元傭兵のスローライフ追及

悪ッ鬼ー

プロローグ 裏切り者

 深い森の中に、ジュペイド帝国少数精鋭部隊はいた。

 シンと静まる森の中ではヒソヒソと、司令官の任を受けたエルモット中佐の声だけが響いている。


「作戦はその資料に記載されています。僕達13人には、足止め程度で送り出されてきた第一陣の撃破です」


 周囲がどよめく。ほとんどの人間は驚きを隠せないでいた。

 すると、そこで一人反論をする体格の良い男が立ち上がる。そして、焦りを添えながら、語気を荒げて言う。


「は?たった13人で何が出来るってんだよっ!」


「僕も上にはそう言った。だけど考えて見てよ」


 エルモットの言葉に静まり返る。それは何かの策を考えているのだろうという期待故だった。


「足止め程度の第一陣。数だけなんだよ。ここに集まっている少数精鋭部隊、以降αアルファというけど、全国が恐れる程の強者を用意した。そのαが負ける可能性がどこにある?」


 それに「おぉ」と歓呼する。

 だが、そこで口を挟んだ男、名高い傭兵、ヒスタルク・ジェンタミンがいた。


「エルモット、それ以上ふざけたことを言うんじゃねぇ」


 その一言で緊張が走った。

 ヒスタルクは腰を掛け、ゆったりとした口調で続けた。


「俺達は戦闘の天才。失敗なんて無い―――――かもしれない。故に、油断が付き物だ。予想外の事態にも備えていろ。以上」


 そして、エルモットの「時間だ」という言葉で森は静かさを取り戻す。

 ザッザッ、という音を引き連れ情報通りの道を辿り、敵のいるはず場所へ向かって行った。

 先頭にはヒスタルクがいた。

 ヒスタルクの頬を鋭い何かが通り過ぎる。

 刹那、魔法の弾が無数に12人を襲った。全員木裏に瞬時に移動したが、負傷した者がほとんどだった。


(遠方ではエルモットが見張っているはずだが、何故連絡が無い)


 そこで、ヒスタルクは気付いた。


「敵は迷彩エンチャントを掛けている!エルモットは機能しない可能性あり!」


 だが、その声は誰一人も聞いていなかった。何故なら、皆死んでいたのだ。

 そんな事は知らずにヒスタルクは叫び続けている。

 焦りがヒスタルトを支配し、叫ぶという行動をとらせた。叫ぶのは敵にとって位置情報を教えているようなものだ。


「エルモット!連弾狙撃を奥にかませ!—————っ!あ、あぁ」


 何者かに額を貫かれ、額から血が流れ出る。意識は徐々に薄れていく。すると、意識を失う前に、耳にはめていた無線電話からエルモットの声がした。


「任務は成功した。約束は守ってもらいますよ」


 そして、ヒスタルクの意識は闇へと誘われ、絶命した。

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