85(1,791歳)「異世界プログラミング事情」
「ドキドキワクワク……ど、どんなふうに動かすのかな? ふぉぉおおお! 懐かしのコンソール画面!」
真っ黒な画面の左上で、カーソルがゆっくりと点滅している。興奮する。めちゃくちゃ興奮する。
「言語は何!?」
「とりま動かして見せましょうか」
ディータがポキポキと指を鳴らし、
『01010100101010100101101001000110100101000110101001010100101010100100100100101000101010010010010101001……』
打ち込み始める!
「なっ!? えぇっ!? マっ!?」
驚きすぎて言葉にならない!
『……010100101001001010』
ディータが打ち終わり、
「ぽちっとな」
Enterキーを押すと、
『Hello World』
コンソールに表示された。
「き、ききき機械語ぉぉぉぉぉおおおおおおおえええあああ!?」
「そりゃ、これを設計したのは僕ですので」
「アセンブリ言語ですらなく!?」
「あそうそう、その『あせんぶり言語』について教えて頂きたいのです」
「え、え、えー……【リラクゼーション】! はぁはぁはぁ……アセンブリ言語っていうのは機械語の命令命令に1対1で対応した――」
「あ、そのへんは結構です。このパソコンを作る際に参考にした古代文明にも、機械語を人間が理解できる最小単位に変換する言語――コンストラクション言語がありましたので。実際の開発現場では、より上位の『A言語』や『A++』『A#』、『Coffee』等が主に使われていたそうですが」
あはは、きっとそのCoffe言語はきっと、オブジェクト指向でマルチプラットフォームだな。
「……ん? じゃあそのコンストラクション言語を使えば良いのでは? 私も教養としてはアセンブリ言語知ってても、それ使って開発なんてやったことないし」
「――あっ!」
「え?」
「た、確かに……」
「マジかよ……ディータって天才なのかアホなのかどっちなのよ」
「言葉もないですね……【リラクゼーション】」
「あはは動揺してら。あ、でもそのコンストラクションって言語の名前は、広める際にはアセンブリ言語って名前にしてね」
「なぜです?」
「オブジェクト指向の
「なるほど。確かにその古代文明でも、右も左も分からない入門者がよく混同してたって記載がありましたよ」
「あはは」
「それでお姉様」
お姉様呼びのディータは可愛いなぁ。本人が気づいてないところがまた可愛い。
「お姉様が欲しい言語について教えてください」
「そぉだねぇ。HT○LとC○S/SA○S、Jav○ScriptとJav○かな、とりあえずは。3Dゲームとか作り出したら○#も欲しくなるかも? いや開発プラットフォームを1から創るんだから、言語はJav○にすればいいのか。あぁあとディレクトリやファイルを作るためのコマンド類はLin○xのがいいなぁ」
「1つずつ教えてもらえます?」
「うん。HT○Lは正確にはプログラミング言語じゃなくて、マークアップ言語って言ってね――」
「いえいえその辺は類似言語が古代文明にもありますから飛ばしてください」
「ん? じゃあどうすればいい?」
「参考書とか読んだ記憶があるでしょう? 【おもいだす】と【時空魔法】使ってウィンドウ表示できません?」
「あぁなるほど。おりゃっ」
目の前にウィンドウ表示。
「失礼します」
言ってディータは画面の左上から右下へスッと視線を動かし、
「次のページをお願いします」
「はっ!? もう読んだの!? え覚えれるの!? もしかしてアンタも【おもいだす】持ってるの!?」
「いやぁ二千年過ぎた辺りから、覚えるつもりで一度目にしたものは、全部覚えられるようになりまして。というかそのくらいできないと世界中の全時代の法律なんて覚えきれませんよ」
「ふぉ、フォトリーディング……リアルチート持ちやんけ! えーと……ヨシ! ディータが自分でページを送れるようにしたよ」
するとディータが、スッ、スッ、スッ……と1ページ1秒のペースで読み進めていく。こ、怖い。なんだこの弟。
◇ ◆ ◇ ◆
「ん? Jav○ScriptとJav○は全然関係ない言語なんですか?」
「そだよ」
「え? は? なんでです?」
「先に人気言語のJav○があって、Jav○Scriptを作った人がJav○にあやかりたくて似た名前にしたの」
「なんてややこしい……」
「だから地球でも、プログラミングを良く知らない人が『Jav○ScriptはJav○のスクリプト言語版だ』とか勘違いしてたよ」
「そりゃするでしょう」
「あはは。じゃあこの世界に広めるときは単純に『Script』にしよっか」
