第3話 青い空には白いカモメ

 青空に浮かぶ白い太陽。地平の彼方には入道雲。その一部が、千切れたかのように自分達の真上に流れているが、その雲の一つを隠すようにそれは居た。


 それはたった一羽。

 急降下してこちらに向かってきているのが見えた。


「カモメ······?」


 鳥のフォルムなどほとんど似通ったものではあるが、その羽根の丸さが見えた時、直感でそう思った。これが、あのスクリーンが指示する『カモメ』なのだと。


 しかし、最初見たのが遠かったからその違和感に気付くのに遅れた。もっと冷静に考えれば、あんな遠くでもしっかり見えるのはおかしいのに全く気付かなかった。それに気付いたのは、その羽ばたく白い身体の作る影が徐々に大きくなり、風を駆け抜ける音が聞こえてからだった。


「い、いやいやいやいやいや······」


 あまりに俺の世界と掛け離れた光景に、俺は顔を引きつらせそう何度も繰り返した。


 そして、群れの誰かが叫んだ。


「ば、化けもんだああぁっ! 逃げろおおおおぉっ!」


 その“カモメ“は俺の知る通常のものより遥かに大きかった。その大きさは、俺等、魚の群れの一匹など容易く呑み込むくらいに。


 増える悲鳴と散らばる魚。

 カモメに喰われる度に減る、スクリーンの『生存者数』。


「くそ、あの数字はそういうことか。――おい、逃げるぞ佑哉!」


 詳しいクリア条件は分からないが、これがステージの内容なのだと同じように事態を把握し、頷いては立ち上がる佑哉。女の子はなんとか背負えている。


「よし、行くぞ!」


 そうして声を掛けてから、何処へ逃げるのかなどこんな平原には当てなど無いにもかかわらず、近付きつつある巨大カモメとは逆に向けて一緒に走り出す。だがしかし、そんなマンボウを背負う佑哉と走り出して数歩も立たない頃だった。


 突然、彼は足を止めた。


「おい佑哉、なにしてんだ!」

「慶介、ちょっと待って」

「――? どうした?」

「いや······この子、息してないんだけど」


 スクリーンの生存者数は、既に30を切っていた。

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