第1章 魔法学校への入学編
第1話 少女の苦悩
中学校三年生の現在十五歳である黒羽愛理は自室にて困惑をしていた。その茶色の肩まである長さの艶がある綺麗な黒髪を振り乱しながら、自室の机の前で一枚の洋型封筒を両手で握り締めている。その封筒の表面には、国立星空学園高等学校入学試験結果と書かれていた。
「とうとう届いた……試験結果が!」
愛理は目鼻立ちがハッキリしている二重の大きな目を見開きながら、目元を強調する眉間に力を入れて逆八の字にしている。そして、適度な筋肉がついていてる綺麗なくびれが特徴的な愛理のスタイルを際立たせている白いシャツに冷や汗が付き、履いている半ズボンから伸びている細い足が微かに震えていた。
「私の人生がこの一枚の紙に書かれているのね……見たいけど見たくない……」
紙を左手で掴みながら右手で自身の綺麗で艶のある髪を掴んでいると、不意に自室のドアが開いて、妹が愛理に飛びかかってきた。
「お姉ちゃんの受けた学校の結果が出たと聞いて、早く仕事から帰って来たよ!」
「奏!? 帰ってたのね。 うん……試験結果が届いたよ……」
仕事から帰ってきたのは一歳年下の妹、黒羽奏。 彼女は中学校二年生ながら、その姉である愛理に引けを取らない可愛さとスタイルの良さにより、アイドルにスカウトされて学業と両立しながら活動をしている。
奏は愛理とは違い背中に届くまである長さの髪をしており、髪色はピンクで前髪は右わけの斜めバングをしている。奏は髪型も相まって愛理と同じく、目鼻立ちがハッキリしている美少女と近所で有名であり、今一番勢いがあるアイドルだとも言われている。
「今日も仕事疲れたよー車移動ばかりで体が痛いー。 お姉ちゃんマッサージしてよー」
「マッサージ屋さんに行って施術してもらいな」
奏の身長は愛理よりも若干小さいが、その小ささがちょうどいいと人気が出て、愛理と同じく小さな顔が羨ましいとよく言われていた。奏は愛理と同じ中学校に通っており、今は制服を着ているようである。 愛理は既に自室にいるので今はラフな部屋着を着ている。
「お姉ちゃんまだ結果見てないのー? 行きたかった魔法を学べる学校に行けるかもしれないんだよ? ささっと結果見ようよー」
「そんな簡単に言わないでよ! もしダメだったらどうするの!? あぁ……緊張しすぎて手汗が……」
奏が奥にある窓際に壁に沿って置いてあるベットに寝っ転がって愛理に早く見なよと言う。奏はスマートフォンで愛理の受験をした魔法学校のことを調べると、お姉ちゃんが受けた学校以外にも沢山あるよと話しかけた。
「沢山あるのは知ってるけど、星空学園高等学校じゃないとダメなの! あの学校にいかないと私は魔法を学べないの!」
奏の言葉に愛理はここじゃないとダメなのと返答をした。
「星空学園高等学校じゃないとダメなの! あの学校は敷地面積が広くて、あのスカイランドと同じ面積があるのよ!? それに有名な魔法の教師が沢山いるし、色々な機関に繋がりがるのよ!」
「そう聞くけど、お姉ちゃんがその封筒を開かないと何も始まらないよ?」
「そうだよね……だけど緊張して開きたくない……」
スカイランドとは愛理の生きる日本にある、日本一の集客数と敷地面積を有している遊園地である。そのスカイランドと同等の敷地面積、東京ドーム八個分に相当する場所に建設されているのが、愛理が受験をした星空学園高等学校である。
「いつまでも悩んでないで、早く見たほうが楽になれるよ? あ、私が見てあげるよ!」
「や、やめ!?」
「はい取った!」
そう言いながらベットから勢いよく起き上がると、愛理の持っている紙を右手に掴んで、取ったと声を上げた。
「お姉ちゃんが見ないのなら、私が見てあげるからね!」
「か、勝手に見ないで!」
「なら初めからちゃんと結果を見ればいいんだよ。 試験頑張ったんでしょ? なら自分を信じてればいいの」
無邪気な笑顔がムカツクと愛理は思いながら、私が見るからいいと奏を部屋の中で追いかける。すると、初めからすぐ見ればいいのにとクスクスと小さく笑って結果の封筒を手渡す奏であった。
「見るからね……本当に見るからね!? 見ていいんだよね!?」
「早く見なよー。 お姉ちゃんならちゃんと結果出てるよ!」
