鏡
汀桜
八剱騎士団編
第1夜・少年とクエスト
水以外何も口にしなくなり凡そ1週間。オール・キャンベルは、先程から煩く喚く腹の虫をどうにか黙らせようと足掻いていた。その辺に生えている名も知らない雑草を口にしたり等、色々試してみたものの、腹を下したり、満腹感は得られなかった。
「あ〜〜………、腹減ったぁ……せめて金貨一枚でもねぇかなぁ……」
金貨一枚。日本の“円”に換算すると、凡そ十万円。銀貨に換算すれば百枚、銅貨であれば一万枚。
赤の国、青の国、水の国、緑の国、白の国、黒の国、黄の国
七つの国での共通の価値を持つ。
「金貨一枚だなんて、欲張り過ぎだぞ、小僧。まぁ、でも……」
オールにそう声を掛けた男性は、少し困った様にある店に視線を移した。
オールが今居るのは商店街の端。あと少し西に進めば貧民街だ。
そして、男性が見たのは賑やかな酒場。
「おじさん、俺、十五は超えてて酒は飲める。けどさ、今の俺の発言聞いてた!?!?
金貨一枚欲しいなぁって言う妄言を吐き散らす程に金に困ってんの!!」
「だからだよ。あの酒場は、赤の国でも有名なクエスト管理場でもあるのさ。クエストをクリアすれば、一気に地位も名誉もゲットだ。
まぁ、チャレンジするかは知らねぇけど。見るだけ見てみろよ?」
「皆様!道を開けて下さい!新たなクエストの追加です!!」
賑やかな酒場では、ウェイトレスが食事などを運ぶのと同時に、新クエストの掲示物を掲示している。ウェイトレスの女性は、薄っぺらい紙_______クエストの概要が記されたものを手に、掲示板へ急いでいた。
「西の方の砂漠でサバクウツボの巣だと!?!?」
「報酬は金貨百枚!?」
「金貨の百枚となると、相当豪遊できるぞ…………!!!」
そう騒ぐ男達を掻き分け、オールは張り出された最新のクエストを見る。
討伐依頼だ。対象は一匹のサバクウツボで、場所は赤の国の一番西の小さな砂漠。報酬は金貨百枚。
補足欄には、
“何日もこの魔生物のせいで荷馬車が通れません。どなたか討伐をお願いします”
と書いてあった。
「金貨百枚?大きなキャラバンが足止めされてるのか…?
こんな金額を設定できる程の金銭の余裕がある大型キャラバン…?
どっちにせよ…」
クエスト初クリアで大儲け!!!
豪遊できる上に、キャラバンの人や街の人、砂漠周辺を拠点とする騎士団や、あわよくば国レベルで讃えられる!
オールは、討伐クエストの経験はないが、憧れは充分すぎるほどにあった。彼の装備が一番の証拠だ。お世辞にも丈夫とは言えない初心者向けの装備だが、普段些細な、おつかいや何かの宣伝をしている根無し草の旅人には充分だった。
オールは荷馬車置き場へ向かった。
なんだかんだ討伐を済ませ、害悪モンスターの大半にとって貴重な部位である心臓を持ち帰って、大勢の人に褒め称えられる。
そんな浅はかな妄想をしながら________________。
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