21スラ ムシムシ コロコロ キンチョーすル! スライムさん

「ぴょこーん ぺたーん ぴったんぷー」


ピョコンタ ピョコンタ スチャッ オーシリフリフリ


「ぴょこーん ぺたーん ぴったんぷー」


ピョコンタ ピョコンタ スチャッ オーシリフリフリ


五歳女児がピョコンタピョコンタとリズミカルに跳ね回っております。

初っ端から四十八の感嘆技を披露するベルさん。

コーチモウムリデス、もしくは土管状ガエルと呼ばれるピョコンタ技である。

著作とか危険な香りがプーンプーンするので出来れば触れたくないのだ‼


春真っただ中、少し汗ばむくらいにポカポカ陽気な昼下がり。

ここは近所の草っ原。

流石にウォーリー邸から戻ってきとります。

エロメイドのエリーさんもどっかに旅立ち済。

あのメイド、性能がチート過ぎるんで他のキャラ喰っちゃうから居なくなって一安心。

使い勝手は非常にイイんだけどさぁ……


「きめっ! かっぺ~ あかねちゃ~ん」

「ピヨ~」

「お、おう……。ナイスポーズと言やぁいいのか?」


説明セリフを垂れ流してるところに危険度が微妙なセリフを垂れ流したベルさん。

こう、古すぎてスライムさんすら対処に困るのは気にしない。


ベルさん、その辺で拾った戦国刺突小枝を両手に持ってバッテンを作っとります。

これがキメポーズの様子。

頭にひっついたぴよこがヤッツケで合いの手入れております。

ぴよこ、ベリーで紫色に染まっとったのが尻尾のあたりに名残がありますがな。

天然素材シツコイな!

「ここがボンジリです」そんな自己主張をしまくってやがりますよ。


「ぼんじりー? すらいむさん、なにー?」


初めて聞く単語に興味をお持ちになられた幼児。気分でスルーされるから大人は事前に質問の回答を用意しても不発に終わると心得よ。幼児が言ったことにオーバーリアクションで楽し気に答えるのが正解だ。むつかしいこと言っちゃうのはNGザマスでガンスよ!フンガー


「ベルさんや……。ナチュラルに地の文拾ってきやがったな。あー、ぼんじりってな。鳥の尻尾付け根辺りの肉だ。串焼きするとうまいぞ」

「ピッヨ‼」

「すごい! ぴよこさんはおいしかった! ぼんじりー! ぼんじりー!」


可食用のマークが貼られるんじゃないかとヒヤヒヤするぴよこ。鳥類なのに器用に驚愕の顔を晒しております。


「ぴよこ、ムンクの叫びみてーになってんなぁ。オマエ、喰わないから心配すんな。むしろ毒あるから喰えんだろが」

「ピヨ~」


ホッと胸を撫でおろすぴよこ。既にリアクション芸人の域。


今日は、ベル、スライムさん、ぴよこの三人?一人と一ぴきと一体?単位がよくわからんな、でお送りしております。

お目付け役のローズはいませんです、ハイ。


ベルさん、遊びにいくときは何処へいくのか事前申告制です。よい子なので申告した場所以外はいかないのです。

危なそうな不穏な空気を纏う場所が申告されるとローズがアサインされるのです。システマチックな仕組みが構築されてるゾ!


ちなみに遊びにいく先は以下のカテゴリーから選択されるのですよ。


・あきち(草原)

・もり(ローズ引率案件)

・かわ(遠い/ローズ引率案件)

・おやま(遠い/ローズ引率案件)

・おうま(馬牧場/牧場主のオッサンが引率)

・ぎゅうぎゅう(牛牧場/牧場主のオッサンが引率)

・むぎ(畑/その辺の農家が引率)

・おにわ(家の庭)

・はっぴー(黒犬/ペティウェルさんち)

・かめさん(ポツンとある巨石/ローズ引率案件)

・じゃっく(ジャックはコレクター)


