第37話 スイッチ

いつもの様にブルートゥースイヤホン越しに音楽を聴きながら、小説を書きながら、スイッチを押す。


「続き頼むね」


「OK」


僕らは1つの小説を5人で回して書いている。正確に言えば、ネット上の非開示創作システムを独自に開発し、それぞれの都合に応じて書き足していっている。


「STOP」


「今のところは、納得できない。悲しみが滲みでていない。おいおい、他の作家が書いたところを、許可なしに上書きするのはルール違反じゃないか」


「I CAN’T STOP」


「おい、お前マナー違反だってば」



僕は創作小説の確認どころか、音楽の世界に浸りきっていた。


「ロンリー 愛そレーション NOT アローン LOVE LOVE ラビュー」



「今のフレーズいいね」



別の作家仲間がLINEしてくる。


僕はただ、聴き入っている詞を書き綴っているだけなのに。得てして僕らの代表作はこうして作られたのだ。



「お前、また、前の時みたく俺の続き推敲しながら書き足してくれよ」


「分かった。今から入れるから。ちょっと待って」



「カチャッ」


大正ロマンスやら昭和ソース、平成のペースト満載のリズムが泉の如く流れるから。僕の耳先は…魔法の筆先。


「次、君にスイッチするから、Y・O・R・O・S・I・KU」思いの間間に書いてみて…

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