115(2,998歳)「アリソン・コンサルティング社爆誕!!」
「ITコンサル『アリソン・コンサルティング』開業です!!」
次の日、ついにITコンサル業開始!
店舗の正面から見て右側、3店舗の中で最も細く狭い店舗。応接室っぽくテーブルとソファー1セットと書類棚があるだけだ。だって同時に何人も相手できる商売ではないもの。
会社の名前は3大戦略コンサルのひとつ、『ボス○ン・コンサルティング・グループ』リスペクトで付けた。
ITコンサルなら『アクセ○チュア』とか『IB○ビジネスコンサルティングサービス』なんじゃないかって?
まぁ、語感だよ語感。語感は大事。古事記にもそう書かれている。
そのうち会社を拡大させて、『アリソン・コンサルティング・グループ』を名乗ってやろう。
あと何でそんなにコンサル社の名前を知ってるのかって?
そりゃ、就活で業界研究してたら自然と目に入ってくるもの。戦略コンサルも当然IT化案件には絡んでくるし。
で、肝心のお客さんはといえば、
「……誰も来ませんな」
私の補佐として、そばに控えているピエールさんからの一言。
「……ですね」
大盛況な宝石店とTVゲーム屋と違い、こちらは誰ひとりとして客が入ってこない。
「やはり、宣伝――というか説明が足りないのでは? かく言う私も、実際にこの目で『エク○ル』やら『グラフ化』やら書類の『コピペ』やらを見せて頂くまで、『ITコンサル』良さが分かりませんでしたし」
「うーん……じゃピエールさん、ちょっと宣伝に行ってきますので、お留守番お願いします。もしお客様が来たら、このブルーバードちゃん――私の従魔――に声をかけてください」
「ははっ」
飛び込み営業とかやったことなくて超不安だけど、ま、勇者の職務と思ってがんばろう。
◇ ◆ ◇ ◆
「あら、商人ギルマスさん」
お金持ち――領地経営してるお貴族さんとか、
「これはアリソン様! 早速の大繁盛とは、いやはや恐れ入ります」
「あはは、迅速に手続してくださったギルマスさんのおかげですよ。ところで今、ちょっといいですか?」
「ええ。ご覧の通り順番待ちですので。こちらとしても、『ピコピコ』のような真新しい発明品を創造できるアリソン様とお喋りの機会が得られるなんて、嬉しい限りです」
「そう、その『ピコピコ』なんですけどね、実は遊戯専用の道具じゃないんですよ。【アイテムボックス】!」
取り出したのは汎用のノートPC。キーボードはもちろん魔王国語だよ。
ノートPCを【テレキネシス】で目の前に浮かせ、雷魔法を【
そりゃあウチのテンサイ・ディータだもの。GUIコンピュータなんて作れて当たり前!
タッチパッドで書類作成アプリのアイコンをダブルクリックすると、書類作成アプリが立ち上がる。
ちなみにタッチパネル型タブレットPCもすでに開発済なんだけど、私はタッチパッド(というよりマウス)&キーボード派なので。
いずれはディータに、何十個もボタンが付いたマクロ仕込み放題のお化けマウスをおねだりするとしよう。○ジクール社のゲーミングマウスみたいなやつ!
「アリソン様、それは……?」
「これはですね、書類を作る機能――アプリです」
「あぷり?」
「こぉんな感じで」
バチバチカタカタバチバチカタカタッターン!!
前々世譲りの超高速タイピングでなんちゃって契約書を作って見せると、
「な、ななな……」
商人ギルマスさんが目の色を変えて画面を覗き込んでくる!
「さらには……」
作った契約書を保存し、それを別ファイルに別名保存してから、ちょちょいと文言を改定する。
「こんな風に、オリジナルの書類の一部だけを改訂することで、似たような書類をあっという間に量産できます。そして――【アイテムボックス】!」
ディータ謹製のインクジェットプリンタとUSBケーブルを取り出し、パソコンとつないで印刷!!
