閑話 私の知ってるダンジョン雑学通信     〖第一二万六八一三号〗

 ごきげんよう。


 永遠の美少女かつ読者様の永遠のアイドル、イステ・ト・トゥールフ(七八億とんで二五二八歳)でございます。


 皆様いかがお過ごしでしょうか。


 私の知ってるダンジョン雑学通信〖第一二万六八一三号〗お待たせいたしました。


 さて、今回とりあげるダンジョンを皆様はご存じでしょうか。かつて神出鬼没の大厄災として恐れられていた『不滅のアルコルトル』です。


 嬉しい付録は【ダンジョン用宝箱方位磁石】――だけではございません。


 なんと今回は特別付録もご用意しております。【ダンジョンお花摘みマップ】と【アルコルトル産偽薬草判別シート】です。是非皆様のダンジョン探索にお役立てくださいまし。


 また、不滅のアルコルトルといえば第一〇万回記念号でも特集しましたね。


 え? お読みになってない? 左様ですか、それはそれは……。


 ではそんなうっかりさんのために少々復習をいたしましょう。


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      《不滅のアルコルトルについて》


①本誌だけのマル秘情報


・南の島に出現した新しいダンジョン

 前述の『かつて』とさっそく矛盾しましたが、それには理由があります。アルコルトルは心を入れ替えたらしく、今は善良なダンジョンとして生まれ変わったとほざいています。失礼、少々乱暴な言葉を使ってしまいましたね。では改めて。実はアルコルトル、島にあるとされていますが本当は自由に移動できるのです。私の知る限りダンジョン史上二つ目のとても珍しいタイプのダンジョンです。信じるかどうかは読者様次第でしてよ。


・無駄に広い

 中心には天をも貫く酷く歪な形の巨塔、その周囲を同じく聳える分厚い巨大な壁が囲っています。塔も壁も上層と下層に別れており、塔と壁の間に橋がかかっている場所もあるとか。塔の歪さのせいで場所によっては壁との距離が数百メートルであったり数十キロメートルもあったり様々なようです。なお、一般的に巨塔のことを深部塔と呼び、そこへ辿り着く一番の方法は転移装置を見付けることと噂されています。


・様々な建造物

 塔や壁に建造物が無秩序にひしめき入り乱れている様子はまさに種々雑多。民家や配管が剥き出しの魔導工場のような場所も散見されますし、崩れかけの遺跡のような場所も多いですね。よく塔や壁に建造物がくっついているという話を聞きますがそれは誤りです。建造物がそれらを形作っているのです。


・植物が多い

 これまた種々雑多な植物が無秩序に生えていますね。アルコルトルを訪れた方ならお分かりかと存じますが、アルコルトルの半分は植物です。建造物を呑み込み至るところに根や枝が張り出していて進み難いことこの上なし。とはいえ貴重な薬草や素材になる植物が多いのも事実。良し悪しは考え方次第でしょうか。


・至る所に卵が転がっている

 これは他のダンジョンにないアルコルトル唯一の特徴ですね。隠された孵卵機を使えば、ガラクタからお宝まで様々なものが出てくるらしいとのこと。


・深部塔上下一〇階までの魔物が異常に弱い

 前述と重複する部分もありますが、アルコルトルには入口から続く壁の中とは別に深部塔というエリアがあるのです。その始まりの階層から上下一〇階までは、同じ魔物でもダンジョン外で遭遇する魔物の半分ほどの強さしかないといいます。この場所には特殊な方法でしか辿り着けないとされています。


・死ねない

 これもアルコルトル唯一の特徴ですね。瀕死になると卵になって復元されます。ですが寿命が伸びるわけではないので勘違いなさらないようご注意くださいね。


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②第一〇万回記念号に掲載の雑学(タイトルのみ)


・移動式ダンジョン屋との共通点!?

・アルコルトルの趣味はダンジョン泥棒

・アルコルトルの弱点は魔物作り!?

・瑠璃色のアルコルトルはナルシストで浮気者

・緑色のアルコルトルはトチ狂っている

・食いしん坊な槌の化け物

・可愛らしい魔物が性悪の極み

・アルコルトルの恥ずかしい失敗集

・極秘!? 瑠璃色のアルコルトルが作る特別な卵の秘密!

・絶対役立つアルコルトルの秘密地図

・少年ヴァンパイアと小柄なタイタンについて

・アルコルトルのとっても痛~い過去

・極悪! アルコルトルの罠初見殺し編

・激写! 寝起きのアルコルトル!?

・手に入れようアルコルトル産レアな魔物の卵! 但し、後が怖い!

