突然転生したら異世界の戦士に!?主人公二人の異世界バトル冒険物語
マナル
第1話 転生
いつものように朝目が覚める。俺は篠影悠。市内の高校へ通うしがない高校生だ。毎日平凡な生活を送っている。そして今日もいつもどうりに朝を迎えた。見慣れた天井、外の風景、ここまではいい。時計を見る。うちの学校の登校時間は8時15分。今の時間はというと・・・。
7時45分。学校までの時間はどれだけ急いでも片道40分ほどだ。どう考えても間に合いそうにない。だが、こんなことは初めてではない。もう慣れたといっても過言ではないだろう。だから、焦ったりはしない。
「は~、またか。まあいいや。ゆっくり行こ。」
このセリフも初めてではない。もう何度か言っている。まあ俗にいう開き直りというやつだ。軽く朝食をとり、歯を磨いて、支度をする。自転車の前かごにリュックを入れ、まだ寝起きで重い足をペダルにかけ、いつもどうりに自転車を走らせた。見慣れた風景が続く。本当にいつもどうりだ。唯一変わったことといえば、夏も終盤になってきて、少し秋の風が吹いてきたということだ。涼しい風がワイシャツの中に入ってくる。いい風だなと思っていると、
「よっ!」
後ろから声があった。振り向いてみると、幼稚園からの親友、光彦だった。
「よー」
眠たいながらも返事を返す。
「その顔だとまた寝坊か?まっ俺もだけど。」
「うるせーよ。ねみーんだこっちは。」
わかった、わかったと言うように光彦は笑った。そんなやり取りをしながら走ってると、後ろから、
「あなた、気に入ったわ。」
聞いたことのない声だ、だがとても澄んだ声で、可愛げのある幼い声だった。不思議に思っていたのもつかの間。自分のすぐ真横から、大きなクラクションが鳴った。横を向いた瞬間、とてつもない衝撃と共に、俺の意識は途切れた。
目が覚めた。今のは夢かなと思ったが、何か違う。あたりを見渡してみると、見知らぬ天井、壁、床、自分のいる空間自体がいつもどうりではない。石造りの部屋で、天井は木組みになっている。床はというと、石だ。ん?と思った。それもそのはず、見慣れたフローリングの床とは正反対だ。自分のベットの左側には窓があり、カーテンが揺れていた。それをそっとめくり、外を見る。俺は唖然とした。空を見上げると、昼間にもかかわらず、空の三分の一くらいの巨大な惑星が浮かんでいた。それだけでも驚きだが、目線を下げてみると、森が広がっていて、恐竜のような鳥が空を飛んでいる。そして、その上には人が乗っていて、急旋回したかと思うと、まっすぐ自分の方に飛んできた。そして窓のそばまで来ると、
「お目覚めですか!よかったです。あなたが川のそばで倒れているのを村のものが見つけて運んできたのです。」
川?村の者?意味が分からない。俺はさっきまで光彦と自転車を走らせていたはずだ。そうだ。光彦はどこだ?
