62(1,234歳)「レベル2000超え!!!!」

 神父様へは、先ほどお祈りした時に女神様からのご神託を受け、私が【勇者】であることと、魔王復活の時期を告げられたと話した。

 まぁ嘘なんだけど……5年前に陛下と打ち合わせた内容の通りだ。


 神父様は王城へ使いを出しつつ、私の就職&転職に付き合ってくださる模様。


「あなたがなりたいのは、どの職業でしょうか?」


 お布施さえ払えば、転職はし放題。全職業を試すつもりだ。


「【リラクゼーション】【リラクゼーション】【リラクゼーション】!

 心臓に【パーフェクト・ヒール】を【付与エンチャント】!

 ではまず、【戦士】からお願いします!」


「アリス・フォン・ロンダキルアよ、【戦士】の気持ちになって祈りなさい。おおっ、全知全能神ゼニスよ、アリス・フォン・ロンダキルアが新たな職に就くことを何卒お許しください!」


 ぱぁっと私の体が輝き、


「――――!!」


 キタキタキタキタ猛烈な吐き気!


「うっぷ! ……はぁはぁ、よし、耐えた」


 レベル700までいって伸び悩んでたのが一気に730までアップ! すごいね! どうもレベル101、201という段階で必要経験値が爆上がりしてるらしく、ここんところ【1日が100年になるワンハンドレット・部屋ルーム】内でどれだけ狩っても700の壁が破れなかったっていうのに。


「どれだけ上がったの?」


 後ろから聞いてくるノティアさんに、


「一気に30。それも700の壁をぶちやぶってですよ」


「さすがはお姉様!」


 リスちゃんはいつも通りの『さすおね』モード。

 ホーリィさんも、満足そうに頷いている。


 ちなみに神父さんはこちらから話しかけるまでは耳栓でがっちり耳を塞いでくれている。

 どの職でどのくらいレベルが上がったとかは超絶プライベート情報なので、配慮してくれているというわけ。


「じゃあ次は【武闘家】でお願いします」


「アリス・フォン・ロンダキルアよ、【武闘家】の気持ちになって祈りなさい。おおっ、全知全能神ゼニスよ、アリス・フォン・ロンダキルアが新たな職に就くことを何卒お許しください!」


「うぅぅぅっぷっぷっぷ【リラクゼーション】!」


 ……はぁはぁはぁ。


「どうさね?」


「ホーリィさん……これも20上がりましたよ」


「手ほどきした甲斐があったってもんさね」


 そう、実はホーリィさん、聖女でありながらも無手での戦いを得意とする修行僧モンクさんなのだ! 【霊手】をまとわせた手でゴーストやレイスの首をねじ切るお姿は聖女というより怪物だけどね。

1日が100年になるワンハンドレット・部屋ルーム】内では神級【光魔法】を教えて頂くかたわら、【体術】スキルも伸ばさせて頂いた。


「では神父様、次は【狩人】で」


「アリス・フォン・ロンダキルアよ、【狩人】の気持ちになって祈りなさい――」



    ◇  ◆  ◇  ◆



「おぇぇぇぇ……はぁはぁ」


 桶に突っ込んだ顔を出す。口の中を【ウォーターボール】ですすぎ、桶の中へぺっぺっ。汚物は【アイテムボックス】へ収納。


 あ、最初から【アイテムボックス】内に吐けば良かった!

