第6話~6
やっとトイレを出て事務室へ向かった私は事の顛末を社員に話した。
こういう時、主観、客観で言えば客観的な見地で話した方が良いに決まっている。しかし、この時の私は主観も客観もごちゃ混ぜ状態で、且つ、話し始めると再び涙であふれかえってしまった。体を触られる事の嫌悪感が人と違っているのだから仕方がない。
元々この事業所で働き始める時、保険証の発行までに時間がかかり、その間の心療内科の診察をどうするか?臨時の発行証のようなものを貰うのに、どこのどんな病院にかかるのか?といった書類に書き込まねばならない事が判明、その際、病気ではなく、いつか有事の時の為の相談と言う形で心療内科に通っている事を説明する為、近親姦の話は主だった人にはしていた。。但し、本社にまで話したくはなかった私は発行証を諦め、一旦保険証無しで診察を受けている。。後は話しやすい人には数名話している程度だったものの、まさかほぼ全員では無かった。。
ところが、この日を境に、あからさまにほぼ全員に私の過去を話してしまう事になる。。
さて、その後、私は一旦上司に促され、すぐ隣の別室で休んでいた。しかし、益々、涙が出て来てしまって、泣いていると、事態を知った新人社員が心配して別室へやってくるも、私は顔を上げられず手で顔を覆っているのが精いっぱいだった。
色々考えが巡る中、「そうだ!あの看護婦は月曜しかやってこない。確か、1月中旬から私に有給休暇が付いた筈。」と思いつき、再び事務室へ。。
とにかく一か月くらいの間、毎週月曜は有給休暇を使って休みたいと施設長に願い出た。施設長は「それは許可するけれど、今日はどうしますか?」と聞いてきた。頑張れますと答えたかったものの、すぐさま無理ではないか?残り5時間ほどの間、笑顔をキープするなど。。。しかもNと言う看護婦と一緒に仕事なんて無理だと判断し、ついでに早退も願い出て、お昼には事業所を出た。。
とにかく体に残る感触「嫌な感触」はそのままで、ひたすら苦しんでいた昔の記憶ばかりが蘇る。。
どんどん疲弊していく気持ち。。横になろうとすると、どういう訳か横になった途端、余計に「嫌な感触」が強くなる。。
そうか。。昔、私は浄化の儀式として自分の体に刻み付けるように泥を塗りたくっていたんだ。。そんな思いまで去来し、横にはならず、座ってもおられず、家の中を意味も無く歩いてみたり、いてもたってもいられない中、忘れていた筈の片頭痛が復活した。。そうだ!血圧測らなきゃ!と思い立ち、計ってみると、上が228、下が150。。まずい!最初の事業所で嫌がらせを受けた時と同じような数値。。あの時、私の体に何が起きたのか!それを思い出すと恐怖の闇におちそうになった。(詳しくは「生まれてきた目的に辿り着くまで」に書いている)
病院。。病院へ行かねば。。そう思うのに内科へ行けばいいのか?心療内科の方がいいのか?迷ううちに体がうごいてくれそうにない。。昨年末大掃除の時にお守りの様に持っているだけの安定剤をもう古い薬だし、使い道もないし、捨てようと思って捨てた事を後悔した。。
元々の休みは水曜日。。明日。。病院へ行こう。。もし、明日体が動かなくても明後日には何とか。。そんなことを思いつき、事業所へ電話を入れた。。
明日(火曜)も休ませてほしいと願い出る為に。。。
電話をすると思いもよらない言葉を施設長から聞く事になった。
休みは許可してもらえた。。ただし、
「Nさんは傷つけようとは思っていなかったし、紫ぐれさんの過去も知らなかった。冗談のつもりだったけれど、私が身を引くしかないんでしょうね。仕事を辞めます。。と言ってくれているんだよ。。まぁ会社としてハイそうですか!とはいかないからこれから検討するところだけれど。。」
。。。。?
電話を切ってから、考えた。
身を引く?。。そんなきれいごとなのか!
冗談だった?何それ!
言ってくれている?
くれているって何よ!
。。。
一体どっちが悪者なの?
例えば電車の中なら、即警察に引っ張っていかれる筈。。
異性からの痴漢は成立するはず。。
同性だったら犯罪にならないの?
電車では無かったから?
職場の仕事中だから加害者ではないの?
電車で痴漢をする者だって痴漢をされる女性の過去なんて知らない筈。
職場だから過去を知らなかったという言い訳が通用して痴漢行為は犯罪にはあたらないの?
身を引くとか、言ってくれているとかって、
まるであちらが大人で、早退したい、休みたいと言っている私が子供じみているとでも?
電話を切った私は。。。
思い出した。。
すべて泣き寝入り人生の繰り返しだと。。
これでもまだ泣き寝入りするのか?と
まるで自分を試されているような感覚。。
もう、黙ったままではいられない。。
病院へ行くか行かないか?の前に
私は警察の相談室というモノがある筈として電話番号を調べた。
そこでこういった場合犯罪になるのかならないのか?相談したら、
事業所の管轄の警察の刑事課の電話番号を教えてくれた。。
そこで被害の相談をすることになった。。
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