MBAホルダーが異世界に転生したら知恵の勇者として大活躍

吉岡真実

第1話「誕生!知恵の勇者」

正弘まさひろ「今日も疲れた〜、家に帰るか〜」


自分でいうのもなんだがクソエリートサラリーマンの俺は今日も残業をこなし、家へと帰ろうと帰路に立った。


電車で座りながらスマホをいじっていた俺はふとした事を思い出した。


正弘まさひろ「そういえばこの前彼女と行ったシンガポールの写真、まだSNSでアップしてなかったな」


俺は自己承認欲求が強かった。それを満たす為に、東大に入り、ハーバード大学のMBA《経営学修士》を修了した。今ではアイドル級に可愛い彼女とも付き合っている。まあ可愛いだけしか取り柄の無い女だが、SNSで俺の横に写らせる時は結構役に立つ。


正弘まさひろ「おっ、早速イイネ来てるじゃん!100イイネは堅いかな?」


その時、彼女から1通のLINEメッセージが来た。


優子ゆうこ「今度の土曜日、渋谷に買い物行きたいな〜」


正弘「{買い物に行くのは良いけど、財布を出すのはいつも俺なんだよな〜}」


正弘まさひろ「わかった、じゃあ駅前のいつもの場所で待ってるよ《顔文字》」


そう返信すると俺は優子とデートの約束を決めた。


そして土曜日の昼、俺達は渋谷のファッションビルに来ていた。


優子「これ可愛くない?あ〜これも可愛いな〜、試着お願いします!」


店員にそういうと試着室に入って行った。

この後の質問で「どう?似合ってる?」ってる聞かれるパターンだ。


優子「お待たせ!どう?似合ってる?」 


正弘「{ほら来た、どうせ似合ってると言わないと不機嫌になる。なんて不自由に二択だ…}」


正弘「すごく似合ってるよ!」

俺は笑顔で答えた。


優子「やっぱこの色がいいよね!これにしよ!」


優子の買い物は無事終えて、俺達は近くにあったカフェに入った。


正弘「渋谷でデートなう…と…」

注文したデザートが来るやいなや、優子の写真を撮って、SNSに投稿した。


優子「ちょっと〜、正弘って私といるのにスマホ触り過ぎてなんだから!」


正弘「優子もいつも触ってるだろ?」


優子「私はいいの!!」


正弘「{どっかの国の将軍様並みの理不尽だ。まあ可愛いから許すか…}」


俺達はファッションビルを出てしばらく歩いた。


優子「この前はシンガポールに行ったし、今度はどこに行く〜?」


正弘「ああ、国内でもいいんじゃないかな?」


優子「え〜、なんか南の島のリゾートに行きたいな〜!」


正弘「そういえば最近リゾート地に行ってないな〜」


何気ない話をしていた俺たちの背後から不審な男が寄って来た。


不審者「リア充はぁぁぁ、嫌なんだよぉぉぉ〜」


急に大声を上げて走り出した男の手にはナイフが持たれていた。


そのナイフの矛先は優子だった。


正弘「くそっ!」


俺は無意識に優子をかばおうと、優子と不審者の間に割って入った。


──次の瞬間。声にならない激痛が走った。


俺は倒れ込んだ。


優子「きゃーーーーーー!!」


優子の悲鳴で大勢の人が振り向く。


不審者「お前らが、リア充だからだ!俺は悪くなーーーい!」


倒れた正弘から大量の血が流れる。


正弘「{俺は死ぬのか…}」


正弘は走馬灯を見ていた、小学校の先生、学生の頃の彼女、近所のおばさん、色んな人が頭をよぎった。


「ピーパーピーパーピーパー」


薄れ行く意識の中、パトカーや救急車のサイレンが聞こえたのが、この時の最後の記憶だった。


◆◆◆


家臣「勇者様お目覚め下さい!勇者様!!」


目を覚ますと正弘は城のようなところで目を覚ました。

辺りには中世ヨーロッパのような服装をした男達と王様っぽい人がいる。


家臣「王様!!転生の成功です!勇者様が目を覚ましました!」


正弘「{ここはどこだ…?何日俺は寝ていたんだ…}」


家臣「勇者様!ようこそ「ヒューマニア王国」!」


正弘「{…ヒューマニア王国??スペイン村的なテーマパークか?}」


王様「目覚めてすぐで申し訳ないが、聞きたいことがある」


今度は偉そうな人が正弘に話かけてきた。


正弘「{聞きたいことがあるのは、こっちだが…}」


正弘はとりあえず起き上がり、王様の方を向いた。


王様「そなたは何の勇者だ?…剣か?槍か?それとも今流行りの盾か?」


正弘は混乱したがとりあえず答える事にした。


正弘「僕は武器は何も使えません!それより今日は何日か知りたいんですが…?」


王様と家臣達は険しい表情をした。


家臣「貴方様は異世界から転生されてやってきました。こちらの事情で貴方様は魔王を倒すまで帰らせる訳には行きません…」


正弘「{──コイツ…ガチなのか!?どっかのテーマパークのスタッフじゃないのか…?}」


正弘はパニックなったが、深呼吸をして冷静さを取り戻した。


正弘「…もし俺が勇者じゃなかったらどうなりますか?」


家臣「貴方様が勇者でなく、ただの人でしたら…」


家臣の表情が一変した。


家臣「──貴方様を処分するしかありません。」


正弘の心拍数が一気に跳ね上がった。


正弘「{…この表情と声のトーン、そして周りの雰囲気…、コイツら恐らくガチで俺を殺す気だっ!!}」


王様「もう一回だけ聞く、そなたは何の勇者だ?」


正弘はしばらく下を向いた後、王様の目を見てこういった。


正弘「ぼ、僕は…「知恵の勇者」ですっ!」


周りがざわつき始めた。


王様「ほう…「知恵の勇者」とは一体何ができるんだ?」


正弘は頭をフル回転させてこう答えた。


正弘「この国を強く、豊かにするすべを知っています!」


王様「なるほど…さすが勇者だ!来たばかりなのにこの国が隣国に比べて貧しく、弱い事を見抜いておる!」


王様は立ち上がった。


王様「そなた、名はなんと申す?」


正弘「前川正弘」


王様「正弘!そなたは今日から私の助言役として働いてもらう!」


正弘「わかりました。ありがとうございます{と、とりあえず、助かった〜…、ってか元いた世界の知識をここで活かせるのか?}」


正弘は胸を撫で下ろした。


王様「助言役には秘書が必要だな…、おいっ!バーティ!!今日から勇者様の秘書をしてくれ〜!」 


王様がそう言うと奥から白髪の若い女性が出てきた。

白の防具にピンクのミニスカートを履いている。


バーティ「バーティと申します!よろしくお願いします」


そう言うとバーティは正弘にお辞儀をした。


正弘は地球にはいないような美人に見惚みとれてしまった。


正弘「{透き通った肌、細いのに豊満なバスト…こんな子が隣にいたら仕事どころじゃねぇ…}」


正弘はふと我に帰り、バーティに挨拶した。


正弘「知恵の勇者の前川正弘です!よろしくお願いします!」


バーティは正弘に向かってニコッと微笑んだ。


王様「では、一旦私は国務に戻る。何か用がある時はバーティを通して伝える!」


そういうと王様は部屋を後にした。


正弘「{なんだかよくわからなねぇけど、楽しくなってきたぜ!魔王でもなんでも倒してやる!!そして意地でも元の世界に戻ってみせるっ!!}」

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