第78話 ボス戦で仲間が全員死ぬと大変

 結局その後、宮河さんの仕事が迫っているという理由で二人は家から出ていった。


「また来るから覚悟しておきなさい!」


 帰り際にそう言われたが、正直もう二度と会いたくない。

 事務所にクレーム入れてやろうかな?

 はぁ……俺の何がそこまで良いのかね?

 なんてことを考えながら俺は自室に戻る。


「うぅ……シクシク……けいちゃんから怒られた……シクシク」


「姉貴、なんでも良いけど直ぐに出て行ってくれ。出ないと今後一切口効かない」


 自室に戻るとそこには先程追い出した姉貴が、俺のベッドの上で布団にくるまって泣く真似をしていた。

 俺はそんな姉貴を無視してPCの電源を入れてゲームを始める。


「なによ! せっかくお姉ちゃんが追い返すの手伝って上げたのに!!」


「姉貴は場を荒らしただけだろ」


 俺は背中に抱きついてくる姉貴を無視してパソコンを操作する。

 はぁ……この性格マジでどうにかならないかな?

 俺がそんなことを考えていると、俺のスマホが机の上で鳴った。

 俺がスマホを手に取ろうとすると、先に姉貴が俺のスマホを奪い取り画面を確かめる。


「い、井宮椿……けいちゃん? まだこの女と付き合ってるの? お姉ちゃんだめだって行ったよね?」


「別に付き合ってねぇよ! てか返せ!! それは俺のスマホだ!」


 俺は姉貴からスマホを奪い返し、井宮の電話に出る。


「もしもし? なんだよ、イベント周回なら今から始めるが?」


『あんた朝からやってるの? 今日はゲームのことじゃないわよ』


「そうなのか? じゃぁなんのようだよ」


 俺が井宮と話をしていると、姉貴が俺の背後に立ち俺と井宮の会話を盗み聞きしてくる。

 ちょうど良い、会話を聞けば付き合っていないことぐらいわかるだろう。

 俺はそんなことを考えながら通話を続ける。


『あ、アンタどうせ今日暇でしょ? ちょっと付き合ってよ』


「え? あぁ……」


 そう言ってきた井宮の言葉を聞いた後、俺はゆっくり後ろを振り返る。

 そこには先程まで俺の姉貴が居たはずなのに、今は般若がじっと俺を見ていた。

 いや、二人で出かけるくらいでそんな顔になる?


「はぁ……悪い井宮、今日は用事がある」


『そ、そう……わ、わかったわ、突然ごめん』


「じゃあ、そういうことでな」


 俺はそう言って井宮からの電話を切った。

 そして再び振り返ると、そこには満面の笑みを浮かべた姉貴の姿があった。


「うふふ〜。けいちゃん今日はもう家に居るの? ならお姉ちゃんが美味しいクッキー焼いてあげようかぁ〜?」


 さっきと打って変わってごきげんだな。

 てか、まさかここまで豹変するとは……。

 

「あ、あぁお願いするよ」


「じゃぁ、部屋で待っててねぇ〜」


 そう言って姉貴は部屋から出ていった。

 ふぅーこれで姉貴は居なくなったな。

 俺は直ぐに部屋の鍵を締め、パソコンの前に戻る。


「さて、邪魔者も居なくなったし早速ゲームでもするか」


 俺は邪魔者が居なくなった自室でいつもどおりゲームを楽しむ。

 しかし、井宮が俺を誘うなんて珍しいな。

 なんか断って少し悪いことをしたかな?

 あいつとももう友達なんだし、少しは気を使うか。

 面倒クセェけど……。





「はぁ………」


 私は電話を終え、深いため息を吐いていた。

 まさか断られるなんて……。

 少しは私も頑張ろうと思ってアイツを誘ったのに……。


「まぁ、あいつが友達をつくらい理由に急に遊びに誘われるからってのも含まれてたし、これは私が悪いわね……」


 でも、友達から誘いを断られると結構傷つく。

 しかもその相手が最近気になっている男子だと余計に傷つく。

 

「確かイベント周回行くとか言ってたけど……あ、ログインしてる」


 私は彼の言葉を思いだし、ゲームにログインし彼がログインしているかを確かめた。

 案の定彼はログインしており、一心不乱にイベントクエストの周回をしていた。

 全く……あいつはいっつもゲームばっかりなんだから……。

 私はそんなことを考えながらも、ゲーム内チャットで彼にメッセージを飛ばす。


【赤椿:手伝う?】

【K:マジ? 良いの?】


「良いわよ……馬鹿」


 ちょっと形は変わっちゃったけど、ゲームの中で一緒に遊べる。

 この形が私達らしいのかもしれない。

 

「あ、あの馬鹿死んでるし!!」


【K:ごめん】


「ごめんじゃないわよ!!」


 あぁもう!

 このボス一人で倒すの大変なのに!!

 

【K:マジごめん】


「うるさいわねぇ!!」


 あとで絶対文句言ってやる!!

 

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