路肩の道化師

 ジョンは学校の成績が悪く、下から数えたほうが早いほどだった。

 運動も苦手で、大好きなサッカーも、チームの中で一番下手だった。

 ジョンは呟いた。


「どうせ俺は落ちこぼれだ。天才にはかなわない」


 この世は不公平だ。

 才能は生まれつき決まっている。


 お金持ちはお金持ちになる運命で、

 プロのスポーツ選手は勝ち続ける運命なのだ。


 凡人には何もできやしない。


 ジョンは家に帰るとテレビをつけた。

 どうやらマジックをしていた。


 手品師が意気揚々と、客席に向かって話しかけている。


「さぁさぁ、ここに見えますのは、1枚のカーテン。そして、テーブルの上にサッカーボールがあります。これを消してご覧にいれましょう」


 そう言うと手品師は、カーテンでサッカーボールを隠した。

 次の瞬間、手品師がカーテンを外すと、テーブルの上のサッカーボールが消えていた。


 ジョンは思わず声が出た。


「すげぇ……。どうなってるんだ?」


 手品師が一通りパフォーマンスを終えると、檀上に一人、ピエロの面を被った男が檀上に上がってきた。


 手品師は驚いた表情で尋ねた。


「君は誰だい? 迷子かな?」


 アクシデントだろうか? それともそういう演出だろうか?


 ピエロは手品師からカーテンとサッカーボールを奪い、手品師と全く同じことをして見せた。


「素晴らしい! 彼に盛大な拍手を!」


 ピエロは大きな拍手の中、会場を去っていった。


 ジョンは不審に思った。


「これはきっと演出だろう。みんな騙されてるんだ。」




 次の日、ジョンはお遣いを頼まれていた。


 途中、広場に人だかりができていたので見てみると、なんと昨日のピエロがリフティングをしていた。


 プロほどではないが、常人とは思えないほどのボールさばきだった。


 パフォーマンスが終わると、歓声とともに次々とチップが投げ込まれていった。


 ジョンは興奮しながら駆け寄った。


「あなた! 昨日テレビで出ていた方ですよね! どうしてこんなことができるんですか!?」


 ピエロは答えた。


「僕は゛モノマネ゛が好きでね、プロの技を真似をしていくうちに色んな技が身に付いたんだ。もちろん最初はできなかったけど、だんだんと近づくのが嬉しくてね。時々『自分は才能ないから』といって諦めてしまう人がいるけど、それは違う。だって凡人の僕でもできるんだよ? 僕はただ、やり方を調べて、練習を続けたからできるようになったんだ」




 ジョンは家に帰ると、サッカーボールを抱えて外に飛び出した。


 驚いた母は尋ねた。


「こんな時間にどこ行くの?」


 ジョンは恥ずかしそうに答えた。


「ちょっと公園で練習してくる」

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