廃校ミートガールズ

ヒチャリ

第1話 きちゃいました

 日も落ち、辺りは真っ暗闇。一帯は静けさに包まれている。

 

 大の女性二人だけでこんな場所にわざわざ来ないであろう。

 

 なんたってここは……

 

 廃校なのだから。


 グラウンドのど真ん中でマイクを持って突っ立ているよ、私〜。あぁー、青春学園ドラマにあるような愛を叫ぶわけでもなく、30歳手前の女がこんなとこで何しているんだか。

 

 だけど、私たちには確かな目的がある。

 

 それは再生数を稼ぐこと!


「ということで、今日の検証はこちらの廃校に本当にお化けはいるのか探っていきたいと思います!」

 

 相棒の翔子が持つカメラに一人語りかける。カメラが回ると言葉が出てくる、出てくる。私にはこのユーチューバーという仕事が性に合っているのかもしれない。


「り、梨花ちゃん、大丈夫ぅ」


 小声震え気味ボイスなカメラマン翔子からOKサインをもらう。黒髪ロングヘアー、真丸二重の可愛らしい小柄の女の子(アラサーであるが)。だからホント万人受け。撮影編集の腕はいっちょまえなんだが、度胸試し系の撮影は厳しい模様。


「ちょっとビビりすぎじゃない」

「だって、お化けだよ、幽霊だよぉ」

「一緒じゃん」

「うぅ〜」


 完全チキン状態の翔子。一方の私、髙橋梨花は性格サバサバ、幽霊なんているわけないじゃんって思っているボーイッシュ系女子(女子とは何歳まで使っていいのであろうか)。

 翔子と女二人できゃっきゃっうふふ言っている系コンテンツは視聴者からもウケが良い。この真っ暗怪奇検証ロケは我ら「りっちゃん、しょうちゃんチャンネル」内の目玉コンテンツなのである。


「大丈夫、大丈夫。いつも通り、パパッて撮るだけだからさ」

「だってこんな画像が来たらさぁ」


 翔子はスマホを取り出し、私に例の画像を見せつける。画像にはこの廃校で撮られたであろうグラウンドの写真。よく見るとその廃校の窓に人影が写っているのである。


「こんなものいくらでも加工できるっしょ」

「いやでもさ〜、万が一ってことも」


 私がいつもの手際でスマホをジンバルに取りつけていると、


「あれっ!」

「ん?」


 突如、翔子の声で響き渡る校庭。何やら彼女が廃校に向けて指差している。私も彼女の指差す方向を見つめるものの、特に何かある気配ではない。


「別に何もないじゃん」

「いたんだよぉ〜」


 改めて廃校を見つめている翔子。

 私はカメラを起動し、そっと翔子の背後足下に忍び寄る。

 瞬時に片手で翔子の片足をガッとつかむ。


「いやあぁぁ〜」

「いい声いただきましたぁ」

「ちょっとぉ〜」

 

 暗い中、足掴まれるのって怖いんだよねぇ〜。ってことで「りっちゃん、しょうちゃんチャンネル」視聴者にとって有益な声いただきました。これでまた再生数伸びるかな?


「じゃあ翔子の気もほぐれたことだし、いきましょ。ゴーゴー!」


 廃校内に歩を進める私に、翔子も怒り半分怯え半分状態で付いてくる。

 これが私たちのいつも通りの撮影スタイル。そう思ってたんだけどね。

 

 この後に奇妙な出会いが待ち受けているとは知る由もなかった。


〜・〜・〜・〜・〜・〜

お知らせ

廃校ミートガールズ連載開始しました!!

次回2話は1週間後までにアップ予定です!

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今後もよろしくお願いいたします!!

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