第3話 どうやら俺に試練が訪れたようだ

「なぁ……」


「なんだよ色男」


「朝から特定の女子に睨まれて困ってるんだ、どうしたらいい?」


「井宮だろ? お前昨日呼び出されてたけど一体何をしたんだ?」


「いや……特に何もしてないと思うが……」


 井宮に呼び出された翌日の昼休み、俺は井宮にずっと睨まれていた。

 なんだ?

 昨日はちゃんと断ったし、俺何も悪いことしてないよな?

 ちなみに新作ゲームはマジで面白かった。

 眉間にしわを寄せ、英司は俺に耳打ちをしてくる。


「それで話ってなんだったんだ?」


「え? いや別に大した話じゃない、ただ友達になりたいといわれたから断っただけだ。別に何も悪いことなんてしてないだろ?」


「いや、それだよ。やっぱりやらかしてやがったな」


「え? 友達になることを拒否ってなんで怒られなくちゃいけないだよ」


「あのなぁ……放課後に人気の無い教室に男子を呼び出してたぞ、友達になってくださいって……察しろよこの色男!」


「だから何をだ?」


「しかも友達になることすら拒否るってなんだよ! 井宮が可哀想だと思わないのか?」


「しかしだな、俺の友人枠は英司一人で埋まってるからな……空きなんてないんだよ」


「じゃあ課金でもなんでもしてそのふざけた枠を広げろ! なんだフレンド一人しか登録できないって、ゲームだったらクソげーだぞ!」


「何を言ってるんだ、この世界はゲームじゃないぞ」

「わかってるんだよそんなこと! はぁ……お前なぁ……少し拗らせすぎだぞ、いくら他人と関わるのが嫌いと言っても限度がだな……」


「ごちそうさまでした」


「話を聞け! この女の敵!」


「いつから俺にそんな肩書が?」


「今からだよ、まさかお前がここまでとは思わなかったぞ……」


「はぁ……さっきから聞いていれば好き放題言いやがって……じゃあ逆に聞くが、お前はなりたくもないやつと友達になるのか?」


「それはないけど、有無を言わさず断りはしねーよ。それに友達になりたいってことは少なからず自分に好意を抱いてくれてるやつだろ? 俺だったら無下にはしねぇよ」


「なるほど……一理あるな、こんな根暗で不細工でひねくれものの俺と友人になりたいなんて普通言わないしな」


「不細工以外自覚あったんだな。それに相手は井宮だろ? ギャルっぽいけど可愛いしスタイル良いって評判だぞ、何が不満なんだ?」


「不満か……不満は……結構あるぞ!」


「あるのかよ……」


「まず、女子の友人なんてもって見ろ、絶対に何かにつけて奢らせてくるぞ、しかも容姿の良い女子はたちが悪い、自分を可愛いと思っているから自分の言うことなら男はなんでも言うことを聞くと思っているしな」


「毎回偏見がすごいな……でも可愛いんだぞ? まぁ外見だけで判断しろとは言わないが、可愛い女の子と友達になれるのは嬉しいだろ? 男として」


「可愛い女子ならネットで検索すればすぐに見れるし、それに俺はどっちかっていると二次元の女の方が好きだ!」


「お前って本当に残念なイケメンだな……」


「イケメンではないぞ、何を言ってるんだ?」


「はぁ……なんでもねぇよ……井宮も可哀想に」


 英司はそういいながら、食事を終え箸をおく。

 

「俺以外の友達も作れよ、結構楽しいぞ友人が多いのは」


「それはお前がリア充だから言えるんだ、非リア充の俺が友人一人を作ろうとすると一年かかるぞ」


「昨日その友人を作る機会を自分からなくしたのはどこのどいつだよ」


 英司は深くため息を吐くと、手を頭に当てながら俺に言う。


「お前、俺以外にマジで友達作れ、マジで社会に出て苦労するぞ」


「なんだと? それは俺に死ねって言ってるのと一緒だぞ!」


「どういうことだよ……良いか、会社は学校と違って他社とのコミュニケーションが必須になるんだぞ、貴方とは話したくありません、貴方とは仕事したくありませんとは言えないんだ」


「なんだ急に……英司、お前は本当に高校生か? 一瞬先生かと思ったぞ」


「うるせぇ! 誰でも良いからお前は友達つくれ!」


 英司は声を上げて俺にそういってきた。

 他の連中もなんだなんだと俺たちを見ている。


「お、落ち着けよ……げ、ゲームのフレンドなら結構……」


「アホか! リアルの友達を作らなきゃ意味ねーだろ! 誰でも良いからお前は友達を作れ! それまで俺はお前の友達をやめる」


「え!? お、おい嘘だろ! そんなことになったら、俺は一体誰と飯を食えばいいんだ!!」


「知るか、お前に友人が出来たらまた一緒に飯を食ってやるよ」

「お、おい!」


「がんばれよー」


 英司はそういいながら、俺を置いて食堂から出て行ってしまった。

 クソ!

 俺みたいな根暗でひねくれた不細工に友人をつくれだと!?

 何をあいつはとち狂ったことを言っているんだ!

 そんな無理に決まってるじゃないか! 

 もし俺に友人が出来なかったら、俺は正真正銘のボッチ!

 クソッ!

 そんなことになったら!

 なったら………なったら………何か不便なことあるか?

 

「別に……学校での話し相手が居なくなるだけか……問題ないな」


 どうせ昼休みや休憩時間はスマホでゲームをやるか、ネットでチャットしてるだけだしな……問題ないな。

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