ジャックは笑わない
眠れなくて毛布をひっぺがした。冬も間近だと言うのに背中に汗がべったり張り付いている。
自分以外に誰も居ない、空気も寝静まる夜。息をすることさえ覚束無いこの時間が、大の苦手だ。誰かが嗤っている。誰なのかは分かっている。分からない振りをしているだけ。
一度目が覚めたら、もう今日が始まってしまう。次の夜までお預けだ。もそもそと布団から這い出た。あからさまな眠気は、しかし眠る事を許してはくれない。
冷蔵庫には、無くなりかけの安いワイン。あぁ、今の気分じゃないな。他には、二本目の……これでいいか。
無駄に気取ったグラスにほんの少しの原液と、たっぷりの牛乳を。軽く掻き混ぜる。甘く苦い香りは独特だ。つるりとマドラーから落ちる雫は一見するとただのカフェオレにも見えるが。
カルーアミルク。今の自分にはもってこいだな、と自嘲する。一口含めば、淡いアルコールが鼻から抜けていく。
そういえば、世間はハロウィンだったのか。カレンダーは面白みもない三色でそれを示していた。それなら尚更ちょうどいい、自分にも、世間にも。
舌に刺さる毒気をかき消すように流し込んで、グラスを空けた。
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