超絶覚醒マジカル☆イーター

あかがみ

第1話 孤島の骨

レイノス大陸から離れた位置にある絶海ぜっかいの孤島。


その島は、それほど大きくはないが、生物が住むにはきびしいほど魔力の濃度が異常に高かった。


周囲はさえぎるものもなく見渡す限り海が広がる。


一見平穏へいおんに見える島周辺の海は、獰猛どうもうかつ狂暴きょうぼうな魔物達が非常に多く生息しており、その生態系の頂点ともいうべきヘビのような姿をしている巨大かつ強大な古竜エンシェントドラゴン”リヴァイアサン”が住んでいるとも大陸に住む人々に伝承されている。


海の男たちは、人々をこばみ続けるこの海域のことを、おそれをもって”魔の海域”と呼んだ。


人間達が住むには絶望的なこの島で、衣服を全く身に着けていない一体のスケルトンががけっぷちに座りながらのんびりと釣りをしている。


スケルトンとは、怪物や化け物の一種である。


主に死霊魔術を使う死霊術師ネクロマンサーと呼ばれる者達が、魔術を使って仮初かりそめの生命を与えた骸骨がいこつのことである。


スケルトンを使役しえきする者は、主人マスターと呼ばれ、スケルトンを己の欲望や野望のために働かせた。


一般的な人達から見ると、この行為は邪悪じゃあくそのものであり嫌悪けんおされるべきものであった。


しかし、この孤島に住むスケルトンには主人マスターはおらず、一体だけで千年のときを過ごしている。


骨の釣り人は、昼夜ちゅうや関係なく釣りを楽しんでいるが、釣果ちょうか無しゼロ


双眸そうぼう眼窩がんか蒼炎そうえんらめかせながら、スケルトンはつぶやく。


「今日もまったく平和だねぇ・・・」


スケルトンは、”魔の海域”の真っただ中と思えないふざけた感想を言いいつつも、いつものように魔力を練り続ける。


「少し骨休めでもするか」


眼前にある海で、漂流ひょうりゅうしている小舟ボートを発見したため、釣りを中断。


”引き寄せの魔法”を使い小舟ボートを近場の砂浜へと誘導ゆうどうした。


どうやら昨日の嵐によって、流されてきたようだ。


「これは珍しいね」


スケルトンは、手に持っていた釣り具を一瞬の内に消すと、誘導ゆうどうしたボートの近くへと転移し、のぞく。


「ほぅ。人族ヒューマンの少女か・・・。身なりが良いので、貴族の子供か何かか・・・」


昨日の嵐によってれてはいるがはなやかなオレンジ色の髪で、良い仕立てのドレスを着ている十二、三歳くらいの可愛らしい女の子が寝ていた。


孤島に住むスケルトンにとって、少女の姿や顔立ちは、人物を想起そうきさせた。


「どうやら死んではないようだな・・・」


骨の手を少女にかざすと、”洗浄の魔法”を使って、一瞬で髪や服などを綺麗きれいにしてかわかしてしまった。


風邪かぜなどひかれても困まるしね」


誰かが聞いているわけでもないのに、おのが行為を正当化するいいわけをしていた。

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