そう言って小さな洋型封筒を開けると、そこには合格通知書と入学案内と書いてある小さな紙が入っていた。その紙を見た愛理は、静かに涙を流すとその場にへたり込んでしまう。突然へたり込んだ愛理を見た奏は、大丈夫なのとすぐに愛理を体を支えた。
「不合格だったの!? お姉ちゃんならすぐに別の学校で魔法学べるって!」
「違うわ……ご……合格してた……」
その奏の言葉に、愛理は違うのと返した。愛理は持っている紙を奏に見せるとその紙に書いてある言葉を見て奏も驚きの声を上げた。
「やったねお姉ちゃん! これで念願の魔法を本格的に学べるよ!」
「うん! やったぁ! やったよ!」
奏が喜ぶのも無理がなかった。愛理は小学校で初めて魔法の基礎を学ぶと、その奇跡にも近い事象に愛理は感動をしていた。中学校ではより基本的な魔法の事柄を学ぶと、高位な魔法を学びたいことや魔法を使って人に喜んでもらいたいと考えるようになっていた。高校受験の時期になると、愛理は魔法を学べる日本一の学校を調べると星空学園高等学校が出てきた。この学園は日本で高名な魔法学者に教えてもらえることや、魔法の研究施設も併設されていて、魔法の研究も授業に組み込まれている。そして、魔法の実践的な学習も取り入れていて武器を用いた魔法の運用なども教えてくれることになっている。
愛理は魔法を学び続けるためや夢を叶えるために星空学園高等学校に通うために、塾に通ったり独学で魔法の勉強もして筆記や実技試験に挑んできた。その結果の集大成である合格通知をもらって、愛理は嬉しくて涙が止まらなかった。それを見ていた奏はお姉ちゃんおめでとうと再度言い、これで夢が叶うねと愛理を抱きしめた。
「おめでとうお姉ちゃん! お姉ちゃんの夢に一歩近づいたね!」
「ありがとう奏……これで私は魔法を学べる! 立派な魔法使いになるわ!」
「私もお姉ちゃんに負けないように夢を叶えるね!」
そう決意をすると、ドアを叩く音が聞こえた。何かあったのと女性の声がすると、愛理がママと呼んだ。ママと呼ばれた女性は黒羽楓であり、 楓は愛理と奏に顔が似ていて愛理を大人にしたような雰囲気であった。そして身長は愛理ほどであり、背中に届くほどの長さの黒髪をして前髪は眉毛の上の位置で切り揃えていた。
「ママ見て! 私合格した!」
「そうだよ! お姉ちゃん合格したんだよ!」
そう言って母親に合格通知書を見せると、自分が喜ぶ以上に楓は喜んでくれた。愛理に抱き着いた楓はこれで通えるわねと言い、今日は豪華な晩御飯にするわねと言う。既に時刻は夜七時を回っているものの、晩御飯を作るのを途中でやめて服を着替えてすぐさま家を出ていった。家を出た楓を見送った二人は、リビングにてテレビを付けて談笑をし始める。
「豪華って何だろうね! 楽しみだわー」
「お母さんのことだから、きっと想像も出来ないような超豪華なご飯だよ!」
愛理の家は三階建ての一軒家であり愛理と奏の部屋は三階に、両親の部屋は一階にある。二階にはリビングや風呂場があり、愛理と奏は笑いながら二階のリビングにあるソファーに座っていた。愛理の横に座っている奏はお姉ちゃんもあと二か月で高校生かとしみじみとしていた。
「もうすぐ卒業かー……中学校生活が終わるの早いなぁ。 もっと中学生でいたい気分よ」
「私はもう一年あるー! もっと楽しもう! いいでしょうー!」
「羨ましい! でも、高校生になればもっと活動の幅が広がるもんねー!」
「わ、私は芸能人だもん! もう大人のような扱いされてるもんね!」
二人は子供のように言い合っていた。ちなみに奏は既に特例の推薦によって私立の芸能活動を認めている上位高に進学が決まっており、三年生に進級をしても受験勉強をする必要はないので芸能活動に専念出来ると喜んでいた。なのであとは、愛理の受験結果を待つのみとなっていたのである。
「やっとお姉ちゃんの進学先も決まったことだし、これで落ち着けるねー。 色々片付けたら遊びに行こー!」
「そうね! 二人だけでもいいし、家族みんなで行くのも楽しそう!」
無邪気な笑顔を見せる奏に、愛理はごめんね心配かけてと謝る。すると、見ていたドラマがCMに入りその画面に奏の姿が映った。
「これこの前撮影したCMだ! やっと公開されたんだ!」
