第25話 さくらw

「お前、昨日、合コン行ったんだって」

「ああ」

「珍しいな」

「そうか」


合コンへ久々に行ったわ行ったのだが、実際に行ったのは、俺の脳から分離した「AI」装置の上物だけ。


「私、結愛と言います。ゆあ、YOURかな」


随分、しゃれた言葉遣いをするなと感じた。


「君、もしかして、さくら?」


「さくらでなくて、結愛よ」


これは、相手も「AI」装置を猫被ってやがるな。手ごわいな。


「好きなもの一つ挙げて」


「んーーーーー。さくらんぼかな」眼の前のカクテルグラスを見て語る。


決定だ。俺はパーティーの場を抜け、ひっそりと去る。




数日後、ついついその結愛の美貌に惹かれ、あの時、挨拶程度に渡してしまった「名詞」を見てかけてきたのか、相手から電話が来る。


「プル縷縷るうるるる」


「私、I」


「えっ 愛?」


「今度、合えない?」


「どこで」


「エアで」





それ以来、音沙汰がない。何も無かった空気(エア)感が漂う。こちらからも相手からも連絡のしようがない。相手の連絡先を聞いておけば良かった。



「AI」の被り物同士だけに、知る由もなかった。


それでよし。サクラм



今は二人一緒に暮らしている。


結愛の笑顔は笑えるほど眩し過ぎる___君は、さくらじゃなかったんだね。


「うん」


君の縦に振る首の動きはどう見ても不自然過ぎるw。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る