあ、その、がんばれ!」


言葉がでないのか、ミレは励ました。


「うん、かわいいわよ!」


ライカも褒めるが、それは逆効果ではないか?


「あら、ノロイも女性仲間ね! これで全員女性のパーティーよ!」


アクアは気にしていないようだ。我もノロイの肩をポンと叩き、慰めた。体は女性、心は男性。


「我と同じだな」


「うるせえ!」

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