キュイーン……ぱさっ
「――ッ!?」
出てきた書類に、商人ギルマスさんは絶句。
あ、ちなみに、魔王国では『紙』がフツーに大量生産されている。
「お仕事、楽になると思いません?」
「――ッ!!」
商人ギルマスさん、言葉にならないままガクガクとうなずく。
「続きまして――」
「ま、まだあるのですか!?」
「こちら、プレゼンテーション資料作成アプリ」
みんな大好き(?)パワ○ポイント。
今度はすでに作成済の、『書類作成アプリがあれば、あなたの業務がこんなにラクに!』的なスライドをお見せする。アニメーション付きで。
「ふぉぉぉぉおおおおおおお!? なんと分かりやすく、心に訴えかけてくる資料なのでしょう!」
「あはは……」
まぁ、実のところ作り手によるんだけどね……。
1スライドにギッチギチに文字を詰め込んだお役所のパワポとか笑えないもの。あと逆に、オシャレさばかり追求して内容スッカスカのスライドも。
かく言う私も、パワポ資料作りはあんま得意じゃないなぁ……。
ついでに言えばワ○ドも苦手。
エク○ルで設計書類作っちゃって、『ワ○ドを使え! 後から文章を
まぁ、お役所みたいにエクセルでマス目作って1セル1文字入力するようなアホはしないけどさ。
「そしてこちら、表計算アプリです!」
真打登場、エク○ルちゃん!!
Acc○ssはって? あれはさすがに、異世界にゃ早すぎるよ……。
「5月1日714.52ルキ、
5月2日752.61ルキ、
5月3日814.62ルキ……アリス様、これは?」
「これはとある居酒屋の、キンッキンに冷えた蒸留酒の日別売上高です」
ホントは王国のトニさん監修居酒屋の数字を魔王国の通貨単位に変換したものだけど。
「そして、この表を選択してこのボタンをクリックすると、ほら!」
日別売上高の棒グラフが生成される!
「おぉぉぉおおおお!?」
あはは、いい反応。
「さらにですね、ここにその日夕方の気温を入れるわけです」
言いつつ次のシート、日別蒸留酒売上高の隣に気温が入った表を見せる。
「ふむ……?」
「これを表にすると!」
「……お、おおお? 何やら意味ありげな点がたくさん打たれておりますが」
「これは散布図と言いまして、この点ひとつひとつが何月何日の売上高と気温を表しているんです。x軸が気温、y軸が売上高ですね。そして、この点たちをよく見てみると……」
「そ、相関関係があるような……!?」
「そう! これこそ『回帰分析』! 冷たい蒸留酒と気温は相関関係にあるのです!」
「ほ、ほほぅ!」
「ビッグデータからこういう関係性を見出し、商売に活かすことを、『データマーケティング』といいます!」
「でーたまーけてぃんぐ!?」
「面白そうじゃありませんか? 何気ない数字の羅列から、新しい商機が見出せたりしそうじゃありませんか?」
「その通りですな!」
「とりま商人ギルドの書類仕事をこの『ノートPC』と『プリンタ』に置き換えてみませんか?」
「是非に!!」
――ヨシ!(久しぶりの
「詳しい話は、是非ここの隣の隣の『アリソン・コンサルティング』社でしましょう」
「いいですな!」
宝石のことも忘れ、ノコノコとついてくる商人ギルマスさん。
ふっふっふっ! 一度導入したら二度と抜けられない、IT化の沼へようこそ……。
*************************************************************
追記回数:26,042回 通算年数:2,998年 レベル:5,100
次回、アリスと(主に)ディータが、異世界ネットワーク開発に挑みます!
アリス「ゆうしゃは『アプセトネデブ』をとなえた!」
ディータ「何ですそれ?」
アリス「基本情報技術者かITパスポート持ってる人なら分かるはず!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます