第9話:第1章-6
「い、いや私は……」
「いいから、いいから。ここで会ったのも何かの
青年はそう言って表の扉を押すと、廃教会の中にさっさと入って行ってしまった。
なんなのよ、あいつ。……正直、入りたくない。
けど、サインを
先に奥の部屋へ入っていった青年を目で追う。意を決して、私も扉の中へ。
「こっちだよ、早くおいで」
奥から声。どうやら、居住空間は別らしい。
だけど……そんなに奥行きあったかしら? 疑問を感じつつも追いつき、
「ねぇ、どうしてこんな所に住んでいるの?」
「単に
「物置?」
「見てもらった方が早いかな。さ、どうぞ」
そう言って、やけに重厚な黒い扉を開けた。
扉には
でも、魔力は、何も感じないし、見たこともない。
「? どうかしたかい?」
「……何でもないわ」
強がりつつ扉を潜り
「!?」
私は立ち
「ふふふ。その反応、
「な、何なの、よ、こ、これ……」
そこは、まるで博物館のような場所だった。
言葉が出てこず、周囲を見渡す。
そして、天井に届くほど高い
手前の棚に収められているのは、無数の
「慣れないで入り込むと迷子になるよ? 気になるなら今度、案内しよう。今日はこっちだけを通っておくれ」
という青年の言葉を受けて、止まった。
おっかなびっくり青年の後をついていくと、その通路だけでも次々ととんでもない物が目に飛び込んできて、心臓がその都度、動揺してしまう。
明らかに上級と分かる
その横の棚には強い魔力を帯びている無数の本がずらり。あの青い表紙の本。もしかして禁書じゃ?
そうこうしていると、生物由来の素材がまとめられている棚の列が目に入って来た。
……まさか、そ、そんな……
先を進む青年へ問いかける。
「ね、ねぇ……これ、
「ん? ああ、それかぁ。
「…………」
何を言ってるのか理解出来ず
龍、龍と言ったのか、この男は。
冒険者を志したならば、誰もが
青年の顔をまじまじと
彼は少しだけ困った表情を浮かべると、歩を進めながら、言い訳じみた口調で語り出す。
「昔、後押しをした子達が
その
『その男は【育成者】を自称している』
『その男に育成を頼んだ冒険者は今や皆、大陸級である』
……まさか、本当に?
私が目を
「どうかしたかな?」
「あ……な、なんでもないわ」
「そうかい? 多分、今日、君が持ってきてくれたのも似たような品じゃないかな」
「!?!!」
思わず持っている小箱を凝視する。
え……? こ、これも……?
「さ、行くよー」
「あ、う、うん」
そのまま進んで行った先にあったのはまた重厚な扉。木のような、金属のような素材……材料が全然分からない。
あと、どう考えても、
でも、こんな魔法が存在するなんて、聞いたことも……。
青年は私に構わず扉を開け入っていく。私は
──そこは整理が行き届いている居住空間だった。
年代物の木製テーブルと
青年が手に持っていた紙袋をテーブルに置くと、食材を出して棚へ
天窓から
窓の外には花々が
きょろきょろしていると笑い声があがった。
「そこに座って。今、飲み物を
「……結構よ。すぐに帰るから」
「そう言わずに飲んでおいきよ。とても
美味しい珈琲!
私の故郷であるレナント王国では紅茶よりも珈琲がよく飲まれていた。
けれど、
まして、ここは辺境。美味しい珈琲は
私は
それを見た男は満足気。口笛まで
……龍を倒すような
椅子に
興味をひかれ、本棚に近づいてしげしげと
手前にあったのは、百数十年以上前、全世界を旅したという世界最高の射手が記した大旅行記『千射夜話』。これは私も読んだことがあるわね。この世界の形を私達が何となく分かっているのは、この本の
間には
小さい
ふ~ん……こういうのも読むんだ。少し
思わず
私、客観的に見たら──、
(見ず知らずの男の自宅に連れ込まれてる!?)
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