第2話 ご近所の大精霊様


玄関前には紺色の7分丈ジャケットを着た長い金髪の女性が立っていた。


ユミリアは彼女の姿を確認すると玄関前に立ち寄り、ドアを開ける。


「こんばんわ、メリア! 」


金髪の女性はメリタ。実はメリタも6年前にユミリアらとともにこちらの世界にやってきた異世界出身者だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


メリアの正体は大聖霊。父、広祐が魔王を倒した後、広祐とエルフ妻は農家として暮らしていたそうだ。こちらの世界のようにトラクターなどの農業機械がないので畑仕事は彼らにとってかなりの重労働だった。更に彼のエルフ妻は当時お腹にユミリアを妊娠していたため農作業は困難を極める。そんな中、農業や育児に負担をかけないように広祐は加護をつけられる大聖霊と契約を結ぶことを決める。その大聖霊こそがメリアだった。


ユミリアが生まれてからはメリアは面倒をみていた。ユミリアにとっては第2の母であり、良い姉という存在でもある。彼女はこちらの世界に初めて来た時は、10cmもない位の大きさだった。


広祐はこちらの世界に戻ってきた時は1年足らずでアメリカに行ってしまう。周りに誰1人と知り合いがいなくて心細かった為、メリアをアメリカに召喚した。この時彼女の姿で現れ、その後もアメリカ人家族の養子として育てられた。その為、この世界のメリタはごく普通のアメリカ人だ。戸籍上ではメリタは優也と同じ20歳だが、アメリカの大学を既に卒業しユミリアの様子を見守る日本にやってきた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


現在は、ユミリア達が住んでいる一軒家の近くにあるアパートに1人で暮らしている。たまにこうして仕事帰りにユミリアの様子を確認しに遊びにきている。


メリアは着ていたジャケットを脱ぎ、リビングの椅子に座る。


「ユミリア、元気? って先週の週末あったばかりだけど。」


ユミリアはメリアと話したいがために一気にパスタを完食する。


「ユミリア.. !? ちゃんと噛んで食べないと.. 」


そこに由美子もリビングにやってくる。


「メリアちゃん来てたの? いらっしゃい。」


「お邪魔してます。」


「由美子さん、課題の採点終わったの? 」


ユミリアが聞くと、由美子は


「まああと半分くらいかな、ちょっと息抜き。休憩休憩! 」


ユミリアの学校の話やメリアや由美子の仕事の愚痴などの3人のガールズトークが始まった。メリアが買ってきたレモンサワーを由美子とメリアは飲む。


「由美子さん、お酒飲んでいいの!? まだ課題の採点終わってないんじゃないの!? 」


ユミリアは少し酔い時始めた由美子に戸惑う。


「あとは点数の計算だけ、それに大学の課題なんていちいち一人一人にちゃんとつけてたら大変よ。ねえ、メリアちゃんはアメリカの大学行ってたんでしょ? あっちの大学の課題はどうなの? 」


「教員によるかな。同じ授業でも教える人が違えば授業の難易度も違うし、本当教える人次第かなかな? ユミリアは留学とかしてみたい? 」


「お父さんロサンゼルスにいるし、いつかはアメリカに行ってみたいな。」


「ゆりなちゃん、それじゃあ今から英会話特訓し始めなきゃね。」


3人がガールズトークを続けているとゲームを終えた優也が自室からリビングに来る。


『そろそろ、採点の続きしなきゃ。」


由美子はそう言い、課題の採点を続けに彼女の部屋へと戻る。


「おっつ、メリア!メリアがいるってことは今日は金曜日か。」


優也はメリアを少しやらしい目で見つめる。そんな優也の顔をみたメリアは、


「あっつ! 優也! 優也の顔みて思い出したんだけど、そういえば大事な話があるの忘れえてた! 」


「俺の顔見て思い出すってどんな話だよ。」


「まあ、今はいっか。 」


優也は残りのパスタを温め、椅子に座る。


「また今度話するからさあ。」


ユミリアは頷いたが、優也は


「結局しないんか! 」


「それにちょっと、おいユミリア! このカルボナーラ、ベーコンねえし、つか玉ねぎばっかなんですけど! 」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る