第100話 本当の父親は……
トウヤの話を聞いて、俺は驚きと信じられない気持ちでいっぱいだった。トリス村のこと、パティのこと、そして勇者に関する事実。トウヤがトリス村に来ていたなんて、そしてこいつが本物の勇者ではないなんて……。
「信じられないな」
俺はつぶやいた。トウヤはこれだけの力を持っている。にもかかわらず、本物の勇者ではないというのか。一体、どういうことだ?
でも、俺の心の中には疑問が渦巻いていた。
トウヤが勇者でないという事実が、なぜ今、俺に明かされるのか。そして、それが俺にどんな意味を持つのか。
「トウヤ、なぜそれを今、俺に言うんだ?」
俺はトウヤに問いかけた。
「本当の勇者ではないって、それが王国にバレたらどうなるんだ?」
トウヤは深刻な表情で答えた。
「それはもう、どうでもいいんだ。今は他に大切なことがある」
その答えに、俺はますます混乱した。トウヤが本物の勇者でないという事実は、これまでの俺の理解を完全に覆していた。そして、その真実が俺の運命にどんな影響を与えるのか、その答えを探さなければならないと感じた。
そして、トウヤが俺を指差しながら言った。
「お前と同じだ! 俺が目指していたものも、復讐だった」
俺はその言葉に目を疑った。トウヤが復讐を?
こいつの口からそんな言葉が出るなんて思いもよらなかった。
パティとコルニーも、その場にいて困惑している様子だった。
彼らもトウヤの言葉に驚いているようだった。
そこで隣にいたナイルが何かを言おうとしたが。
「これ以上は……」と言葉を濁している。
しかし、トウヤは彼の言葉を遮って、「もういい」と言った。
「どういうことだ?」
俺はトウヤに問い返した。こいつの言葉は俺にはまるで謎だった。復讐を目指していたというが、一体何に対してだ?
その時、突然の動きがあった。何かが起こる気配がして、みんなが反応した。俺は周りを見渡し、何が起きているのかを知ろうとした。
「それは俺が言うのが筋だろうな」
そんな中でシエルと一緒に現れたのはヤミイチさんだった。
彼がトウヤ、そして俺の方を向いた。
「どういうことだ?」
俺はヤミイチさんに問いかけた。俺はこの人の経歴を知っている。元アレースレン王国の戦士。だけど、この人の現れ方はただの元戦士というよりも、もっと大きな何かを感じさせた。
ヤミイチさんは周囲を見回した後、この場で話し始めた。
「ローク、お前に話さなければならないことがある……これは、ただの戦士としての話じゃない! もっと深い、王国の暗部に関わる重要な話だ」
俺はヤミイチの言葉に耳を傾けた。彼の声は重く、言葉には深い意味が込められているようだった。俺は、ヤミイチさんがこれから何を明かすのか、じっと聞いていた。
「ローク、お前の過去、そしてお前の父親について話さなければならない」
ヤミイチさんの言葉は俺の心に鋭く突き刺さった。父親について? 俺は何も知らない。ヤミイチさんはどうしてそんなことを知っているんだ?
ヤミイチさんは深刻な表情で、ゆっくりと話し始めた。
「ローク、お前の記憶は改竄されている……そして、お前の父親は……」
ヤミイチさんは一瞬ためらった後、続けた。
「俺だ、ローク」
その瞬間、俺の世界が止まった。ヤミイチさんが、俺の父親だというのか?
「何だって……?」
俺の声は震え、頭の中は混乱で一杯だった。これまでの記憶、これまでの人生が、一瞬にして覆された。
「俺の記憶が改竄されているって、どういうことだ?」
俺はヤミイチさんに問い詰めた。俺の記憶、俺の過去が偽りだったのか?
