第10話

母は銀行員であった。毎日朝から晩まで働いていたにもかかわらず、僕の面倒を見てくれていた。朝6時に起きては 僕と父さんの弁当を作って、7時に僕たちを見送ってから 自分の支度を始める。8時半には出社し、午後7時まで仕事をこなす。帰宅すると晩御飯を作り、洗濯などを行い、ようやく寝れたとしても時計は1時を指していたこともあったそうだ。僕は最初 "自殺" を疑った。このようなストレスの溜まる生活に耐えきれなかったのかもしれない。そう考えた。しかし、スーパーにあった青酸カリの容器から、母の指紋は検出されないことや、防犯カメラに 母の行動が記録されていたが、何一つ不審な点はなかった。そこで僕は一つの疑問が生じた。こんなに防犯カメラがあるのに、何故犯人は特定できないのか?父に尋ねると「防犯カメラを確認しても14:07に一斉に店内の人間が倒れていく様子しか映し出されてなく、どこから焚いたのか、また、誰が焚いたのかなど、全くわからなかった。」と答えた。青酸カリの容器は後にスーパーのバックヤードから発見されたが、亡くなった方全員、また容疑者など用意周到に指紋検出を行なったが 誰も指紋が一致することはなかった。手詰まりになった捜査は打ち切りになり、未解決事件として迷宮入りしていた。

そして父さんはこう話を続けた。「このビデオカメラが送られてきたのはさっき言った通り、昨日だ。10年も未解決事件として息を潜めていたのが、今動き出した。これは何らかの環境の変化があったからだろう。この事件関連で変化が起こったことはただ一つ。お前が高校に入学したことだ。おそらくこれは犯人からの警告と受け取ることもできる。慎重に学校生活を送りなさい。」そう言うと父は無言で立ち上がり、二階へと向かった。

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