意外と行動範囲が広い五歳児。

その五歳児を筆頭にした凸凹トリオ。

なんか説明入れてる間にヘンな遊び始めてました。


「どうよ、これがスライムさん戦車だ!」

「ピヨッ!」

「おー。なんかすごい! すらいむさんがのりものになった!」


O型便座みたいになったスライムさん。そこの窪みにぴよこがドッキング。

ズルーリズルリと這いまわっておりますがな。


「ぴよこ、主砲スタンバイ!」

「ピヨー!」


ぴよこが嵌まっちょる前側にナンかのタネみたいのがワサーとスライムさんから提供。

セッセと啄むぴよこ。みるみる頬っぺた膨らんでます。


「目標! その辺の石! 狙え! 撃て!」

「ヴィニョー!」


口にモノを入れたまま喋ってはいけません。タネがこぼれてます。

あと鳴き声が変になってる。


 プププププププ


 ズガガガガガガ


 ビシ ビシ ビシ グワシャン


石、砕けました。

威力オカシイ。

まぁ、ぴよこ音速でるし地面突撃して穴掘りするしな。不思議じゃない。ないよね?


「すごーい! ぴよこさん、なんかでた! ひゅーひゅー? ぽーぽー?」

「ヒューヒューポーポーじゃねぇよ! ぴよこマシンガンだ」

「まじんがー? まじんがー! いしがこまごまになった!」


ベルさん、それだとZなカンジになっちゃうんで非常に問題がでます。

その前もマニアックだけどヤヴァメなヤツです。

などとツッコミを入れてる間に。

おやおやー?ベルさんが戦国刺突小枝をもって粉々になった石を覗き込んでるぞ。

今回、説明挟んでる途中でナンかしてやがる。KYか?KYなのか?


 つんつん つんつん ぐるり


 つんつん つんつん ぐるり


「ぐるりんした!」

「いや、ベルさん? スライムさん戦車の出番短すぎやしねぇか? もうチョットこっちに注目してもいいんじゃね?ってホント、ナニしてんだ?」

「ピヨ~?」


ベルさん目の前に集中。見向きもせずにお返事する幼児あるあるを披露。


「だんごろし!」


 つんつん つんつん ぐるり


「んふー♪」

「オイオイ、随分楽しそうだな。あー、ダンゴムシか。」

「そう! だんごろし!」

「ピヨッ!」


 ツンツン パクリ ヴォオリ ヴォオリ


「あ~! ぴよこさん、だんごろしたべた~」


幼児シュンとなりました。

鳥類空気読まない。


だがしかし。

残ったダンゴムシをムシリと掴み、ビシリと腕を伸ばしてベルさん得意顔になりました。

残機はまだまだタクサンあるのですよ。

そして――

ぴよこの口へ押し付けたー!


