贖罪

第1話

お前か... お前だったのか...。

越智は震える手を抑えポケットから準備していたフルーツナイフにそっと手を添える。


「大三島大学附属高等学校の偏差値は現在全国トップクラスとなっております__。」

朝から学校のことニュースで取り上げるなんて、マスコミも落ちたものだな。まあ俺はこの高校に進学して国会議員になっていずれは総理大臣...。という壮大な夢を持ってるんだ。そうして母さんを喜ばせたいんだ。

越智はそうテレビに向かって話しかけるとそっと目の前のコーンスープを一口。猫舌なため、スプーンにあるスープを一気に飲みきれないのは昔からの癖だった。そうしていると2階から父が小走りで階段を駆け降りてくる。何か慌てているようだ。

「おはよう」

そう挨拶してもあからさまな無視をされてしまった。まあこれはいつものことだから慣れている。でも今日は何だか様子が違った。朝食も食べずにスーツに着替えを済ませたと思ったら、知らない人と電話を始めた。そうしてしばらくすると、駆け足で家を飛び出て行ってしまった。

まあ仕事で何かあったのかもしれない。僕はそう区切りをつけた。僕は制服に着替えて、玄関に向かった。危うく宿題を忘れるところだったため鞄のチャックは適当に閉めてある。こんなのバレた日には母に怒られるだろう。ちょっと考えただけで母の表情が容易に想像つく。

「行ってきます!」

そう玄関の母の写真に言い聞かせてドアを開いた。

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