第46話 ダンジョンマスター
「ここが最終階の様だな」
5階はものすごく広い部屋だった。そして、部屋の中央には赤い鱗のドラゴンが見える。ドラゴンの真後ろは見えないが、他につながる通路が無いため、見える範囲には階段は無い。
「あれは、レッドドラゴンかしら?」
ミレはあれをレッドドラゴンと判断したらしい。
「見たことあるの?」
ライカが訪ねるが、さすがにギルド職員と言えど、ドラゴンの情報はそうそう無いのではないか?
「いえ、ブラックドラゴンが黒かったから、赤いのはレッドドラゴンかなと」
「まあ、攻撃手段を見ればわかるだろ」
レッドドラゴンは、のそりと動き出すと、さっそく大きく息を吸った。
「ブレスがくるぞ!」
「アイス・シールド・トリプル」
我は氷の盾を3重に張る。安直ではあるが、赤と言えば炎だと思うので、魔法の種類は氷にした。それと同時にドラゴンの口から予想通り、真っ赤な炎のブレスが吐き出された。
「ふむ、レッドドラゴンで間違いなさそうだ」
「素材は何かしらね」
「ダンジョン内では消えるのではないか?」
「そうかもね……」
ライカはちょっと残念そうだ。今はブラックドラゴンから手に入った素材で我慢してほしい。ドラゴンは、息を吐きだしつくしたのか、炎のブレスが途切れる。その隙に攻撃してみる。
「アイス・スピア」
氷の槍をドラゴンに飛ばすが、表皮ではじかれた。大ダメージは期待していなかったが、さすがに無傷だとは思わなかった。
「ブラックドラゴンより強いかもな」
「いや、単純に制限の差じゃないか?」
あの時は5%、今は1%だ。単純に攻撃力が5分の1である。しかし、それでも大抵のモンスターは1発で葬れるほどの威力があるはずなのだが。
「ドラゴンステーキ!!」
エリザは子犬形態になると、ドラゴンの尻尾に噛みついた。ドラゴンは予想外に痛かったのか、尻尾をエリザごと地面に叩きつけるが、エリザが離れる様子はない。
いくら攻撃してもエリザが離れないので、ドラゴンは尻尾を切り離した。その尻尾をエリザはバクバク食べ始める。我の攻撃すらはじく鱗ごと……。
「珍しいわね、ドラゴンが尻尾を捨てるなんて」
「相当痛かったんだろ」
ミレとノロイは雑談している。余裕そうだな……戦わないのか?
「俺たちは、ドラゴンにダメージを与える手段はない」
「私も」
「あ、ついでに私も無いです」
ビルには最初からあてにしていない。むしろ、逃げ出さないだけ褒めたいくらいだ。
「ライドニング・スピア」
ライカの攻撃は、ドラゴンにあたるが、一瞬バチッというだけでダメージは無さそうだ。ドラゴンは、再び息を吸い始めた。
「口を開けるな。アイス・フリーズ」
我はドラゴンの口を氷で塞ぐ。氷はどんどんジュウジュウと溶けていくが、それよりもドラゴンがブレスを鼻から出す方が早かった。
「あちっ、結局ブレスじゃねーか!」
しかし、ドラゴンも鼻を押さえて転がっている。ドラゴンもさすがに鼻は熱いようだ。
「ウィンド・ナイフ」
我はその隙にドラゴンの首を落とした。ウィンド・ナイフの切れ味はとてつもない。
ドラゴンは、「えっ、これで終わり?」という感じの顔をしたが、終わりだろう。ドラゴンが消えると、虹色の玉が落ちていた。
「これが、ダンジョンコアかしら?」
ダンジョンコアの現物なんて見た事ある人は居ないので、皆黙っている。
「触れればわかるんじゃないか?」
ノロイはそう言うが、自分で触れる気は無いようだ。
「私がやってみる!」
アクアは虹色の玉に触った。その瞬間、虹色の玉から音声が流れた。
「ダンジョンマスターに登録されました」
「ふむ、何か変わったか?」
びっくりしているアクアに尋ねる。
「何が出来るの?」
アクアがコアに話しかけると、空中にホログラムで一覧が現れた。
「ポイント?」
やれること一覧の右に、必要ポイントが書いてある。ポイント=魔力量に近い様だ。魔物を生み出すのにもポイントが居る。
「どうやったらポイントが貯まるの?」
ライカが興味があるのか、ダンジョンコアに尋ねる。
「現在、マスター以外の質問には返答できません。サポーター登録をしてください」
コアからサポーターの説明がされる。サポーターになればダンジョンの改変以外は出来るようだ。便利そうなので、とりあえずコアにサポーター登録する事にした。
「私は無理ですね」
魔力を登録するのに、魔力の無いビルは登録できなかった。
「これで転移魔法陣が使えるのか?」
「使えるみたいよ」
アクアが指さした場所に、今までは無かった魔法陣が光っている。
「じゃあ、一旦帰るか」
「あの、非常に申し上げにくいのですが……」
ビルがおずおずと声をかけてくる。
「なんだ?」
「お金になりそうなアイテムが手に入っていないのですが」
当初の目的を忘れていた。ビルのためにマジックアイテムを探しに来たのであったな。いつの間にか、クリアが目的と勘違いしていたようだ。
「そう言えば、ショートカットばっかりで全然モンスターは倒していないし、そもそも倒せないモンスターも多かったわね」
「ちっ、しょうがないな。俺はネックレスをもらったから、代わりにビルの借金は払ってやる」
「ありがとうございます! カレン、待っていてくれ!」
ノロイにもこれだけ巻き込んでただ働きさせたのでは寝ざめが悪いみたいだ。
ダンジョンマスターの権限で魔法陣を使用し、我達は全員1階にワープした。一応、登録は無くても魔方陣は使えるらしく、ビルも一緒だ。しかし、ダンジョンから出ようとすると、アクアの持っているコアからアクアに対して警告が入る。
「ダンジョンマスターはダンジョンから出られません」
「何でよ!!」
アクアは叫んだ。
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