第30話 ナイトストレンジャー
「お前はよそ者だからな」
教師の子で転校生だった僕は、いつもそう言われ続けた。
「仲良くしよう」
「ああ。いいよ」
いつも口先だけだった。
いつもいじめられた。いじられた。
でも、あの夜のことは忘れない。ナイトレンジャーが現れた日。
とても強くて、優しくて、法要力がある。
「はんにゃーはーらーみーたーなにーみーたー」
不思議な呪文のようなものを唱えていた。
「ねえ、おじさん、お話し聞かせて」
「そうじゃなー。では、今日は、孤独な木の話をしよう」
ツルツル頭のおじさんは、永遠と同じ話を繰り返した。寺の裏山に密林があって、
毎朝散歩に行くが、一本だけ小さな木が密林を避け、獣道脇に立っている。
密林の大木たちは、風が吹いたり雨が降ったり、雪が舞ったりした時、皆でざわざわしながら噂話をする。今日の風は強いとか、風で落ちた木の実をリスが持っていったとか、今日雪が降ったから、2,3日間は風が強いとか…。
孤独な脇道に生える木は、そんな話を小耳に入れず、ただひたすら大きく、強く、たくましくなるためだけに徹し、黙黙と水分を取った。
ある熱い夏に、裏山が崩れた。大木たちはおしゃべりする間もなく崩れ落ちた。
孤独な木はそれを見て、黙って黙した。それから何千年もその木は生き続けた。強く、たくましく、包容力のある木をワシは法要したんだ。
「何枚だーーー難毎日だーーーー 何万(欲しいの)だーーー」
あとで知った事だが、おじさんはてっきり「お坊さん」だと思っていた僕だが、実は「ストレンジャー」だったそうだ。
おじさんもよそ者扱いされていたんだ。
俺はそんな事を想い出しながら、今、強く、たくましく、そして優しく人の心を受け入れる抱擁力を兼ね備え、「knight ranger」をやっている。
闇夜から明け方のくれない陽をバックに翼をつけ舞いながら…
「お父さん、見て、ナイトレンジャーが飛んでいるよ」
次の日はきっと、晴れる。俺、折れない翼を持ってるから。
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