第1話『彼の懺悔①』
妹がいました。
歳は少し離れていました。
私が十五の時に母が再婚したのですが、相手の男性が連れてきたお嬢さんでした。
少し色素が抜けたような髪色は、どうやら癖っ毛のようでゆらゆらと波打っていました。
まるでお人形のような少女でした。
母は予てより『娘』という存在に強く憧れを抱いていおり、可愛らしい洋服を着てくれる存在を欲しておりました。
斯く言う私ですが、幼少期は母から着せ替え人形さながら、まるで『不思議の国のアリス』の主人公の少女が着ているエプロンドレスを着させられたこともありましたが、徐々に男としての体格に成長していく私に落胆し、私にそういった服を着せることはしなくなりました。
母の落胆は凄まじいものでしたが、私個人としては母の選ぶ洋服は私の好みとするところではなかったので、私にそう言った服を持ってこなくなったときとても嬉しかったのをよく覚えています。
ですから母が、やってきた妹を前にしたときの狂喜乱舞の様には驚きはしませんでしたが、これから母の『可愛らしいお人形』になってしまうだろう彼女には同情してしまったのも事実です。
妹はその年齢にしては大変利発なお嬢さんでした。
私が知らないような言葉も沢山知っていて、頭もよく回りました。
人の顔色を見抜くのに長けていたのでしょう。
彼女に隠し事は通じず、嘘だってすぐにバレてしまいました。
私は、彼女に対して『良き兄』でありたいと思っていました。
歳の離れた小さく可愛らしい妹。
目に入れても痛くない、は言い過ぎかもしれませんが、彼女の我侭は出来る限り叶えてあげたいとは思っていました。
それは彼女が私の前に立って「はじめました、お兄ちゃん」と言ってくれた時に心に誓いました。
誓ったはずだったのです。
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