ヤミイチさんは静かに頷き、言葉を続けた。
「お前が今まで信じてきたこと、思い出していること、それらは全て真実ではない。だが、今はその真実を知る時だ」
その言葉に、俺はただ茫然と立っていた。信じられない真実が、目の前に突き付けられた。俺の父親がヤミイチさんだという事実。そして、俺の記憶が偽りだったという事実。
パティ、コルニーも、この場の重さに圧倒されているようだった。俺たち全員が、ヤミイチさんがこれから明かすであろうさらなる真実に向き合わなければならない。
ヤミイチさんの登場と彼が明かした真実に、この場にいるほとんどの人が驚いていた。でも、その中で一番驚いていたのは俺だ。俺の記憶が改竄されているって、一体どういうことなんだ?
「何も知らないし、何も覚えていないんだが……」
俺は自分の心の中で思った。知っているのは、今まで俺が体験してきたことだけ。それが当たり前だと思っていた。
ヤミイチさんは少し哀れむような表情で、俺に向かって言った。
「やはり、覚えていないのか……」
彼の声には何か重いものが感じられた。
俺はヤミイチさんに問いかけた。
「何を覚えていないっていうんだ? 俺の記憶がどう改竄されているっていうんだ?」
ヤミイチさんは深く息を吸って、話を始めた。
「ローク、お前の過去、それは実際とはかなり異なる。お前が今まで信じてきたこと、それは作り話だったんだ」
「作り話……?」
俺の心は混乱と疑念でいっぱいだった。これまでの自分の人生、自分の記憶、それが全て偽りだったなんて…。でも、ヤミイチさんが今、話そうとしている真実を知ることが、俺には必要だった。
パティはその場で固まっていた。
彼女の瞳には、驚きとともに深い憂慮が浮かんでいた。
「これは……予想外の展開ね……」
彼女は小声でつぶやいた。彼女は元女神として、多くのことを見てきたはずだが、今回の事実は彼女にも予想外だったようだ。
コルニーは震えていた。こいつの目は不安と恐れでいっぱいだった。
「ど、どうなっているんだ?」
コルニ―の声はほとんど聞こえないほど小さかった。こいつにとって、俺たちの世界は急速に変わりつつあり、その変化についていけていないようだった。
フローレンはじっとヤミイチさんを見つめていた。こいつの表情は複雑だった。何かを言いたそうに口を開いたが、結局何も言わずにただ唇をかみしめた。フローレンにとって、この場の重大な事実は、こいつ自身の信念と価値観を揺るがすものだった。
ヤミイチさんの告白は、俺たち全員に衝撃を与えた。俺は周りの人たちの反応に心を痛めながら、ヤミイチさんがこれから話すであろうさらなる真実に耳を傾けた。何が真実で、何が偽りなのか、俺はその答えを求めていた。
俺はヤミイチさんの言葉にしばらく言葉を失った。これまでの人生が、作り話だったなんて。頭の中は疑問でいっぱいだった。
「なぜ、今まで隠していたんだ?」
俺はやっとの思いで声を絞り出した。ヤミイチさんは重い表情で答えた。
「それは……お前を守るためだった」
守るため?俺はますます混乱した。俺を守るために、記憶を改竄し、父親であることを隠す必要があったのか? 俺の存在が、そんなにも重要だったのか?
ヤミイチさんは続けた。
「ローク、お前は特別な存在だ……だが、それがお前の危険に繋がることもあった! だから、俺は決断したんだ」
特別な存在? 俺はそんなこと、これまで考えたこともなかった。俺はただ、普通の一人の戦士だと思っていた。それが、全て偽りだったとは。
周りにいるパティ、コルニーも、俺の状態を心配そうに見ていた。
俺は彼らに向かって、謝るように言った。
「すまない、俺……ちょっと、混乱しているんだ。」
ヤミイチさんは俺に近づいてきて、肩を抱いた。
「安心しろ、ローク……これから、お前にすべてを話す」
俺はヤミイチさんの目をじっと見つめた。その目には、悲しみと愛情が混じっているように見えた。俺はこの真実を知る必要がある。それがどんなに辛くても、真実を知ることが、俺の進むべき道を照らす唯一の光だった。
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