第133話 新・3号ちゃん
進化を完了させ、虹色の光から解放された3号がゆっくりと目を開けた。
それから徐に自分の手足を確認した後、手で顔や髪に触れてその感触も確認していた。
一頻り確認し終えた3号は今度はピョンピョンとその場で跳ねた後ゆっくりと歩き出した、それは次第に早くなり走り出した3号は生まれて初めて『自分の足で移動する』という感覚を楽しんでいるように見えた。
「うふふ。良い笑顔ねぇ」
「嬉しくって仕方ねぇって顔だなぁ」
それを優しく見守るオハナたち………特にワヲさんとコテツさんは凄い和んでるのがわかる。
表情とかには出なくても、声色とか二人の雰囲気とか、そういうのでなんとなく理解できてしまうのはこの二人が良いご夫婦だからなのかな?
そんな風に考えてオハナもほっこり和んでいた処に――――――。
「お母さまっ♪」
腹部に感じた衝撃と共に聞こえてきた声、完全に不意を突かれてオハナはその場に倒れ込む。
「オハナさん!?大丈夫ですか!?」
「あぁ、はい。オハナは問題ないですけど、一体何が――――――」
何となく想像はついてるんだけど、まぁ一応確認の為に上体を起こすと………やっぱり。
「嗚呼………お母さまのにほひ………し・あ・わ・せぇ………♡」
オハナのお腹にがっちりと抱き着いた状態で顔をこすりつけ、ウリウリするのと同時にクンカクンカしているピンク髪の変た――――――じゃない、3号が居た。
………オハナダンジョンの皆で可愛いを結集した美幼女が全部台無しになっちゃうくらい、他の皆には見せられない顔になってるなぁ。
オハナはそんな事を考えつつ――――――。
えぇーっと移動はもう出来るようになったからテレポートは要らないよね。
ステータスは………可もなく不可もない感じ?説明文通り〖即死攻撃〗が無くなっちゃってるね~。
「オハナさん、あんなにも激しくウリウリクンカクンカされてるのに、ステータスとかいろいろ確認して、完全に3号ちゃんを見なかったことにしてるっスか!?」
「待ってカナきっちゃん。オハナさんは確認作業しながらも3号ちゃんの頭を撫でてあげてる!あれは新3号ちゃんに最早順応してるんです!」
「………早くないですか?」
そんな騒ぐような事?どんな見た目になっても3号は3号なんだもの、普段の3号の行動から考えればこれくらい普通でしょう?
それでも「お母さま」呼びにだけはびっくりしたけどね?
「ぐへへ………お母さまぁ♡」
そうして暫く気の済むようにさせていたら、何故かスカートの中にまで侵入してこようとしたのでさすがにそれは阻止。
蔓で拘束して無理矢理引き剝がすと、他の眷属たちから一発ずつゲンコツされていた。
これは言葉が通じなくてもわかる「調子に乗るな!」ってことだろうね。
まぁ他の眷属たちにまで怒られたら少しは反省するかな?
「ふふん。羨ましいでしょう?私が全ての眷属たちの中で、お母さまと最初にお話しできるのよ?」
そんなことなかった!!
拘束されながら他の子たちを煽ってるんだけど!?
3号の煽りに他の子たちの怒りは更に激しさを増していってる。
オハナには相変わらず何言ってるのか分からないけど、とっても怒ってるのだけは理解できる。
だって壁や床が叩かれて破壊されて行ってるんだもの。
「なっ!!今ピンクエロキノコとか言ったヤツ出てきなさい!!戦争よ!!」
………それと案外オハナ眷属の中にもお口の悪いのが居るみたい――――――って、ちょっと待って?3号って眷属たちの言ってる事が解るの?
もしそうなら今までの不便さが一気に解消されるじゃない。
そう思って未だに眷属たちと罵り合う3号に訊いてみると、
「え?他の眷属たちと話………ですか?お母さまとは私がお話ししますから、他の眷属たちなんてどうでも良いじゃないですか、どうしてそんなこと言うんですか?あ、わかった。他の眷属たちが居るからなんですね。じゃあ他の眷属たちを今から消滅させてお母さまには私しか居ないんだってことをこれからじっくりたっぷりねっとりと教えて――――――」
「コワイコワイコワイコワイ」
拘束されてるのに何か凄い怖かったんだけど!?
今までにないくらいのスピードで後退りしたわ。
危なかった………何今の3号、瞳から光が一瞬にして消えたよ?
しかもまだ何かブツブツ言ってるし………。
3号の愛の重みって人型になるだけでこうも違って見えるものなの?
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