ネメシスという聖女、そして狂った者達の話
仲仁へび(旧:離久)
01
「私、何か間違ったことをしたかしら?」
「いいえ、ネメシス。あなたは正しいですよ」
ネメシスは聖女でした。
聖女は人を救う者。
だからネメシスは、今日も可哀そうな人を救って、世界が少しでも幸せになるように努めます。
とある主婦が、スランプに陥っている作家を見て呟きました。
「あの人、いつもぶつぶつ小言を喋ってるから怖いの」
ネメシスは、趣味の悩みを解決してあげようと思いました。
だから、すぐにその話を聞いた後、その作家へ注意をしにいきました。
「まわりの人が怯えるから、その癖を辞めなければなりませんよ。それは人の迷惑になっているのです。迷惑をかけるのは悪いことだと理解していますよね?何の関係もない人を怖がらせてはいけまん」
とある男の子が、一人遊びをする少女を見てつぶやきました。
「いるはずのない友達としゃべってるなんて、気持ち悪い。そんな人間いないのに」
ネメシスはその男の子の言葉を聞いて、女の子の状況を見てあげる事にしました。
だからその話を聞いてすぐ、その少女とお話をします。
少女は現実を見ていないので、ネメシスは優しく諭してあげる事にしました。
「目の前にある現実を大事にしてあげてくださいね。あなたが話しかけているそんな子は存在しないのですよ。だから現実にいる子たちと元気いっぱいに遊びなさい。皆、あなたを気に掛けてくれる良い子ばかりですかから」
とある男性が奇行をくりかえす女性を見て、つぶやきました。
「爪を噛んだり、頭を掻きむしったして、気持ちが悪い。そんなことをしてるから人が寄りつかないんだよ」
ネメシスはその男性の不安を払拭する事にしました。
だからその話を聞いてすぐ、女性をたしなめにいきました。
「あなたが孤独になるのは、みんなとは違う行動をするからです。同じ行動を心がければ、自然と人がよってきますよ」
とある老人が。
ネメシスはその話を聞いて。
とある旅人が。
ネメシスはその話を聞いて。
とある。
ネメシスは。
とある。
そして。
とある。
次は。
ネメシスが頑張った分、世界は優しく明るく、幸せになりました。
たくさんの人の悩みが解決されたからです。
ただし。
そうならなかった者達もいます。
ネメシスが声かけた、
作家は、
少女は、
女性は、
自分が自分であった事を微塵も残さず、その世界から死に絶えていましたから。
ネメシスはそれを見て、不思議そうに首を傾げます。
「私、何か間違ったことをしたかしら」
とある審判者が嘆きました。
「少しでも情報がほしい。私には事実を明らかにする義務があるのだ」
ネメシスはその審判者の嘆きを聞いて、とある罪人の少女の元へ赴きました。
「あなたはなぜ喋らないのですか? あなたのせいで真実は誰の目にも明らかにならずに、眠ってしまうというのに」
「どうして何も喋れないのですか?理由を教えてください。そうすれば正しい対処をして差し上げましょう。あなたが口を開かないと何もわからないのですから。それに、何か事情があったとしても、あなたが喋らないと何もわかってあげられないのです」
ネメシスの言葉を来た罪人の少女は口を開いて、たった一音だけを口にしました。
それ以上は言葉を発する事ができなかったからです。
罪人の体はたった一音を生んだ動作に耐え切れず、砂と化し消滅してしまいました。
それを見たネメシスは、不思議そうに首を傾げます。
心の底から、分からないというように。
「私、何か間違ったことをしたかしら?」
「いいえ、ネメシス。あなたは正しいですよ」
ネメシスという聖女、そして狂った者達の話 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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