番外編SS 管理人さんは同級生


 注:このお話は衝動的に書きたくなった番外編です。本編とは基本的に関係ありません。


 ★★★


 「……ん? ここは……」


 ふと意識を冷ますと、なんだか見慣れない場所にいた。そこはさながら学校の教室のようで、黒板があって、机がきちんと並べられていた。はて、俺は一体……。


 「どうしたんですか? 泰くん」


 「……え?」


 困惑している中で、さらに困惑することが起きた。なんと俺の目の前に美来がやってきて、しかもいつもの「さん」呼びではなく「くん」呼びだ。


 「いや、な、なんか……いつもと違う気が……」


 「? 今日も泰くんと一緒に授業受けて、これから一緒にお昼ご飯を食べて……いつも通りですよ?」


 「一緒に授業を……あ!?」


 俺は大学生で、美来は高校生なんだから一緒に授業を受けることなんてないだろ……と思っていてが、今日の俺はなぜか制服を着ていた。も、もしかして美来の同級生になったのか俺?


 「今日の泰くん、ちょっと不思議ですね。でも、そういうところも……好きです」


 「あ、あはは……」


 いまだ状況は飲み込めていないが、美来がいつも通り俺のことを好きと言ってくれるので、俺たちの間柄は変わってなさそうだ。とりあえず、この場は話を合わせておこう。


 「これ、今日の分の泰くんのお弁当です」


 美来はカバンから俺の分だというお弁当を取り出して、渡してくれた。そして自身の席の椅子を持ってきて、一緒に食べようとする。普段はなかなか一緒にお昼は食べられないからなあ……新鮮だ。


 「す、すげえ! めちゃくちゃ美味しそう!」


 お弁当を開けると、そこには美来の料理の腕が光った品々がたくさんあった。こうやってお弁当を渡されることもないから、これもまた新鮮だ。


 「ふふっ。泰くんはいつもそうやって褒めてくれますね。私も作りがいがあります」


 「そりゃあ美来の料理はいつだって美味しいし」


 「! ……も、もう……泰くん。でも……そうやって褒めてくれるところも……大好きです」


 美来は頰を赤くしながら、可愛く照れている。ああ、やっぱ美来はいつでも可愛い。


 「それじゃあ……あーん」


 そして美来はお箸で唐揚げを掴んで、俺に食べさせてくれようとする。なんだか、こうやって教室でこれをするのはなかなか恥ずかしい気もするけど……きっと、ここの俺らはいつもそうしてるんだろう。


 「……うん。やっぱり美味しい!」


 「よかった! じゃ、じゃあ次は……」


 美来は物欲しそうに、こちらを見てくる。ああ、これはきっと俺がする番だってことだな。


 「……わかった。あーん」


 なので今度は俺が美来に食べさせてあげた。美来も美味しそうにモグモグとしながら……可愛い笑顔をこちらに向けてくれる。


 そんなことを交互にしながらダラダラ、ラブラブと一緒にお弁当を食べた。それでもお昼休みは終わらないので、さてどうしたものかと思ったら……。


 「……時間があるので、今日はここに座ってもいい……ですか?」


 美来がいつもの「特等席」に座りたそうにしている。ああ、なんだかんだ俺らは同級生になっても、することは一緒か。ま、それが俺ららしいな。


 「もちろん。ほら、おいで」


 「……失礼します」


 そして美来は椅子に座ってる俺に座ってきて、俺たちは密着状態になる。なんか、制服同士でするのは新鮮だから……ちょっと恥ずかしい。


 「えへへ……泰くん、あったかいです」


 「そりゃよかった」


 「……そ、それじゃあ……これも、してもいいですか?」


 美来は自身の唇に人差し指を当ててそういう。え、教室で流石にそれは……いや、抱きついてるこの状況も相当まずいのかもしれないけど……。


 でも、美来のしたそうな顔を見ると……俺も我慢できない。


 「いいよ。しよっか」


 「……じゃあ……」


 そして俺らは教室にも関わらずキスを……。


 「……はっ!」


 しそうになった、夢を見たようだ。目を覚ますといつも通り俺は布団の中にいた。……はあ、なんか変な夢を見たなあ。


 「……じ、実は今日……私も泰さんと同じ夢……見ました」


 そして朝食を一緒に食べている時にこのことを話すと、なんと美来も同じ夢を見ていたようだ。すげえ偶然だな。


 「夢の中でも相思相愛ってことか……。にしても、美来の「くん」呼び、新鮮だったよ」


 「……! じゃ、じゃあ……こ、これからそう呼んだ方がいいですか?」


 「いやいや。美来が呼びやすい呼び名でいいよ」


 「……じゃあ、泰さんで。これが一番しっくりくるんです」


 「へえ……。美来は夢でどんなところがよかった?」


 「……私は、泰さんの制服姿が……よかったです。……今度、着てください」


 「え!?」


 美来の思いがけない提案に思わずビックリしてしまう。もう大学生になった分際で今更制服を着るのはなあ……。でも、美来がすごくしてほしそうな顔してるし……。


 「……まあ、実家に帰ったら探してみるよ。レンタルとかもあるんだっけ?」


 「あるみたいです。……制服ディズニーとか……してみたいですね」


 「……わかる」


 結構憧れあるよな制服ディズニー。しかも俺ディズニー自体いったことないし。……よし。


 「……絶対しよっか」


 「……! や、約束ですよ!」


 というわけで、後先考えずに制服ディズニーをすることになったのだが……。まあ、それは別のお話。


  ――――――――――――

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