第4話 性転換後初配信



「んにゃーーーーーーー!?」

「姉貴うっさい」


 今現在、姉貴と共に配信中。


「だ、だって……」

「猫やんけ」

「!!」

「猫やんけ」

「犬だし」

「猫やん」

「犬!!」

「ネコ科イヌ目の狗姫ね。分かった分かった」

「犬だって!?」


[某キツネのやり取り、ここにて再臨ww]

[犬なのににゃ〜と鳴くのは如何しがたい]

[誰か、あの方を呼べ。間違われ系Vtuberとしての雑談希望]


 そう言って、姉貴は壁にぶつかる。


「コースアウトしすぎだ」

「ちゃんと走ってるのに……」


 リアルドライビングシミュレーターのゲームで、姉貴はグリップ走行用の、私はドリフト用ので、タイマンバトル。

 姉貴が使ってるのは、日本車のGTーR35のフルチューン。私はイギリス車の650SGR.3のドリフトセッティングのフルチューン。

 コースは鈴鹿サーキットのフルコース。

 姉貴はさっきから砂の上での格闘。

 私はコース外のアスファルトの上でドーナツターン。


「姉貴ー?遅いぞー?」

「そっちが早すぎるんだよ」

「1分半かけてここで待ってるんだが……」


[姉貴のドーナツターンの中心にいたい]

[姉貴、ドーナツターンうまし]

[狗姫はよ]



「あぁー!!??また負けたー!!!」

「遅い遅い」

「グヌヌヌ」

「1000PSのGTーRをどうやってオーバースピードで第1コーナーに突っ込むのさ」

「滑っていって……」


 ブレーキとサイドブレーキを間違えてたのか。

 昔の私じゃん。


「音虎はサイドブレーキ使ってるから、それで曲がれると思って……」

「…………」


 何もいえない。私は滑らせるために使ってるってこと、言いたくない。


「次は普通にブレーキにしよう、ね?□ボタンがそうだからね?」

「うん……」


[姉貴が優しい口調に……]

[その声で囁いてほしいぜ]

[姉貴のASMRオンリー枠はまだ来ないのか?]


「次は絶対に勝つ!」

「なら、こっちは馬力下げたものにしよう」


[おっ?]

[Nシリーズか?]

紅き黄昏:¥500[グループBを所望]


「ラリーカー、ね。よし、ならこれだ!」


 選んだのは、日本車のWRX STIだ。


[これ、いいのか?]

[このデザイン。そしてこの文字。これ、他のVtuberの方のでは?]


 そう。コメント欄にある通り、黒に赤を基調としたデザイン。そして、ボンネットにはFAMS。ドアにはAYAME。リアにはNakiri。

 そう。ホ○ライブのだ。


「よし。なら私はヴェネーノ!!」

「え?」


[え]

[え]

[え]

[え]


「待て。馬力差が500あるんだけど。負け確定なんだけど」

「なら、ドリフトやめて走ったらいいじゃん」

「それで負けるから言ってるんだ!!」


[そりゃな]

ハクハク:¥20,000[姉貴のお悔やみ代]

[姉貴、圧倒的な馬力の暴力で初黒星]


「コースも変えよう。東京エクスプレスウェイね」


[あ、そこは]

落とされたガガンボ:¥50,000[姉貴助かり代]






「なーんーでー!!??」

「良かった。燃料消費とタイヤ消耗有りの耐久レースで良かった……」


 コメント欄どうなってるかな……。


[『速報』『姉貴、500馬力差のハンデの中、見事勝利』]

[姉貴凄え]

[強強虎っこ姉貴]


「おい。強強虎っこはやめろ。トラックに見えてくる」


[草]

[強強トラックは草]

[草越えて森]


 結果、姉貴はピットの場所がわからず、燃料切れで速度が落ち、私に悠々と抜かれて惨敗。


「つーぎー!!」

「もうダメ。1時間経ったから、これで今日の配信は終わり。ほら、姉貴、挨拶」

「音虎がやってよ」

「このチャンネルの主が何言ってる」

「はいはい。それじゃ、バイバーイ」


 配信を終わらせ、静かな空間、時間が続く。

 とでも思ったか?

 姉貴が駄々を捏ね始める。


「配信外でも勝負!しょーうーぶー!」

「勉強させてよ……」


 まだ勝負事にこだわり続ける姉貴。


「あ、そういえば」

「ん?何、姉貴」

「音虎を、独立させようと思う」


 独立?


「あ、その顔、あんまりわかってない顔だね。つまり、音虎専用のチャンネルってわけ。ほら、今日の配信のコメ欄でもあったでしょ」


 そう言って、姉貴は1つのコメントを見せてくる。


[姉貴のASMRオンリー枠はまだ来ないのか?]


「これ、姉貴のチャンネルでやればいいじゃないか」

「チャンネル作ったほうがいいって。だから、これからは、音虎だけでの配信も考えてね」


 マジか。

 ……………………………。

 ……………………………。

 ……………………………。

 ……………………………。

 ま、やってやるか。金も手に入りそうだしな。


「わかった。やる」

「なら、Twitterのアカウントも作らないとね」


 マジ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る