・アルコルトルだった!? 冬夜に置かれる不法侵入者からの枕元プレゼント


 他にも役立つ雑学がたくさんありますよ。気になる方は是非第一〇万回記念号をお読みになってくださいな。とはいえ、現在では入手困難かもしれませんけれど。


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 ではここからは今回の追加調査で判明した雑学をお伝えしましょう。


①瑠璃色のアルコルトルは砂使い?

 瑠璃色のアルコルトルは変幻自在の砂を生み出し武器や防具にするらしいのです。それは時に移動手段にもなるとか。


②緑色のアルコルトルは畑仕事をしている

 アルコルトルには隠された畑が点在していて、そのほとんどを緑色のアルコルトルが管理しておりますの。果樹園や薬草畑、魚畑に肉畑に料理畑、果てはヒト畑なるものも存在するらしいのです。ただ、深部塔の上下一〇階以外でそれらを見つけても手を出さないことをお勧めいたします。泥棒扱いされて激しく怒られますから。


③アルコルトルの水回り事情

 親切なことにお花摘みできる場所は至る所に存在します。一見分かりにくいですが探せばすぐに見つかるでしょう。野グソや野ションは……あら、失礼、指定場所以外でのお花摘みはステータス爆下がりの呪詛を刻まれますので止めましょうね。お風呂や調理場もありますが、魔物が利用していることもあるので注意が必要です。真っ裸で魔物と混浴なんてお嫌でしょ。


④アルコルトルの大神殿

 まだ若いダンジョンにもかかわらず、アルコルトルには既に大神殿が存在すると今回判明しましたの。もしも大神殿を見つけられたなら、心の底から祈りを捧げるとよいでしょう。運が良ければ神のご加護があるかもしれませんよ。ですが、それが邪神の類いだったとしても私は責任を負いかねます。ダンジョン探索の基本は自己責任ですことよ。


魔物鉄道ポポラレール

 アルコルトルには秘密の交通手段が存在します。それはステータスの能力値や金品などを対価に利用可能。しかしフリーパスを入手すれば乗り放題となります。魔内販売も充実しておりダンジョン探索がはかどること間違いなし。可愛らしいぬいぐるみの車掌さんの虜にもなるかもしれませんね。但し、なにがあっても利用中の戦闘行為は御法度です。車掌さんが原型を留めないほどぶちギレます。なお、フリーパスの入手方法は現在調査中です。


⑥深部塔上層一〇三階

 この場所は大変危険という報告があります。ここに辿り着くだけでも称賛ものですが、特に精神力が試されるということ以外詳しいことは分かっておりません。数少ない生還者は皆、何故か固く口を閉ざすのです。


⑦アルコルトルの人形注意報

 もしもあなたがアルコルトル内で人形を見かけたら一目散にお逃げなさい。可愛いから格好いいからと近付いてはいけません。持ち帰るなどもってのほかです。いいですか? 私ちゃんとお伝えしましてよ。


⑧案内人制度

 アルコルトルに挑戦する際、本来は強制的に案内人が仲間に加わります。入口によって自動選出か選択かが異なるようですが、最近は手が足りないのか案内人はいないようです。これは嬉しいですね。案内人は戦闘の邪魔になったり嘘を混ぜつつ情報を伝えてきたりするので、とても鬱陶しいと言われておりましたから。しかも案内人に嫌な思いをさせると重大なペナルティを課されるのです。このまま廃止されるとよいですね。


⑨売店について

 なんということでしょう。アルコルトル内には売店があるというのです。今回目撃されたのは卵屋とのとこ。アルコルトルの存在する島の観光名所となっている魔卵屋アルイードを模していたそうですが、島の情報を元に内部で再現しているのかもしれません。もしかすると〖第八万二七四四号〗で特集した、偽りの城下町迷宮都市バオルバオラルインドキングダムの真似をしてるのでしょうか。他ダンジョンとの類似性は探索の面白味を減少させますね。私がっかりでしてよ。


⑩不滅のアルコルトル最新遭遇情報


・リンゲッタ王国―北西部 名もなき開拓村

 情報提供:匿名希望


・サンドーラ国―クレリメント地方ノドロンゲ荒野

 情報提供:中堅冒険者パーティー『ミックスレティア』


・オフステカ王国―ピグオーク領トンツカ山中腹

 情報提供:匿名希望


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 いかがでしたでしょうか?


 今後の不滅のアルコルトル探索に役立つ情報ばかりでしたね。皆様が踏破できることを心より願っております。


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 次回予告


・ダンジョン:『氷塔のブルネルド』

・嬉しい付録:『氷塔のブルネルド踏破の証レプリカ』

・特別ゲストによる対談記録


(都合により変更となる場合がございますことご了承下さい)


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 それでは今回はこの辺で失礼させていただきます。


 ごきげんよう。

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