134(3,032歳)「そして突然のおねショタ回!」

 ってことで私が魔王に向かって【従魔テイム】の首輪を生成する直前に【ロード】。


「じゃあまずは、一瞬だけ魔王様をお預かりしますね」


「「えっ!?」」


 ビビる魔王とレヴィアタン氏。


「大丈夫、0.数秒だけですから! 【瞬間移動】!」



    ◇  ◆  ◇  ◆



 ってことで、【1日が10000年にテンサウザンドなる部屋・ルーム】化した魔の森別荘へご招待!


「こ、ここは……?」


 居住区や畑なんかを見回しながら、不安そうな魔王キュン4歳。


「安全な場所だから大丈夫だよ」


 魔の森のど真ん中だけどね。


「ね、まずは美味しいもの食べようよ。その後お姉さんと遊ぼう?」


「?」


 魔王キュンが首を傾げる。


「美味しい、とは何だ? 遊ぶ、とは何だ?」


「…………え?」



    ◇  ◆  ◇  ◆



「んなっ、なんだコレ!? これが『美味しい』なのか!?」


 魔の森別荘の食堂にて、私が出した最高級風竜ウィンドドラゴンとオーク・エンペラーの合いびき肉ハンバーグや極上ハチミツたっぷりのホットケーキやなんかに大興奮の魔王キュン。


「ねぇキミ、王様なんでしょ? いつも何食べてるの?」


「さぁ? 何かこう、四角くて硬いモノ。『えいよう』と魔力がいっぱい詰まってるってリヴァイアは言ってる。味はしない」


 第二次大戦中の軍用レーションか何かよ!?


「それって100年前もそうだったの?」


「『ふういん』されるまでは、食べたことがない」


「えっ!?」


「生み出されてすぐ、先代魔王から【魔王】の『しょうごう』を『けいしょう』して、そこからすぐに勇者に『ふういん』されてしまったから」


「んんん? どういうこと? だってキミって4歳――」


「?」


 魔王キュンはキョトンとした顔で首を傾げる。

 うむむ……話が通じない。まぁ4歳児が相手だし仕方ないか。


「ま、まぁとにかく、まだまだいくらでもあるからね!」


 いろんなものを食べさせたかったので、ハンバーグは小ぶりにしてある。

 お子様舌だろうから生野菜は出さず、お肉や玉子に練り込む感じで。

 そうして食事が一周したころに、小さめのショートケーキ、チーズケーキ、チョコレートケーキセットをご提供。


 お子様だもの。ケーキの魅力には勝てなかったようだ。

【探査】したところ十分すぎるほど満腹なはずだけど、『もっと欲しい』という魔王キュンの上目遣いなご発言に抗えず、4つ目のシフォンケーキをご提供とあいなった。


「美味しかった! アリソン、美味しかったぞ!?」


「あはは、そりゃ良かったよ。じゃあ次は、一緒に遊ぼう!」


「遊ぶ、とは何だ?」


「楽しいことだよ」


「楽しい、とは何だ?」


 ……この子、本当にどういう生活してきたんだろう??


「まぁ、やってみれば分かるよ。ってことでド定番のインベーダ○ゲーム!」


 この部屋では1秒がざっと42日なる。

 とりまここで1週間TVゲーム漬けにして、私の従魔になればいろんなゲームが無限に遊べると刷り込んでやろう! にっしっし……。


【アイテムボックス】から机型の筐体を取り出し、ドドンと魔王キュンの前に置く。

 椅子を置いて魔王キュンを座らせて、


「ここのボタンをこう――」


 背後から抱きしめるようにいて操作方法を教えようとすると、魔王キュンの体がびくりと震えた。


「あ、ご、ごめんね! でも大丈夫だから! 取って食ったりはしないから!」


 言いながら頭を撫でてあげると、やがて体のこわばりが解けてきて、私に背中を預けてきた。あら可愛い。

 そのままヨシヨシし続けていると、


「……なんだろう?」


 魔王キュンがぽつりとつぶやいた。


「なんだか、胸のあたりがじわっとする」


「イヤな感じ?」


 ふるふると首を横に振る魔王キュン。


「お母さんに、こんな風に抱きしめてもらったことはないの?」


「母親はいない」


「あっ、ごめんなさい……そうだよね、100年前のことだもの」


「違う。僕には最初から親がいない」


「え?」


「存在しない。僕は作られたモノだから」


「つ、作られた?」


 さっきから感じている違和感。


 100年前は食事をしたことがなかっただとか、

『最初から』親がいないだとか、

 魔王のステータスにあった年齢の表記――4歳(+3.8)――だとか。


「ま、まさか……き、キミは、誰に作られた、のかな?」


「魔法神様」


「どういう風に、作られた、のかな?」


「こういう風に」


 魔王キュンが手のひらを広げると、そこに小さな羽虫が生み出された! しかも動く! 普通に生きてる!


「【生命創造】!? しかも肉体付きィ!?」


「僕にはせいぜい小動物程度までしか作れないけれど」


 言って羽虫を【アイテムボックス】に収納する魔王キュン。


「僕は魔法神様に作られて、言葉と、魔物をあやつる方法を教えてもらい、人族を『せんめつ』するという『しめい』をうけた」


「ね、ねぇ……ってことはまさか、キミってまだ2ヵ月間くらいしか生きてないのかな?」


「うん」


「Oh……」


 100年前は食事をしたことがなかった――つまり作られて知識だけ詰め込まれ、早々に前線で【魔王】を継承し、まさにそれが先代勇者たちのチャンスとなって、魔王キュンは封印された。

 で、目覚めて早々魔物の集団暴走スタンピードからのぉアデス軍襲来からのぉ【流星メテオ】攻撃。

 その間食べていたのは軍用レーションモドキのみ……。


 親もいない。愛も知らない。あるのは魔法神から植え付けられた、人族への殺意のみ。

『美味しい』や『楽しい』を知らなかったことからも、四天王を始めとする周りの魔族たちは、魔王キュンに忠誠こそ捧げていても、愛情というか子育て的な感情は持っていないんだろうね……。


 あーダメだ、可哀そうになってきた。

 子育ての経験はないけれど、少なくともこの1週間は、思いっきり構ってやろう!






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追記回数:551,551回  通算年数:3,032年  レベル:5,100


次回、アリス、ショタ魔王をデロデロに甘やかす。

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