126(2,999歳)「アフレガルド王国を滅ぼすところだった……」

 ……おぎゃあっ、おぎゃあっ……


 …………………………………………。

 ……………………。

 …………。


 フェッテン様に、いたい。



    ◇  ◆  ◇  ◆



 今朝に【ロード】し、王城、フェッテン様部屋の隣の『アリス部屋』へ【瞬間移動】。


「どうしたアリス!?」


 すると、フェッテン様が部屋に転がり込んできた。


「何かあったのか!? な、なんて顔してるんだ!」


「どうして……」


 フェッテン様に抱きしめてもらいながら、なんとか声を絞り出す。


「うん?」


 努めて私を安心させようとしてくれている、フェッテン様の優しい声。


「どうして、何かあったって分かったんですか」


「何千年来の仲だと思ってるんだ。そなたらしくない、おぼつかない魔力操作を感じただけで、何かあったことくらいすぐに分かるさ」


 足腰の力が抜けて、その場にへたり込んでしまう。

 フェッテン様が一緒にしゃがみ込み、背中をトントンしてくれる。


「話してくれるか? ゆっくりでいいから」


「わ、わた、わだじ、フェッデンざまをこ、この手で殺じがげでじばっでぇええ!! う、うわぁぁぁあああああああああああああん!!」



    ◇  ◆  ◇  ◆



 話が長くなりそうということで、【1日が10000年にテンサウザンドなる部屋・ルーム】化されてる魔の森別荘に行った。

 フェッテン様の個人部屋で、ベッドに座るフェッテン様の膝の上に座り、後ろから抱きしめてもらう。


「全力アリスによるアフレガルド王国侵攻、か……ムリゲークソゲー過ぎるだろう、それ!」


「あ、あははは……」


「ジークフリートたちが善戦してアリスの魔力を減らしておかなければ、私もやられていた可能性が高いな……そなたとの再戦に備えて、しばらくここで鍛え直しておくよ。というかそなたも、魔法防御力である【精神力】を上げた方が良いな」


「ですよね」


「となれば『善は急げ』だ! さっそく『チーム・アリス【精神力】レベリング』を結成して、数十年くらいレベリングするぞ!」


「はい!」



    ◇  ◆  ◇  ◆



 ってことで、チーム・アリス――陛下、フェッテン様、宰相様、パパンとママンとディータとバルトルトさんと3バカトリオにパーティーメンバーとアラクネさん、精鋭従士253名――を魔の森別荘に呼びよせ、新顔――魔族で私の従魔となった面々――との顔合わせ。


「こちら四天王2番手で元ロンダキルア辺境伯を寝返らせてた【間諜の女スピオーネ】のベルゼネ・ド・ラ・ベルゼビュートさん」


 居住区裏手のグラウンドで――人数が多いからね――テーブルと椅子を適当に【土魔法】で作り、お茶・コーヒーとお菓子を出している。ちょっとでも空気を柔らかくしたいので。


「「「「「…………」」」」」


 それでも、チーム・アリスからのベルゼネさんへの視線は冷たい。というか、従士さんの一部には恐怖も混じってる。


「……ま、マスター、なんて紹介の仕方をしてくれるのさ」


 ちょこっとだけ仲良くなって口調が砕けてるベルゼネさんから泣きの一言。


「だって事実でしょうに。まぁでも皆さん、ベルゼネさんは私の従魔になるまではずっと魔王の従魔だったから、魔王のために必死に働いてたのは当然のことなんです。人の従魔になるってのはそれはもう本当に、主人に心酔しちゃうんですよ。この私がここにいる面々を皆殺しにしちゃうくらいに」


「ちょっと待て!」


 陛下からのストップが入った。


「聞いておらんぞそんな話!? 未来で何があったのじゃ!?」


「ええと……その、皆さん、心して聞いてくださいね?」


「「「「「……ごくり」」」」」


「今日この後、ムリヤリ魔王に謁見する流れになります。前回、そこで魔王に【従魔テイム】されました」


「アリス、そなたが【従魔テイム】されたのか!? 魔力が10億あって、【闇魔法】レベル11のそなたが!?」


「はい……恐らく魔法防御力――ステータスの【精神力】――が不足していたものと思われます。皆さんをここにお呼びしたのは、今から防御する私へ全力で攻撃魔法を撃ってもらって、私の【精神力】を養殖するためです」


