第153話 オハナの〖運〗 仕事する

「それで?糾弾したいのは解ったけど、具体的にはどうするの?」


その辺りの事はオハナも良く知らないのよね、だってクロードがメチャクチャウキウキしてるんだもの、嫌な予感しかしないよね。


クロードはオハナの質問に「ククク………」とか意味深な笑いをしつつ眼鏡をクイッと上げて、


「彼を勇者の下に送りつけてやりましょう」


送りつける?

それだとこの人が嘘吐いたら何も伝わらないんじゃない?

それどころか勇者に在る事無い事吹き込んで此方が完全な悪者にされそうなんだけど?


「その点については何も問題ありません。彼には此処と勇者の居る場所を繋いでくれる役割さえ果たしてもらえればそれで良いのですよ」


そう言うとクロードは何やらブツブツと呟くと、その手に二つの水晶玉が光と共に現れる。


「彼を勇者の所へ送りつけるのはオハナ様が集めさせていた転移石を使えば可能でしょう、おそらくその石の中に王城を登録した物が有る筈でしょうから。あとは何者かが王城内に転移してきた気配は王城を警備する者ならば誰もが知ることが出来ますので、その時に彼に持たせる対となったこの水晶を使って向こうに直接メッセージを送ります」

「そう上手く行くか?勇者に知られずにこの男が処分される可能性だってあるだろう?」


コテツさんがオハナも気になってた事を訊いてくれた。

何故だかクロードは勇者さんが確実にこの件に関わってくると確信してるみたいだけど、そう上手く事が運んでくれるとは思えないんだよね。


クロードは水を差されたにも拘らず笑顔で「ふぅ」と息を吐くと、


「オハナ様が関わっているのですよ?勇者が出てこない筈が無いじゃないですか」


善人ぶった笑顔が何か腹立つなぁ。

あとで3号と同じ目に遭わせてやろうか。


「「「確かに!!」」」


コテツさん、ワヲさん、カナきち、判断が早いよ!!?


「待って!!?そもそもこの件にオハナが関わってるって事をどうやって勇者さんに報せるつもりなの!?クロードが此処に来てることさえ知らないはずだよね!?」

「あの勇者ならばオハナ様がほんの少し力を貸してくだされば簡単に釣ることが出来ますよ」

「えぇぇぇ………」


何ソレすっごい嫌………。

何が悲しくてNPCである勇者さん(しかも敵)に認知されないといけないんだろう。



「誰が貴様らなんぞに手を貸すものか!!見ておれ!すぐにこんな蔓など聖属性の影響で緩んで――――――」

「2号、5号、〖ブレイク〗。殺すのはダメ」


気落ちしてる時に元気に騒がないでほしい、八つ当たりするよ?

軽快に装備を破壊していく音が響いて徐々に聖属性の影響も薄れてきた。

何故かコテツさんがその光景を見てワヲさんとカナきちに励まされてたけどどういう事かな?


「ぬあぁぁぁぁぁぁぁ!!!何故だ!!?何故貴様は聖属性の影響を受けぬのだ!!?魔物であれば多少なりとその影響を受け、弱体化するはずだというのに――――――」

「何を言ってるんだ?オハナ様がたかだか貴様ごときの聖属性の影響など受ける筈が無いだろう」


クロード、キミの方こそ真顔で何言ってるの?

オハナはただ単に〖聖属性耐性〗を持ってるだけなんだけど、まぁ馬鹿正直にオハナが持ってる耐性とか教えてあげる必要も無いので思わせぶりに微笑んでおこう。


装備『ぶつだーん』を全て破壊すると、蔓に伝わる抵抗が一気に無くなった。

見れば小太りだったおっさんが、体中から蒸気を出して今尚痩せ細っていく最中だった。


「これは………呪い装備によって強化されていた身体能力などが鎧を破壊された影響で反転したようですね。今やこの男には常人以下の力しか残されていないようです」

「は、はひぇ………」

「ついでに知能もゴッソリ持っていかれたみたいっスね」


男の目の前で手をフリフリするカナきち、男はそれに何も反応を示さずに意味の分からない言葉を吐いている。

装備者の身体能力を著しく増加させてくれるけど、装備を破壊されると廃人化一直線とかホント呪いの装備って感じだわ。


もう何も出来ないだろうけれど、一応って事で男を拘束する。

拘束するのに使うのは勿論あのカエルの舌。

ぶよぶよしててちょっとやそっと力を入れた程度じゃ千切れないから充分でしょ。


「あれってオハナちゃんなりの嫌がらせなんだろうか?」

「あの絶妙にぶよっとした感じ、不快なんスよね」

「多分天然だと思うわ」


嫌がらせ?何の話?


オハナが男を拘束する間、コテツさんとワヲさんが男に「転移」という言葉を教え、7号に集めた転移石を持ってきてもらった。

そしてその中から転移先が王城の物をクロードとカナきちに選別してもらって、準備は整った。


「あちらの様子はこの水晶越しで確認できます。王城の何処に転移するかはですが問題は無いでしょう」


男に持たせた水晶を通して見られるみたい。

男はゆっくりと転移石を掲げて「てんい」とそれだけ言うと姿が消えた。

クロードの持つ水晶を確認すると、


「勇者様の頭上から突然男が降って来たぞ!?」

「大丈夫ですか勇者様!?」

「おのれ何者だぁ!!!?」


男の懐に水晶を入れたためまだ真っ暗で映像は何も見えないが、慌てふためく様子が聞こえてくる。


…………あ、ヤベ。


「これ絶対オハナさんの運が仕事してるっスよね?」

「流石はオハナ様ですね。まさか勇者の頭上にピンポイントで転移させるとは………」


ま、まぁ結果オーライだよね。

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