陰キャでオタクが音楽で愛を叫んでみた

@Yuuki0411

序章

青春改革

 陰キャでオタク。俺を表すなら、この一言で十分だ。勉強が特別できる訳でもないし、秀でた才能がある訳でもない。クラスに一人はいるであろう、教室の隅で本を読んでいるようなやつだ。


 こんな自分だが、変わろうとは思わなかった。陽キャで好かれるようなやつになろうとは思わなかったし、別に、友達はゼロじゃない。必要最低限でいい。これ以上を望もうとかは思わないし、これから先も望まないと思っていた。


 これは、俺の青春を変えた話だ。









ジリジリと日差しが照り付ける。入学して二ヶ月がたち、まだ六月だと言うのに、真夏と言っても過言ではないほど暑くなった。


都外から来た俺はある意味浮いていた。まぁ、陰キャでオタクだと言うことも拍車をかけているが。


それでも、気にせず接してくれる。進学校だとやはり、いじめとかはなかった。


公立の中学でいじめにあった俺にとって、何より嬉しかったことだ。


「おい、神鳴かんなり!」


「なんだよ、間宮まみや。」


「やっぱ、バレーやらねーか?」


「入学してからずっと勧誘してきてんな、お前。俺は確かに身長は高めの180あるが、それでも多分先輩たちより低いし、技術も稚拙だ。なにより、やる気がない。」


「えー?そこは出そうぜ。」


「え、やだ。」


「おーい、座れ。」


ガタガタと席に着き始める。担任の大澤はこのクラスで一番きらわれている教師だ。この前、レポートを忘れた生徒を一人泣かせてた。ちょっとありえないような教師だ。


そのため、大澤の担当の物理は人気がない。


「転校生だ。仲良くするんだぞ?」


鼻の下を伸ばし、ニヤニヤとした顔で大澤が告げる。気持ち悪いな、こいつ。


「初めまして、宮城から来ました。鈴原琴音すずはらことねと言います。よろしくお願いします。」


「鈴原は、親の転勤で来たそうだ。」


あきらかに鈴原さんの体を見ている大澤は無視しておく。


「あー、鈴原の席だが.....不安だが、神鳴の隣な。」


笑いを取ろうとしたのかもしれないが、バカにしたような発言だったので全員が真顔だった。鈴原さんは、何も言わずに隣の席に来た。


神鳴悠夜かんなりゆうや。よろしく、鈴原さん。 」


「よろしくお願いします。」


....美人。


そうとしか言い表せない美しさを、鈴原さんは持っていた。


ドクリ、と心臓がはねた音がした。


生まれてこの方したことが無い感覚に、ある種の確信を得る。


俺は、恋に落ちたのだと。





「やっぱ、ギターが弾ける人ってかっこいいべ!」


「だよねー!うち、軽音部は部員が一人しかいないらしくてさ。」


「んー、自分がしたいってわけじゃないしなぁ。」


部活、か。幼稚園から小六まではピアノやってたな。


......やってみるか。


「間宮ー。」


「お、バレー部に入る気が起きたのか?」


「いんや。俺、軽音部入る。」


「....はぁぁぁ?!」


「楽しそうだしな。」

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