 もう千数百年間ずっとそうだけど、私の【アイテムボックス】内のカオスっぷりよ……。


「……き、キツそうっすね……そんなに上がったんですか?」


「リスちゃん……なんか100近く上がったよ」


「「「あはははは!」」」


 爆笑の一同。くそぅ、人が苦しんでいるというのに……。


「そりゃアンタ、あんだけ狩ればねぇ」


「それにしてもアリスちゃん、弓系スキルも持たずにそのレベルは上がりすぎでしょ!」


「さすがはお姉様!」


「……つ、次は【従魔師】でお願いします。」


「アリス・フォン・ロンダキルアよ――」



    ◇  ◆  ◇  ◆



「ふ~ぅ、ふ~ぅ、ふぅ……」


「これまた苦しそうだねぇ……どんだけ上がったのさね?」


「60……」


「ま、あれだけの数を従えてりゃねぇ。従魔、何体になったんだっけ?」


「2,312体です」


「あはは……」


 引きつり笑いするノティアさんと、


「さすがはお姉様!」


 思考停止のリスちゃん。


「うぅぅ……次は【踊り子】でお願いします。」


「アリス・フォン・ロンダキルアよ――」



    ◇  ◆  ◇  ◆



 うん。知ってたけどレベルは1つも上がらなかったよ。


「そりゃアリスちゃん、踊り子らしいことなんてしてないじゃない……あ、たまに作物に【グロウ】かけながら謎の舞をしてるわね」


 あぁノティアさん、あれはトト○ごっこと言って……。


「じゃあ次は【レンジャー】でお願いします」


 まぁドラ○エで言うところの初期職『盗賊』と同じような職。斥候とか森林管理とかをお仕事にする人だね。

 ちなみにリアル盗賊に身を落とした人は、職業欄が『盗賊』になるのだとか。


「アリス・フォン・ロンダキルアよ――」



    ◇  ◆  ◇  ◆



「あぁ~……【リラクゼーション】」


「上がったようだね……大丈夫かい?」


「はいぃ……20ほど」


「まだそんなに上がるの!? ヤバすぎでしょ……」


「野宿経験、長いっすからねぇ……」


「ふぅ……じゃ【商人】で」


「アリス・フォン・ロンダキルアよ――」



    ◇  ◆  ◇  ◆



「おぇぇ……」


「大丈夫アリスちゃん……? ってまた20も!? ま、そりゃあんだけ奇妙な服やら遊戯具やら売り歩いてたらねぇ!」


「勇者のすることかね、まったく……」


「さすおね――」


「次、【貴族家令嬢】」


「アリス・フォン・ロンダキルアよ――」



    ◇  ◆  ◇  ◆



 すーん……


「「「ま、まさか……」」」


「……はい。上がりませんでした」


「ぎゃははっ、1つも上がらないとか、ひどすぎ!」


「ちょっ、ノティアさん何も笑うこと――」


「くっくっくっ……アタイでも1は上がる自信があるさね」


「お、お姉様……さすがにもう少し、お淑やかさを覚えるべきというか、野性味を抑える努力を……」


「リスちゃんまで!? う、うぅぅ……つ、次、【遊び人】でお願いします!」


「アリス・フォン・ロンダキルアよ――」



    ◇  ◆  ◇  ◆



「ぶふぉっ、ひぃっひぃっ……貴族家令嬢で上がらないのに、遊び人で1上がるとか!」


「ちょっ、ノティアさん、そこまで笑うことないでしょ!? た、たまたま経験値が溜まってたんですよ! たまたまです!」


 ここでホーリィさんがこっそりと、


「まぁ……も遊び人で上がってたからねぇ」


 元日本人の業の深さよ……。


「次、【農民】」


「アリス・フォン・ロンダキルアよ――」



    ◇  ◆  ◇  ◆



「おえぇぇええええ……おえぇぇええええ……」


「30!? 上がりすぎでしょレベル! どんだけ農業やってんのよ!」


 楽しそうなノティアさん。


「あ、あははは……」


 千数百年くらいかなぁ?

 って、その内数百年は一緒に農業したでしょうに。


「次は【僧侶】。魔法職だし、これが結構怖い……【リラクゼーション】【リラクゼーション】【リラクゼーション】! 心臓に【パーフェクト・ヒール】を【付与エンチャント】!

 ではお願いします!」


「アリス・フォン・ロンダキルアよ――」



    ◇  ◆  ◇  ◆



「ぶぼっ」


 吹き出したゲロが神父さんにかかりそうになり、慌てて【アイテムボックス】へ収納!


「がらがらがら……ぺっぺっぺ。し、失礼しました……」


「い、いえ……」


 ビビる神父さん。


「……で、どれだけ上がったの?」


 恐る恐るなノティアさんへ、


「……150」


「ってこたぁまさか……」


 ……その通りですよ、ホーリィさん。


 ついにレベルが、1000を超えた。どころか一気に1,134になった!!

 4歳で初めてオークを退治したころから思うと、隔世の感だね。

 まぁ、時代が代わるくらいの期間、修行してたんだけど。


「次は本命、【魔法使い】。の前に【リラクゼーション】【リラクゼーション】【リラクゼーション】【リラクゼーション】【リラクゼーション】! 心臓に【パーフェクト・ヒール】を【付与エンチャント】!

 よし、お願いします!」


「アリス・フォン・ロンダキルアよ、【魔法使い】の気持ちになって祈りなさい。おおっ、全知全能神ゼニスよ、アリス・フォン・ロンダキルアが新たな職に就くことを何卒お許しください!」


「ぅぐぼげ※※※※※※※※※※※!?」



    ◇  ◆  ◇  ◆



「――クゼーション】! 【パーフェクト・ヒール】! 【リラクゼーション】! 【パーフェクト・ヒール】! あっ! 目が覚めたかい!?」


 ……このごつい太ももの感覚は、ホーリィさん?


「ぅ……ぁ……?」


「大丈夫だ、大丈夫。ほら、ゆっくり体を起こすからね」


 ホーリィさんの、いつになく優しい声。

 私、どうなった?

 視界がかすむ。


「ほら、水だ。ゆっくり飲みな」


 言いつつコップ? を口に付けてくれるホーリィさん。


「は、はい……」


 飲みつつ自分へ【リラクゼーション】。

 よかった、視界も安定してきた。


「はぁ~……よかったよ。【魔法使い】になった瞬間、吐しゃ物をノドに詰まらせたまま気絶しちまったんだ」


 ひ、ひぇぇええええ……!!