「CM!? 凄いじゃない!」
そのCMには煌びやかな服を着ながら踊る奏の姿が映っており、踊りながら奏は氷の魔法を駆使して綺麗な氷晶を作って自身と一緒に水晶を動かしていた。その姿はとても美しく、妹ながら綺麗じゃないのと自然と言葉が出た。その言葉を聞いた奏はありがとうと言いながら愛理に抱き着く。
「このCMの撮影は凄い大変だったんだよ! 何度も撮り直したり、監督に怒られて大変だったよー」
「それは大変過ぎる……私じゃ途中で投げ出しちゃうかも……怒られて平静を保てる自信ないわ……」
「お姉ちゃんは確かに泣いてそれどころじゃなくなりそうだね! 一応はプロとしているから分かりましたと言って私は平静のままで撮影をしてるよ!」
ちなみに、CMの中で奏が氷の魔法を使ったように誰しもが扱える属性が決まっている。愛理が使える属性は使用者が極端に低いと言われている光属性である。火や水に奏が使っているような氷属性など、幅広い属性がある中で愛理は人類が魔法が使えるようになってから使用者が数人しかいない光属性を扱える希少な人間であった。
「奏の氷の魔法綺麗だわ! 演出にピッタリね! 私の光属性の魔法じゃああいう風には出来るか分からないわ」
「お姉ちゃんの使える光の魔法は使用者がほとんどいない魔法だけど、光なら絶対に演出に使えるはずだよ! 今度一緒に何か作ろうよ!」
「そうね! そういう機会があれば参加させてね!」
この世界では、魔法は小学校で魔法とはの意味を学びながら魔法に初めて触れていく。そして、中学校一年生で魔法の理論や魔法の歴史に魔法を扱うための基礎となる魔法を学び、中学校二年生で自身の得意属性を知ることとなる。三年生では得意属性の基礎を学んでいく魔法教育の流れとなっている。
そして高等学校に入学すると、進学先の学校によって魔法に力を入れるのか学業に力を入れるのか分かれることとなっている。愛理は魔法に力を入れて夢を叶えること、奏は学業の方に向かって芸能活動など魔法以外の事柄に力を入れることに決めていた。
「高校で習う魔法ってどんなことがあるんだろうなー。 魔法を沢山覚えるぞ!」
「頑張れお姉ちゃん! 私は芸能のお仕事を頑張るから、応援してるよ!」
愛理は光属性を独学で勉強をしているが、資料があまりない中で基礎となる資料を図書館で見つけてなんとか受験に合格をしていた。
「お姉ちゃんの光属性ってかなり珍しいから、かなり大変だよね。 私も資料見つけたら教えるね!」
「本当!? ありがとう! テレビ局とかに良いのあったら持ってきて!」
そう言いながら奏が愛理の左腕に抱き着くと、愛理はありがとうと言いながら奏の頭を撫でていた。その愛理と奏の様子をドアの隙間から見ていた父親である正人は、二人を仲良い姉妹だなと言いながら入ってくる。
「ちょっ、どこから見てたのよ!」
「お父さんの変態! 扉の隙間から覗き見ないで!」
そう言いながら愛理が父親の左足を自身の右足で蹴ると、ちょうど脛に当たったのか痛いと叫びながら床に蹲ってしまう。
「愛理……そこで母さんと会って、合格したのを教えてくれたからケーキ買ってきたのに……その対応はないだろう……」
「覗き見てた罰よ! 良い攻撃だったでしょう?」
床に倒れてしまった正人の持っているケーキを愛理と奏は喜びながら受け取ると、二人は目を輝かせて箱の中を見た。
「フルーツタルトよ! やったわ!」
「やったねお姉ちゃん! これは美味しいケーキだね!」
愛理と奏はフルーツタルトだと喜んでいると、倒れている正人の後ろから楓が現れてご飯食べた後に食べるのよと二人からフルーツタルトを取り上げて冷蔵庫に入れた。
「正人さんいつまで倒れているの? 早く起きなさいな、歩行の邪魔よ?」
「楓まで……そんなこと言わなくても……ぐふぅ……」
正人の腹部を右足で軽く蹴りながら、楓はキッチンに向かって行く。正人は愛理と奏の父親であり、短髪の黒髪をしていてツーブロックのアップバンク系の髪型をしている。体型は筋肉質だがスリムな体をしていて、スーツを着ていては筋肉質だとは分からないとよく言われていた。
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