第46話 サザエ、ボディーガード、所信表明

 所信表明演説を前に、首相は遊説に街へ出た。

 わりかし歓迎されていたので、ボディーガード……もしくはスペシャルポリスの面々も気が緩んでいたのだろう。

 変なおじさんがやってきて、首相のポケットに何かを入れたことに気が付かなかったのだ。


 事件は演説もクライマックスに近づいてきたころに起きた。

 あらゆる聴衆が涙ちょちょぎれさせていた、まさにその時であった。

 変なおじさんの入れた巻き貝が、首相のポケットのうちで育っていたのである。

 巻き貝は急速な成長に耐えきれず爆発した。


 テロ行為かと思われた。

 しかし死傷者はなし。

 敢えて言うなら、首相の髪型が某日曜日の有名主婦のそれになっていたことだ。

 ボディーガードが首相の頭髪の変化を指摘すると、首相はキレた。

 なにが良くなかったのかは不明だ。

 ただ有名漫画のセリフを発言しながらプリプリ怒っていたのである。


 実際、首相の髪型はサザエさんのそれだったので、イエローペーパーは首相のことを日曜総理大臣と呼ぶようになった。

 当然首相はキレた。

 とはいえ、あまり大人気ないかと思い、我慢することにした。


 それにしても、頭髪は難しい。

 名前がまずわからないものもたくさんある。

 サザエさんヘアー、スネ夫ヘアー、アトムヘアーなど作画上の嘘をつかなければならないものもあるし、モヒカンのように所属意識を高める意図を持ったものもある。

 ともかく、頭髪は難しい。だから、頭髪は難しい。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る