第18話 姉の心配



 私の名前は前橋知与、突然だけど私は今すごく驚いている。

 休日は家に籠ってゲームばかりしているうちの弟が、休日に女の子と外出するというのだ。

 これは姉としては気になって気になって仕方がない。

 洗面所で身支度を整える弟を見ながら、私は相手の女の子について考える。

 どんな子かしら?

 もしかして彼女?

 いや……でもあの子の性格からして彼女なんて出来そうにないけど……顔は良いからねぇ~うちの弟ちゃんわ。

 

「姉貴」


「はわっ! な、何かしら圭ちゃん?」


「はわってなんだよ……さっきから何を見てんだよ」


「べ、別に見てないわよ? それよりも服は何を着ていくの? お姉ちゃんが選んであげようか?」


「あぁ、じゃあお願いしようかな」


「わかったわ、お姉ちゃんに任せて! じゃあとりあえず脱いで」


「いや、ここで!? 普通に似合いそうな組み合わせの服を渡してくれれば部屋で着てくるけど?」


「ダメよ! ちゃんと着させながら決めないと似合ってるかどうか分からないわ!!」


 私はそう言いながら洗面所のドアを閉めて、内側から鍵をかける。


「なんで鍵を掛けた?」


「はぁはぁ……そ、そんな細かいことは……気にしないで! さぁ……はぁはぁ……服を選びましょうか!」


「服は俺の部屋にあるんだけど!? てか、やめろ! ズボンを脱がせようとするな!!」


 残念ながら弟は思春期、昔はお姉ちゃんとお風呂に入ったりしてたのに……今じゃパンツの一枚も脱がさせてくれない。

 はぁ……弟が大人になるってこんなに悲しいことなのね。

 私は弟に洗面所を追い出され、仕方なく弟と一緒に部屋に向かい、服を選び始める。


「はぁはぁ……圭ちゃんの香り~」


「姉貴、頼むから俺の服の匂いを嗅ぐのやめてくれない?」


「へ? あぁごめんね圭ちゃん、直ぐに選んであげるから待っててね! とりあえずパンツはこれが良いんじゃないかしら!」


「誰が下着まで選んでくれって言ったよ!」


「えぇ、私と同じ黒なのにぃ……」


「姉貴の今日の下着の色なんて知らねーよ!」


 もう、あぁでもないこうでもないってわがままなんだから!

 でもそう言うところが可愛いのよねぇ~。

 こんなにイケメンに育ってってくれてお姉ちゃん嬉しいわ。

 これも中学の頃に私が圭ちゃんの育成方法を変えたおかげね!

 

「はい、これなら変じゃないわよ!」


「あぁ、姉貴ありがとう。お土産買って来るから」


「うん、ありがとう。ち、ちなみにその……今日会う女の子ってどんな子?」


「あぁ、学校一の美少女って言われてる子。じゃあ行って来る」


 弟はそう言って玄関のドアを閉めた。

 学校一の美少女?

 え? 

 そんなのこの世に存在するの?

 というか、なんでうちの圭ちゃんがそんな子と知り合いなの?

 普通の女の子じゃないの!?

 私はそんな事を考えながら、帽子とマスク、そしてサングラスをつけて外の出る。

 確かめなくちゃ!

 その子が圭ちゃんにとって害のある女の子じゃないかを!!

 こうして私は弟を影から見守る事(尾行)にした。


「駅前で集合なのね……」


 私は駅で相手を待つ圭ちゃんを見ながら、早く相手の女の子が来ないかと周りをきょろきょろ見ていた。

 すると一人の女性が圭ちゃんに近づいて行った。

 まさかあの子が待ち合わせの子?

 何よあの女!

 全然可愛くないし普通じゃない!

 と、私がそんな事を考えているとまたしても女の子が圭ちゃんに近づいてきた。

 今度はギャルっぽい女の子だ、しかも露出が多い服を着ている。

 ま、まさかあの子が待ち合わせの子!?

 確かに可愛いわね……でもギャルよ!

 ダメよ圭ちゃん!

 絶対にその子はビッチよ!

 毎晩色々なパパと色々やってるのよ!

 騙されないで!


「ま、まさかあんなギャルの子だったなんて!! 大丈夫かしら?」


 私はそんな事を考えながら、二人の後をついていった。

 二人でゲームショップに入り、何やら仲良さそうに話をしている。

 圭ちゃんゲーム好きだし、そこに付け込まれてのかしら?

 でも圭ちゃん買い物したら直ぐに帰って来るって言ってたし、大丈夫だと思うけど……。

 私がそんな事を考えながら二人の様子を見ていると、今度は二人でファミレスに入って行った。

 まさか一緒に食事まで!?

 そんなに仲が良いの!?

 

「もう、ギャルなんかと仲良くしちゃだめじゃない! どうせ貢がされて捨てられるんだからお姉ちゃんで我慢しておきなさい!」


 聞こえるはずもないのに私はそんな事を一人でブツブツつぶやいていた。

 ここまでの私の言動で気が付いてると思うけど、私は重度のブラコンです。

 もう弟が好きで好きでたまりません。

 そんな弟に女の影が近づかないように、中学時代は色々したけど、高校に入学してからは何も対策をしていなかった。

 しかも、私好みに圭ちゃんの髪型なんかを弄っちゃたせいで、中学の頃以上に回りの注目を集めてしまっているみたい。

 はぁ……こんな事なら私好みにしなきゃよかった!!

 でもカッコいい!

 うちの弟本当にイケメン!

 結婚したい!!

 そんな事を考えながら、私は二人の座った席の後ろの席で二人の話を聞いて居た。

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