さあ、勝負ですっ!


 謎の札を使ったあやかし花札はどんどん佳境を迎えていった。


「うっ。

 どうして俺のところに、壱花が作った謎の生き物がっ」

とおのれの手札を眺めながら倫太郎が言う。


「だから、どうしてみんな手の内をしゃべるんでしょうね……」

と冨樫が呟くので、


 いや、私はしゃべってないですよ。

 さっきしゃべったの、高尾さんですよ、

と思いながら、壱花は、やけくそのように、


「それ、貴重な化け猫なので、50点にしましょう」

と主張した。


「なんだ、また言ったもん勝ちかっ」

と斑目が文句を言ってくるが。


 いやいや、あなたなんて、おのれの絵が上手い、というだけの理由で、虎を300点にしようとしてますよ……と思いながらめくったそこには、その今にも飛び出してきそうな虎がいた。


「やったっ。

 300点っ。


 って、竹の札なんて他にないじゃないですかーっ」


「じゃあ、なんでも取れるってことで」

と斑目が言う。


「他の札があまりますよ。

 っていうか、私が300点とってもいいんですか」


「俺の絵の素晴らしさが認められるわけだからいい。

 大丈夫だ。

 お前が300点とるなら、俺はなにかで600点とるからいい」


「インフレがひどいですね……」

と冨樫が呟く。


 いや、それ以前に、なにかでって、なんですか。

 なにで600点とるつもりなんですか……とまた無茶を言ってこられそうな雰囲気に壱花が怯えたとき、斑目が、


「しかし、壱花の生き物が50点は審議だっ。

 審判、評決を取れっ」

と言い出した。


「風花壱花の生き物、50点の価値があると思われる方、挙手をお願いします」

と冨樫が言う。


 誰も手を上げなかった。


「社長ーっ。

 なんで手を上げないんですかっ。


 今、私の札持ってるんでしょ?」


「いや……ああいう問われ方をすると、俺の審美眼が試されている気がして。

 壱花札に50点はない」


 いつ、壱花札なんて名前に……。


「では、0点ということで」


「なんでですかっ、冨樫さんっ。

 生き物の絵があったら、なにか点つくでしょうよっ」


「じゃあ、5点で」


「この審判、横暴ですよーっ」

と壱花は叫ぶ。


 このハイパーインフレ状態で、5点とか完全なカス札だ。


「冨樫さんの訊き方が悪いからじゃないですかっ」


「お前、審判に文句つけるな。

 レッドカード出すぞ」

と言い出す冨樫に、なんの競技だ、これは……と思いながら、壱花は倫太郎に訴える。


「やばいですっ。

 このままでは押し負けますっ」


「……花札って、そういう遊びだったか?」


「社長っ、吸い込まれて札になってくださいっ」


「なんでだっ」


「だって、なんか強そうじゃないですかーっ」

と壱花は叫ぶ。






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