「それだとスクリプト言語っていう概念とかぶりません?」
「じゃあ
「なんか
「\アリだー!/」
「!?」
「創るのディータじゃん。功績積みたいんでしょ?」
「お姉様の前々世の方が努力して創ったものをコピーして、それを己の功績と言うのは大層気が引けますが……」
「とはいえこのファンタジー世界にパソコンを蘇らせるってのは超ド級の功績だよ」
「確かに……ところでちょうどきゅうって何です?」
「あぁ戦艦にドレッドノート級ってのがあって――って、コレはまったく違う話なのであとにしよう。あーでも羅針盤発明したし陛下も大航海時代来させたがってたし、フリゲートやコルベットのお時間か?」
「すみませんお姉様、やはり話を戻しましょう」
「うん。じゃあスクリプトの方は
「Jav○は?」
「『Lion』で」
「由来は?」
「そもそもJav○ってのが、コーヒー大好きな開発者集団が独自言語開発に燃えつつカフェでコーヒー飲んでて、それがジャワコーヒーだったからとかなんだとか。ジャワってのはコーヒー豆の名産地の1つね」
「ははぁ~それで、この王国には気候上コーヒー豆がないから、タンポポコーヒーでいこうと? で
「お、おぉぉぉ……正解です。コーヒー大好きなディータがコーヒー飲みながら作ったってことにしよう」
「別に僕はコーヒー好きでも何でもないんですが……まぁお酒以外の飲み物を流行らせるのは治安上良いことですし、承知しました」
◇ ◆ ◇ ◆
それからディータは、あっという間に数十冊の本を読み上げてしまい、『1分程してから戻ります』とのこと。
外部時間で1分というと、1年足らずでHT○LとC○S/SA○SとJav○ScriptとJav○創れるの!?
テンサイか! 今も『お姉様』呼びしてくれて甘々な感じだし。でもそろそろサトウキビ栽培したいなぁ……。
◇ ◆ ◇ ◆
果たして1分後、目の下にたっぷりの隈をこさえたディータが戻ってきた。
執務室の机にモニターがどんっと置かれ、
「どうぞ」
「おぉぉぉおおお……では早速『
「detaです。恥ずかしながら」
「『
「まぁまぁ、続けてください」
いつものようにおすまし顔のディータだけど、口元がもにゅもにゅしてる。思わず笑顔になるのを押し隠してるんだろうね。可愛い。
続いてエディタに打ち込んでいく。
class Test {
public static void main(String[] args){
System.out.println(“Hello World!”);
}
}
おぉぉ……ちゃんと単語の意味合いごとに自動で色が変わる!
そして試しに『sysout』って入れてEnterしたら『System.out.println』になった! Ecl○pseか!
で保存して、
「『
『Hello World!』
コンソールにひっそりと表示される文字列を見て、思わず涙があふれた。
「ディーダぁぁぁぁああああああ! ありがどうぅぅぅぅうううう!!」
実に千数百年ぶりの、プログラミングだった。
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追記回数:20,666回 通算年数:1,791年 レベル:2,200
Q:ディータが操るプログラミング言語とは?
A:機械語
アリス「それもはやプログラミング言語とは言わないじゃん!!」
アリス(※※※さん成分多めでめっちゃ早口)「ちなみに前々世の私はC系派ではなくJav○派でした。まぁ単に務めてた会社がスマホゲー主流だったというだけの話ですが。
ゲームというとUn○tyで○#が主流と思われがちですが、あのマイ○ラだってJav○なのです。意外と存在するJav○ゲー。まぁでもマイ○ラはマイク○ソフトに買収されて○#に移管されつつあるとかなんとか……地球ではあれからどうなったんでしょうね?
あとスマホといえばandr○idネイティブアプリはJav○ですよJav○。小鳥ン? そんな言語もありましたねってブルーバードか!
ところでもし異世界でプログラミング言語仕様やネットワーク規格なんかを自由に決められるとしたら……なんて考えるとワクワクしませんか? しませんか、そうですか……。
少なくともLANケーブルの、あの無駄に分厚い爪付き規格は当初からもっと薄くすべきでしょう。LANケーブルの差込口よりも薄いノートPCが、無理やりLANケーブルを挿入するために差込口を外付けみたくしてあるのを見たとき、私はそう思いましたよ。
さぁて次回は、ついに、ついに念願の、ゲ ー ム 無 双 !!」
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