嫌悪感は美しい羽を広げる

 私は世界に対して強い嫌悪感を抱いている。生命は死ぬくせに生まれるし、海は荒れるくせに航海に出るし、道は途絶えるくせに歩くし、腹はいっぱいになるくせに食べるし、家は壊されるのに建てるからだ。

 概ね手前勝手に作られては消えていくものの、そのものごとの正しさは最後までわからないままに終わる。

 こういった事象をすべからく疑うこと。

 それが嫌悪感の始まりだ。

 嫌悪感を抱けない人間は、おそらく成長出来ないだろう。

 生まれてこの方なんの不満も抱かずに、死ぬことを受け入れる。


 さて、嫌悪感とはなんだろうか。

 わかっていることは、

 嫌悪感によって人は人を殺す。

 同時に、嫌悪感によって人は人を生かす。

 この二つだけだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る