「あの、俺の他に誰かいませんでしたか?」
「ええ、いますよ。あなたが見つかった場所から少し離れたところに倒れていたと聞いています。今は東の小屋で休んでいると思いますよ。」
「よかった。」
俺は安堵の思いで返事をした。だが、今だ状況は呑み込めていない。ここはどこなのか、あの後なにがったのか、そしてあの少女の声は何だったのか。わからないことばかりだ。
「あの、ここは・・・。」
「ここはディルへビア。我が国の王、マーロ様が創りあげた国です。」
「マーロ様?」
「はい。本当に素晴らしいお方です。140年前、この国は戦争に溺れ、道端には死体が転がり、血なまぐさい空気が漂っているのが当たり前でした。そこにマーロ様が現れ、荒れ果てた土地を再生し、転がっていた死体は光に包まれ空へ昇っていきました。その後、戦争は終わり、マーロ様を中心に新しい国、このディルへビアを創ったのです。」
「実はそのマーロ様から伝令を承っておりまして、体が回復次第、王宮に来てほしい。とのことです。」
さらに頭の中が混乱した。まだ自分の状態も把握できてないのに、なぜ俺が王宮なんかに?まったく整理がつかない。
「なんで俺が?」
「理由は知りません。ですが、悪いことではないはずです。ですから、今は体を休めて、出来るだけ早く、マーロ様にお会いになってほしいのです。」
今だ混乱状態だが、もうあれこれ考えても、無意味な気がした。だが光彦のことが心配だ。
「あの俺と一緒にいた奴のところに行きたいんです。大切な親友で。」
「わかりました。その前に食事を持ってまいります。あと服も。」
「ありがとうございます。」
と返事をした後、男は部屋を後にした。さて、これからどうしたものか。いや、そんなことは後回しだ。一刻も早く光彦の顔が見たい。そうして、待っていると、今度はあの男ではなく、きれいな少女が部屋に入ってきた。透き通ったような肌に、吸い込まれそうなほどのブルーの目、整った顔立ちで、黄金色の髪を後ろで編み込んでまとめている。服装はというと、紺色のスカートに白のセーターを着ていて、首から変わった形のペンダントをかけていた。だが、よく見ていると、ペンダントのあたりにどうも立体感がある。思わず視線をそらしたが、男の本能のせいなのかもう一度視線を戻すと、やはりそこだけ何というか、すごく豊かだ。そんなことを思っていると、少女は、
「食事とお着替えをお持ちしました。体の具合はどうですか?川で倒れているのを見つけて、急いで助けを呼んだんです。」
「あなたが見つけてくれたんですか?」
「はい!見つけた時は呼び掛けても返事がなくて、もう心配したんですからね!」
「そうだったんですか。ありがとうございます。あの、お名前聞いてもいいですか?」
「はい!私はキリエ。キリエ=リベルバート。王宮に使えているんですよ♪ちなみにさっきの男の人は、アグネス=フォールリード。同じく王宮に使えている戦士です。」
ということはこの人も戦士なのかな?確かによく見てみると、太もものところに革製のホルスターがついていて、そこに長めのナイフを装備していた。
「本当にありがとうございました。すみません。なにも御礼できなくて。」
「いいんです。私も倒れている人を放っておけるほど、ひどい人間ではないので。」
彼女は少し微笑みながらそう言った。にしても彼女の笑顔はどこか安心する。わけのわからない状況になったのは確かだけど、この人に出会えたのは幸運だったかもしれない。
「さて、まずは服を着てください。そんな格好じゃ外に出られないでしょう?」
そうだった。裸のまま彼女と話していたかと思うと、少し恥ずかしい。いや、少しじゃない。かなり恥ずかしい。
「す、すみません。」
「いいですよ。私はマーロ様にあなたの状況をお伝えしなければならないので。王宮に戻ります。着替えと食事を済ませたら、東の小屋に行ってください。アグネスが案内します。」
「なにからなにまでありがとうございます。」
彼女はニコッと笑うと扉を開けて外に出ていった。
「あとでアグネスさんにもお礼言わなきゃな。」
と独り言をこぼして、服を着た。着てみると、黒のセーターに黒のパンツ。おまけに黒のコートときてる。かっこいいが着慣れてないと少し違和感がある。セーターは体のラインが出るくらいスリムで着心地がいいうえに、動きやすい。パンツもセーターと同じくスリムだが、丈夫な素材で膝にプロテクターがついている。コートは一見普通のロングコートだが、内側にはホルスターがついていた。まるで戦闘服だ。そしてこれまたびっくり。着替えの下に一本のナイフが置いてある。柄は革製の紐が巻いてあり、刀身はというと、刃渡り30センチくらいで反りのあるいかにも切れそうなナイフだった。嫌な予感しかしない。今後の展開にはあまり期待しないほうがいいだろう。
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