消えた地の文
「うわ! これ、地の文がありませんよ!」
「本当だ。どうしてだろう?」
「さぁ、たぶん、作者が面倒になって、会話文だけにした……? あるいは、この会話が終わったあとに、すべての描写をしてくれるのかもしれません!」
「それはないだろう。だって、これだけ話しても、いっこうに地の文は現れない」
「地の文って、そもそも現れるものですっけ」
「とにかく、これを解決する方法が、一つだけある」
「それは?」
「会話文に、地の文を挿入するのだよ。——そう言って、私は対面に座る彼女に向ってウインクをした」
「うわうわ! 気持ち悪いですよ。しかもウインクできてないし。——私は両腕をさすりながら言った」
「君もしているじゃないか、はは。よく適応できてるよ」
「あ、今、先生、地の文書かなかったですね? ——私は指をさして、にたりと笑う」
「いや、そりゃあまあ。だってほら、君。普通の本でも、地の文がない部分だってあるじゃない。というか、この場合地の文は書くじゃなくて、言うが正しいね」
「知りませんよそんなの。あ! ほらまた地の文言ってませんよ——私は口を尖らせて言った」
「いや、うーん……ほら、面倒くさいじゃないか」
「だから地の文がなくなるんですよ……」
※ ※ ※ ※ ※
【解説】
地の文はどこへ……? 次回もお楽しみに。
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