 自分の胃を【探査】してみると、見事に空っぽだった。


「アリスちゃんから【探査】で人体把握からの【アイテムボックス】での異物除去方法を教えてもらっておいて良かったわよ」


「ありがとうございます、ノティアさん……。じゃあ、ステータス見ますね」


「ああ」


「「はい」」


「す、【ステータ・スオープン】! ――ひぃっ!?」



********************************************************

【名前】 アリス・フォン・ロンダキルア

【年齢】 10歳

【職業】 魔法使い Sランク冒険者

     アフレガル王国ロンダキルア辺境伯領・従士長の長女

【称号】 勇者 能天気 不屈 脱糞交渉人 期間限定時空神 亜神

     魔の森の悪夢 竜殺し 王国の守護者 聖剣に認められし者

     癒しの天使 恵みの天使 豊穣の女神 農耕神 井戸掘り名人

     一夜城 歩いたところが道になる人 衛生の賢者 鐙の賢者

     相場破壊神 常識破壊神 化粧業界破壊神 はちみつレモン

     コンクリートの母 魔法教本の母 栄養学の母 蒸留酒の母

     羅針盤の母 顕微鏡の母 ゴム長の母 銀行の母 経済学の母

     ファンデーションの母 ベアリングの母 ボードゲームの母

     カードゲームの母 絵本の母 ミニスカートの母

【契約】 全知全能神ゼニスの使徒 (従魔情報詳細表示)


【LV】 2,127 ←UP!

【HP】 179,802/179,816 ←UP!

【MP】 116,433,815/116,641,274 ←UP!


【力】   14,014 ←UP!

【魔法力】 12,571,816 ←UP!

【体力】  16,275 ←UP!

【精神力】 17,993 ←UP!

【素早さ】 18,817 ←UP!


【勇者固有スキル】

  無制限瞬間移動LV10 無制限アイテムボックスLV10

  極大落雷LV10 おもいだすLV6

  ふっかつのじゅもん・セーブLV1 ふっかつのじゅもん・ロードLV1


【戦闘系スキル】

  片手剣術LV9(+3) 槍術LV3 盾術LV4 体術LV6

  闘気LV10 威圧LV9 隠密LV7


【魔法系スキル】

  魔力感知LV10 魔力操作LV10

  土魔法LV9 水魔法LV8 火魔法LV8 風魔法LV8

  光魔法LV10 闇魔法LV8 時空魔法LV10

  鑑定LV8


【耐性系スキル】

  威圧耐性LV8 苦痛耐性LV10 精神耐性LV5

  睡眠耐性LV10 空腹耐性LV1 イケメン耐性LV4


【生活系スキル】

  アフレガル王国語LV5 算術LV7 礼儀作法LV2 交渉LV4

  整腸LV4 建築LV6 野外生活LV6 料理LV4 野外料理LV4

  食い溜めLV1 裁縫LV3

********************************************************



 赤ちゃん期MP養殖の副次効果、高すぎィ!!


「……で、どうなったのアリスちゃん?」


「――ほ、ほぼ2倍になりました」


「「「に、2倍!?」」」


「はぁ……【苦痛耐性】スキルと各種治癒魔法の事前がけがなければ、死んでましたよ、たぶん」


「「「あ、あははは……」」」


「じゃ最後に……【勇者】でお願いします。」


「アリス・フォン・ロンダキルアよ――」



    ◇  ◆  ◇  ◆



 結局、勇者ではレベルは上がらなかった。予想では剣も攻撃・治癒・補助・生活魔法も全部経験値判定されると思う。最初に勇者を選んでたら、マジで死んでたかもしれない……。


 事前にアポを取っていた陛下といつもの略式謁見室で打ち合わせし、明日、正式な『謁見の間』で【勇者】としての謁見&お披露目だ、と告げられた。


 フェッテン様は私のレベル2000超えにビビりつつ、『ちょっと教会行ってくる』とコンビニ感覚で教会へ行ってしまった。

 フェッテン様は職業を普段は『戦士』に設定しているから、他の職に就いてレベルが上がるか検証するつもりなんだろう。


 じたくに戻り、パパンとママンとディータにレベルのことでビビられつつ、その日はママン主催の衣装合わせに費やされた。

 といっても、勇者衣装なのでドレスではなく男装というか姫騎士? みたいな感じだけど。


 ……姫騎士、か。

 そういえば転生時、女神様との会話の中で、姫騎士がオークに弱そうとかなんとか茶化したっけ。


 作家志望くずれの孫請けゲームプログラマ喪女26歳。


 デスマーチ明けの昼下がり、道路に飛び出した子供をかばってトラックに轢かれ、異世界転生することになった。


 そうして女神様から第2の人生(正確には数千回死んでるけど……)を与えられて早千数百飛んで10年。


 ……いやぁ、レベリングしたなぁ。


 明日はついに、謁見。






*************************************************************

追記回数:4,649回  通算年数:1,234年  レベル:2,127


次回、陛下念願のアリス叙爵!

第1章最終回まで、あと 5 話。

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