日常との決別

 この間の一件で、神より授かった恩寵ユニーク・スキル持ちであるのが露呈したので、一人で森に入り、スキルについてや身体能力などの確認を行っていた。

 今までは隠すために、満足するまで実験や練習をする機会が無かったが、そんなことを言っている場合ではないのだ。


 ちなみに、スキルの詳細は話さず、狼の獣人っぽくなれるスキルだと誤魔化している。


(時間がない。出来うる限り、最速最短で強くならなくては)


 女神の転生の仕方には多大な問題が有ったので、早急に現状の把握が必要となったのも原因だ。





 ーーーーーー

『本来、転生なんてものに携わってないし、管轄でもない。前世の記憶や能力の引き継ぎなんてのは、指で数える程だからノウハウも無い』


 しかし、俺は転生しているぞ。


『重ねて言うなら、の前世の引き継ぎは前例が無い。だから、あるを使って簡略化した』


 ある


さ。転生するオスカーの魂に君の魂を捩じ込んで、狼の魂スキルで記憶の想起を促したのさ』


 なっーー!!!?!?


『かなり強引な方法だったからねー。1つの身体に2つの魂。普段は、人族にしか恩寵を与えない僕が急いで、狼の君に与えたから、色んな異常イレギュラーが起きてるみたいだね』


 貴様! 何処の女神だ!? 絶対に信仰は、せん!! 知らずにしていたなら、改宗してやるからな!!!


『異常と言っても、良い意味でさ。元々、成長したり変化したりすることがあるユニークが、不安定なせいで成長や変化しやすいんだ。オスカーの魂も有るから微弱だけど、【偽装】も受け継いだみたいだね』

 ーーーーーー




(あの女神が糞なのは、よく分かった)


 女神の話から、俺のユニーク・スキルに成長と変化の余地が有るのと、他にもユニーク・スキルが有ることが分かった。



 ーーセミ・ユニーク・スキル【偽装】(偽)ーー


 嘘やフェイントの成功率の向上を手助けする。

 自身にしか作用せず、自分から離れた物や罠には効果が無い。


 ーーーーーー



 オスカーのように自分から離れた対象には作用しないので、仕込んだ毒の匂いを気付かせなくしたり、その辺の石ころを黄金並みの価値があるように思わせたりは出来ない。

 ユニーク・スキルと言えるほどのスキルではないが、戦闘において有用である。

【偽装】の(偽)とは、皮肉が効いてるのか何なのかは分からない。



 ーーユニーク・スキル 【狼の魂】ーー


 相応の魔力を消費することで、生前の魔狼パールの能力を再現、応用することが出来る。

 new・生前、再現スキル発動中、捕食したり鍛えることで生前の能力スキルの効果が向上する。


 ーーーーーー



 スキル発動中は、生前の俺にも経験値が入ってるらしく、再現出来る能力が増えたり強化されるようだ。

 初のスキル全発動中に猪を倒したことで、この項目が増えた。

 来るべき戦いまでに俺の人間の肉体は幼いので、身体能力の強化には限界が有るので、魔力で補える部分が多くなるのは非常に助かる。


(これで目途は立ったが、問題は両親や皆……レオナの説得だな)




「10才になったら、領主様の兵になって、村に仕送りしたいと思う」


 考えた結果、ように、将来の予定を話すことにした。



「流石は俺の子だ! 狩人でなく兵士になるとは!! 夢がデカいぞ!!!」


「あらー。10歳で1人前のー 狩人になるどころか、兵士になるなんてー。さすがー、私のシルバーね!」


「へっ! 正直、悔しいが、お前なら出来るぜ。村は、俺が守っているからよ。行って来いよ!」


「あれまー! 本当に、村から勇者様か英雄が生まれるぞー!!」


 両親やレオ、村の皆は、俺がユニーク・スキル持ちなのを知っているので、将来は武力方面で立身出世をするだろうと考えているはずだから、この説得で大丈夫だが


「やだ! やだ!! シルバ! 行かないで!?」


 あの事件から、あからさまに俺を意識しているレオナは、やはり強烈に駄々を捏ねる。

 ……気乗りは、しないが、【偽装】(偽)を使うしかないようだ。



「こういう時は、は、快く送り出すものだよ。成人・15才結婚できる年齢には、1度は村に戻ってくるからさ」


「!!? うん! うん!! レオナ! 良い奥さんになる!!!」


 孤高の魔狼として異性の経験が少なく、人間的な男女関係は皆無な俺から詐欺師のような台詞が、ポンポン出てくるなんて、自己嫌悪しかない。




 こういう事を見越して、このスキルを授けたなら、全て終わった時に、あの女神関係の石像や宗教を破壊しつくそうと心に決めた瞬間である。







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