ツンして10秒でデレちゃう幼なじみのくーちゃん
竹井アキ
第1話:短いお話──ゆっくりしていってね
朝の部屋──
目を覚ますと、幼なじみのくーちゃんがベッドの脇にたっている。
いつもどおりの朝だ。
「あ……おはよう」
「まったく、毎日毎日朝寝坊して! 遅れるわよ!」
ぷんすかと頬を膨らませるくーちゃんに、布団が引き剥がされる。
「さっさと朝ご飯食べなさい!」
と怒られつつ、食卓にならんでいるご飯をたべる。
米、味噌汁、卵焼きにあじのひらきにポテトサラダと、朝にしては豪勢なご飯が振る舞われた。
「いつも俺のためにメシつくりにきてもらって悪いね」
と、くーちゃんに言った。
「べ、別にあんたのために作ってるわけじゃないんだからね! おじ様とおば様にお願いされてるから作ってるだけなんだからね!」
とツンが発動された。
「はい、はい」
と言いながら、俺はくーちゃんを抱きしめた。
「か、勘違いしないでよね!」
と言いながらも、くーちゃんがぎゅっと俺を抱きしめ返した。
「ねぇ、くーちゃん……」
「なによ?」
「……俺のこと、好き?」
「バ、バカ! あんたのことなんか好きじゃないんだからね! 幼なじみだから朝のハグをしてあげてるだけなんだから!」
と言いながらさらに俺を強く抱きしめてくる。
「う~ん、そうなのかぁ……」
しばらく抱き合った後、二人で家を出た。
◇ ◆ ◇
通学路──
「ねぇ、くーちゃん、俺たち高校生なんだからさ、もう手を繋がなくていいんじゃ?」
「うん?」
「ほら、子どもからずっとこのスタイルで登校してけど、さすがにこの年になれば、迷子になったり、さらわれたり、道に飛び出して事故にあったりすることもないよね?」
「……そう言われれば、そうね」
なんで今まで気がつかなかったんだろう……。
「だからさ、手を繋ぐ必要性はないんじゃない?」
「う~ん、でも、手を繋がない必要性もないんじゃない?」
「……」
「……」
「あのさ……」
「なに?」
「くーちゃん、俺の事、好き?」
「バ、バカ! あんたのことなんか好きじゃないんだからね! 幼なじみだから手を繋いで歩いてるだけなんだから!」
ツンが発動した。
「そうなの?」
「そうなの! まったく、勘違いしないでよね!」
と言って、くーちゃんは手だけでなく腕も絡ませてきた。
「ふ~ん……」
くーちゃんの色んな部分が俺に当たったまま通学することになった。
◇ ◆ ◇
学校の昼休み──
「はい、あんたの弁当」
「ん、ありがと」
学校の友人は、この時間になるとなぜか俺たちから離れていく。
「はい、あ~ん」
「あ~ん」
「どう、おいしい?」
「うん……おいしい……けどさ」
「けど?」
「二人とも同じ弁当なんだから、お互いに食べさせる意味ってある?」
「なによ? 私に食べさせられるのが嫌なの?」
くーちゃんがムッとした表情になった。
「いや、嫌じゃないよ。ただ聞いただけだけ。はい、あ~ん」
そう言って、俺はくーちゃんの前におかずを差し出した。
「あ~ん」
それを食べると、くーちゃんはニコニコと機嫌をよくしていた。
「ねぇ、俺たちって付き合ってるのかな?」
「バ、バカ! 勘違いしないでよね! あんたとあたしはタダの幼なじみなんだから」
ツンが発動した。
「そうなんだ……」
「そうなの!」
「ふぅん……でも、幼なじみって良いね。ずっと一緒にいられるといいね」
と言うと、
「そ、そうよ、あんたと私はずっと一緒にいるんだから」
とデレデレしていた。
◇ ◆ ◇
学校の帰り道──
「キャアッ」
前を歩く女の人のスカートが風でめくれてパンツが見えてしまった。
いわゆる一つのラッキースケベというやつだ。
「あ、鼻の下伸ばしてる! このヘンタイ!」
と罵られた。
「違うよ、不可抗力だよ」
「えっち、バカ、スケベ、ヘンタイ、ヘンタイ! そんなに女のパンツがみたいのか!?」
くーちゃんがツンツンとしてきた。
「そ、そんなことないよ。かわいい女の子のだけだし……それに女の子のパンツなら、くーちゃんのをよく見てるし……」
長く一緒にいると、色々と事故(?)は起きるものだ。
「っ──。恥ずかしいこと言わないでよね! ヘンタイ!」
「ごめん……」
俺がシュンとしていると、
「……ねぇ、また私のパンツ見たい?」
と上目遣いで聞いてきた。
「うん」
と答えると、
「仕方ないわね。幼なじみだもの。今度、見せてあげる」
デレデレになってくれた。
◇ ◆ ◇
夜の自宅──
「くーちゃん、俺もう寝るよ」
「ふわ~、もうそんな時間?」
自分の部屋に入って電気を暗くする。ベッドに入ってしばらくすると眠くなってきた。
あと少しで完全に寝入りそうだなというときに、ガチャ──とドアが開いた音が聞こえる。
パジャマ姿のくーちゃんだ。
「ねぇ、もう寝ちゃったの?」
「……いや、まだだけど」
「おやすみのキスがまだなんだけど!」
あぁ忘れてた。
くーちゃんが、ベッドで寝ている俺の上からキスをしてくる。
「まったく……ちゅっ」
とても柔らかくて小さな唇だ。
「これでよし。私たち幼なじみなんだから」
と言いながら、僕のベッドに入ってきて隣に寝始めた。
俺はささやき声で尋ねる。
「ねぇ、くーちゃん、俺の事好き?」
「もう……勘違い……しないでよね……あんたの事……なんか……好きじゃないん……だから……」
ツンツンしながらも眠いようだ。
しばらく寝顔をみていると、横にいたくーちゃんが僕の胸に抱きつくような姿勢になる。
「……好き……しゅき……だぁい……好き」
「俺も、好きだよ」
と言って、もう一度キスをした。
ツンして10秒でデレちゃう幼なじみのくーちゃん 竹井アキ @Takei_Aki
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