第16話 女子と出かけるって男にとっては一大イベント
「じゃ、じゃぁ……前橋君の信頼を得られれば良いってこと?」
「え?」
高城はそう言うと涙目で俺にそう尋ねてくる。
いや、まぁ確かに信頼さえ出来れば別に良いな……友達になるわけじゃないし、井宮みたいな感じの関係は一人増えるだけだし。
「まぁ……それなら」
「わかった! じゃあ私前橋君の信用を得られるように頑張る!!」
「な、なんでそこまで……」
別に俺みたいな不細工でボッチで根暗な男にこだわらなくても……。
井宮と仲良くなる方法は他にもあると思うのだが?
まぁ、俺から信頼を勝ち取るのは俺の匙加減次第だし、まぁ大丈夫だろう。
なんてことを思い俺は簡単に条件を飲んでしまった。
それを聞いて居た井宮は再び俺の裾を掴んでクイクイと引っ張る。
「ね、ねぇ良いの? 私の勘だけどあの子あんたの為ならんでもなるわよ?」
「いや、それはないだろ。俺みたいな不細工になんでそこまでするんだ?」
「だからあんたは不細工じゃないって言ってるでしょ! 一回鏡見てきなさいよ!」
「まぁ、そんな話はさておき、どうせすぐに飽きるだろ?」
「そうかしら……」
俺と井宮はそんな話をしながら高城を見る。
「私頑張るね!」
笑顔でそう言う高城。
一体この美少女は何を考えているのか……。
*
井宮と知り合って初めての休日、俺は井宮と初めて一緒に買い物に行くことになっていた。
まさか俺が女子と買い物に行くことになるとは……。
事の発端は井宮とのメッセージのやり取りからだった。
なんでも今とあるゲーム機本体とソフトを同時購入することで、4000円の値引きが受けられるという割引イベントをゲームショップでやっているらしいのだが、井宮はゲーム機を新しくしたいがソフトがいらなく、俺はソフトが欲しいがゲーム機はいらないという状況であり、それなら協力してお互い安くゲーム機とソフトを購入しようという話になった。
そんなわけで駅前で待ち合わせをしているのだが……なんだか緊張するな、学校以外でクラスの女子と会うなんて。
姉に言われて髪型のセットなんかはちゃんとしてきたつもりだが……大丈夫だろうか?
「あ、あの……今お暇ですか?」
「え? 俺ですか?」
なんだこの女は?
いきなり話掛けてきたが、俺に何か用だろうか?
「良かったら私とお茶でもしませんか?」
「え?」
こ、これはもしや!!
噂に聞くマルチ商法の勧誘か!!
美人な女性が甘い言葉で儲け話をしてきて、高いツボを売りつけたり、どこぞの会員にさせられるあれかじゃないのか!?
「すいません、友人を待ってまして」
「じゃぁ連絡先交換しませんか! 今日がダメでもまた今度お茶でも……」
「い、いやですから……」
「何やってるのよあんた」
「あ……井宮」
俺が対処に困っていると、私服姿の井宮が駅の中からやってきた。
井宮は俺の状況を見ると、俺の手を掴んでこういった。
「すいません私の連れなので」
「え? あ……す、すいませんでした!!」
井宮の言葉に女性は直ぐにどこかに行ってしまった。
「流石ギャル、強いな」
「何がよ……何ナンパされてるのよ」
「ナンパじゃない、マルチ商法の勧誘だ! はぁ、やっぱりリアルは怖いなぁ……」
「あんたはもう少し自分自身を理解しなさいよ」
ため息を吐きながら井宮はそう言った。
井宮の私服は何というか……オシャレだった。
しかも熱くなり始めて来ている六月の終わりともあってか、少し露出が多い気がする。
肩だしのシャツにはエロさを感じるな……。
「な、何よ」
「いや……」
ヤバイ、少しジーっと見すぎてしまった。
ここは何とかごまかさないと!!
だが、ごまかすよりも素直に思った事を言った方が良いんじゃないか?
うーむどうしよう……。
「なんか……いつもと雰囲気が違って良いな」
「な! 何よ急に!」
「いや、私服姿が新鮮でな……だが少し露出が多すぎはしないか?」
「あ、あんたには関係ないでしょ! 私の勝手よ」
顔を真っ赤にし、自分の胸元を隠すようにしながらそう言う井宮。
まぁ確かに少し言い過ぎたかもしれない。
あまりに露出が多くて、お父さんみたいな事を言ってしまった。
「あ、あんたも意外とちゃんとした格好してきたわね……」
「あぁ、姉貴が女の子と一緒ならちゃんとしてけって……服なんかも姉貴が決めるから、編ではないと思うんだが……どうだ?」
「え? あ、あぁ……い、良いと思うわよ……その……私服の方があれね……良い感じよ」
「そうか、ならよかった不細工が少しはマシに見えるかな?」
良かった、井宮からもオーケーをもらえれば俺の服装は普通なのだろう。
「よし、じゃあ早く行こうぜ! ゲーム機が売り切れてたら洒落にならねーし」
「そ、それもそうね」
「ん? どうした井宮? なんか顔赤いけど?」
「な、なんでもないわよ馬鹿!!」
「いや、馬鹿はひどくね……」
一体どうしたというのだろうか?
井宮は俺と顔を合わせようとしない。
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