「はい、どーぞ」

「ピヨ」


パクリ ヴォオリ ヴォオリ


「食わすんかよ!ってか、ぴよこ食うんかよ! 遠慮ねーな!」


 つんつん つんつん ぐるり


 つんつん つんつん ぐるり


「んふー♪ んふー♪」


 ツンツン パクリ ヴォオリ ヴォオリ


「ピヨー」


「おまえらハナシ聞かねえな」


オマエもな。「じゃかーしぃ」


「でんでんうしー!」


ベルさん、ポッケからカタツムリの抜け殻ハウスを取り出しました。

今日もイロイロ拾ってはポッケにポイッと格納しております。


ソテツの実もっさりワンセット

シッポがちぎれてカサカサに干からびたカミキリムシ

ビー玉

生首状態のソフビ人形キーホルダー

指にはめて大仏ごっこが出来る指サック


ポケット貸家の店子はいっぱいです。


 ヒョイ コロン ギュウ


 ヒョイ コロン ギュウギュウ


「んふー♪」

「お? なんだ、カタツムリにダンゴムシ詰め込んでんのか」

「ピヨ?」

「そう! だんごろしのおうち!」


ベルさんは丸まったダンゴムシをカタツムリの殻にポイポイ詰め込んでます。

ご丁寧に一ぴき詰めるたびに指でギュウっと奥に押し込んでスペースを確保。

このまま詰め込めばダンゴムシ格納でギネスを狙える。競技人口が少ない今がねらい目。


「だんごろしー♪ だんごろしー♪」

「おいおい、そんな指で押し込んだらブチャァァってなるぞ?」


 ヒョイ コロン ギュウギュウ ブチュリ シャク メショ


「あー! でんでんうしからだんごろしおちたー」

「カタツムリの殻が壊れてんじゃねーか。まぁ、指ツッ込んで押したらそうなるわな」

「ピヨ~…… ピヨッ⁉」


貨物輸送業で積載量を遥かに超える搭載作業を行っていた際に発生した事故の現場を見るかの如く。

ベルさんの指には。業務上過失致死の逃れられない証拠が纏わりついている。


「しるでた」


圧壊したダンゴムシがブチュリと潰れまくってますから。

体液駄々洩れですから。

カタツムリ入居口に突っ込んだ指が反対側の殻を見事に粉砕、ブチュリとなってピクピクしたダンゴムシが零れ落ちる局地的カオスな絵面。


「だんごろし、なかみでた。ぴよこさん、どーぞ」


失敗作は叩き割っちゃう系陶芸家のように、お気に召さない作品を処分業者へ委託した図。


「ピヨ。ピヨ~? ピッピヨ!」


 ツンツン パクリ ヴォオリ ガァアリ


ぴよこ、カタツムリの殻ごと貪っている姿がとってもシュール。

雑食系鳥類の面目躍如。


( ゚д゚)ピヨ?

(゜д゜)彡ズザッ


こっち見んな。


「おっと、ベルちょいと待った!」

「うゆー?」


幼児、ダンゴムシ汁がついた指先をスカートへ! <いまここ


「スカートで汁をナイナイすると叱られるぞ」

「それはたいへん!」


ぐーりぐりと。

土に指を突っ込んで汁気を拭うことにした五歳児。

ダンゴムシが巻き込まれてます。

自力脱出可能か判断が難しい地中深くに埋没。

実際は幼児パワァのグリグリなので、そんな深くない。ハナシ盛った。


「めめずいた」


引き抜いた指先にはミミズが摘ままれております。

ニョロニョロビックンビックンと活きが良いのは取れたての証拠。

食通は遠くの名物より近場の獲れ立てを選びます。


「こらこら。キレイにしてやっからミミズおいてオレの中に指突っ込め」

「は~い」


ミミズはナチュラルにポッケへ格納されております。


 グニュリ ズップシ モニュンモニュン


「くすぐったーい」

「終わったぞー。指抜いてくれや」


 ヌポン ジー クンカ クンカ


「きれいになった! くさくない!」


引っこ抜いた指がキレイになったのを驚きの目でアッチコッチの角度から眺めるベル。

初めて見るようなカンジを醸し出してるけど、アナタそれ二度目ですよ。

そして、おもむろに指を鼻にもっていきクンクンするベル。

スライムさんの洗浄力の前ではダンゴムシ汁がどんな臭いだったか確認出来ないレベルなのです。

抗菌処理済。


 ツンツン パクリ ヴォオリ ヴォオリ


 ツンツン パクリ ニュルリ チュルルン


「ピヨー♪」ガツガツ ガッツリ

「あーあ、ダンゴムシもミミズもみぃんな食べちまいやがった……」

「ぴよこさん、おなかいっぱいになったー?」

「ピヨ! ……ゲフッ」


粉々にされた石の下には生き物バンザイパラダイスだったのが、今は惨憺たるありさま。

生きてるモノが何一つ見いだせない死の大地に変貌を遂げた……シラミみたいなちっこいのがチョロリと這いまわってますがな。ゴマみたいのもウロチョロしてるよ!


「みてみて! すらいむさん!」


ベルさん、鼻の穴両方にダンゴムシ詰めてます。


「ふん!」


 ポポン


「あはははは! はなくそとんだー!」

「楽しそうだな、オイ。あんま奥詰めると出て来なくなるから気ぃつけろよ」

「はーい!」


 ツンツン パクリ ヴォオリ ヴォオリ


 ツンツン パクリ ヴォオリ ヴォオリ


「ぴよこ、そのダンゴムシも食うんかよ……。腹いっぱいだったんじゃねーのか?」

「ヴィヨー!」ヴォオリ ヴォオリ

「ぴよこさん、たべながらおはなしするといけないんだよー」

モッチャ モッチャ ゴックン「ピヨョ~」


ぴよこ、スライムさんに片羽を着いて反省ポーズ。

最近、おさるさんの反省ポーズって見なくなったよね。

死語、いやさ死芸か?


「よーし。お日さんも随分高くなったし、そろそろ帰んぞ」

「りょーかーい!」

「ピーヨー!」


お帰りはスライムさん戦車。

幼児とぴよこを乗せて侮れない速度で這い回るスライムさん。

ベルの戦国刺突小枝が旗印のようにタカダーカと。


 プププププププ


 ズガガガガガガ


帰り道、ぴよこがナンかのタネでマシンガンするのは仕様です。


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