「SS」の謎

「これは、ダイニングメッセージ? SSと血塗られた指で書かれています」


「うむ。確かに、そう書かれているな。バレット君、これはどういう意味か、分かるか?」探偵は低く唸り、助手を見やる。


「はい。ウルチ先生、これはイニシャルですね」エクボを作って、助手のバレットは答える。


「続けたまえ」


「つまり、これは犯人を指している。容疑者の中に、苗字、名前共にSがある人間は、志垣詩音しがきしおんと、志村翔平しむらしょうへいの二名。このうち、志村翔平しむらしょうへいは犯行時刻にアリバイがありますから、犯人は志垣詩音しがきしおんで決まりです」


「バレット君。君は、大きな勘違いをしているよ」


「なんですか?」口をとがらせて答えるバレット。


「これはイニシャルではある。けど、これは人の名前ではない」


「じゃあ、一体何だって言うんですか?」首をかしげてバレットが言った。


「これは、ショート・ストーリーの略だ」


「……? じゃあ志垣詩音しがきしおんは?」


「そんなものは存在しない。第一、死体なんてどこにもない。会話文を見なさい。どこにも死体があるなんて書かれていない」


「そんな、そんな馬鹿な! じゃあ、犯人はいったい……」


「つまり、作者だ」


※ ※ ※ ※ ※


【解説】


ウルチ「私だ」


作者「いや恥ずかしいから二回も言わないで」

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