虚構の中の真実

冷たく鋭利な唾

　好奇と憤怒（ふんぬ）に内在するすべての言葉は人を救わない。そこから生まれるものは誤解と破壊。それに留（とど）まる。

　その証拠として言葉と共に吐かれた唾を己の口に迎え入れることはない。

　吐き捨てた唾を飲み込めない理由は、その唾があまりにも部外者然としていて、冷たく鋭利であるからだ。まるで自分のものではなかったように錯覚してしまう。

　人はいつも、誰かを傷付ける言葉が自分のものではないと信じて疑わない。