「それで……み、皆殺しとはいったい!?」


「はい……【従魔テイム】され、魔王に魅了されてしまった私へ、魔王が『人族の殲滅』を命じまして。しかもロンダキルア領城塞都市から時計回りで王国一周という条件付きで。

 で、速攻で城塞都市の砦に行った私がお、お、お父様やお母様やノティアさんやリスちゃん、従士の皆さんや軍人の皆さんをこ、殺してしまって……その後、街や村々を焼き滅ぼしながら王城へ向かいまして。

 陛下も殺してしまいました。で、連戦続きでだいぶ消耗していた私をフェッテン様が追い込み、最後に私の正気を取り戻して下さったんです」


「愛の力だ」


 私の隣に座っていたフェッテン様が肩を抱いてくる。


「~~~~~~~~~~~ッ!!」


 思わず真っ赤になってしまい、陽気な3バカトリオが『ひゅ~ひゅ~っ!』と囃し立ててくる。まぁ、従士さんの一部からは私に対する恐怖の眼差しを向けられていたので、場を和ませてくれるのはとてもありがたい。


「で、一瞬だけ正気に戻った私が【闘気】やら【物理防護結界】やらを解いた瞬間に、フェッテン様が私の脳みそをサクッと真っ二つにして下さいまして。何とかかんとか自動【ロード】ができたという話です」


「い、一歩間違えれば王国滅亡ではないか!!」


 陛下の悲鳴。


「ほ、本当に申し訳ございません……」


「い、いや、悪かった。そなたを責めるつもりはない」


 逆に陛下が頭を下げて下さる。


「そう言って頂けると……ですが、私の脇が甘いばかりに人族滅亡の危機にさらしてしまったことは事実です。とはいえ魔王国にいる以上、魔王からの【従魔テイム】を逃れるのは難しそうです――すでに魔王と四天王筆頭から疑われていますので。

 ここで魔王国から手を引くというのもまた悪手。ここまで根を張ったのが無駄になってしまいますし、魔王城無血開城の道を諦めきれません。

 ワガママを言って申し訳ございませんが、まずは私の【精神力】を最大限伸ばし、魔王からの【従魔テイム】に抗うことができないか――もっと言えば、逆に魔王を従魔化させることができないか。それを何回か検証させて頂きたく存じます。

 予防線として、謁見の直前に魔力を限りなくゼロにまで消耗させておきます。そうすれば、最悪私が再び魔王の従魔となっても、前回よりは被害を抑えつつ私を殺して頂けるかと存じます。

従魔テイム】されたての私はなんというか非常に直情的かつ脳みそ筋肉で、どこかに【ロード】して魔力を回復させてから人族に挑もうとか、そういうことを考える余裕はなさそうですので。恐らく魔王に『今すぐ人族を殲滅せよ』と命じられたからだと思われますが」


「ふむ……あい分かった。そなたの思うままやるが良い。儂らはそなたを最大限サポートするだけじゃ」


「ありがとうございます、本当に!」


 テーブルに頭をこすりつける。感謝してもしきれない。


「陛下、発言をお許し頂けますか?」


 とここでパパンが言った。


「よいよい」


「ははっ! ――アリス」


「は、はい、お父様」


 とここでパパン、にやりと笑い、


「父さんは、強かったか?」


「え? は、はい! それはもう!!」


 本心から答えた。


「だって動きが速すぎて【首狩りアイテムボックス】がヒットしないんですよ!? こちとら【思考加速】1000倍で【闘気】全開、【未来視】で1秒先を見てるにも関わらず!! それで三日三晩戦って、ようやく不意を突いてこ……倒せたんですよ。たぶんその間に、王城もだいぶ守りを固めたんでしょうね。

 お父様がいてくださらなければ、本当に人族殲滅しちゃってたかもしれません」


「当然だ。父さんは【王国の守護者】で、お前の父親なんだからな、アリス!」


「はいっ!」






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追記回数:26,044回  通算年数:2,999年  レベル:5,100


次回、魔法防御力の養殖を開始するも、前途多難で!?

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